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一転

……………………


 ──一転



 ウォースパイトは哨戒飛行を終えて、リバティウィング空軍基地に帰投。


 ジョンソン中尉の身柄は基地の空軍憲兵に引き渡されることになった。


「本当に行くのか、ストーナー伍長?」


「はい、イーデン大尉。私もジョンソン中尉を弁護できると思います」


「そうか。では、彼の力になってやってくれ」


 私はイーデン大尉の許可を得て、ジョンソン中尉を弁護士に向かう。


「ストーナー伍長! 俺たちからもジョンソン中尉を信じてるって伝えてください!」


「もちろん!」


 オライリー伍長たちがそう言い、私が頷いた。


 そして、ウォースパイトを降りて、私は憲兵隊の施設がある場所を目指す。


 憲兵隊というのは陸海空軍にそれぞれ存在する。


 彼らの役割は軍内部の犯罪捜査であり、民間のそれにはかかわらない。民間の犯罪捜査は内務省隷下の警察組織が主に行う。


 空軍憲兵隊は陸戦隊と一部人員が重複している。というのも、昔から軍隊の犯罪で重大だったの反乱であり、それを制圧するのが陸戦隊の役割だからだ。


 それから空軍において、犯人を取り押さえる体術などを会得しているのが陸戦隊員ぐらいだからという現実的な理由もある。


 そんな憲兵隊の地上施設は威圧感があって近寄りがたく、私は足が怯むのをアーサーのことを思って推し進めた。


「誰か!」


 施設に近づく、施設のゲート前にてエンフォーサー小銃で武装した歩哨が誰何する。


「ロージー・ストーナー伍長! ウォースパイト乗り組みです!」


 誰何に答えると暫しの沈黙の末に歩哨が閉じられていたゲートを開き、中に入っていいというように合図した。


 私はゲートを通過して施設内へ。


「来たか、ストーナー伍長」


「ヘイワード中尉。ジョンソン中尉は?」


「大丈夫だ。丁重に扱っている。だが、その前にお前と話したいという人間がいる」


 私は中で待っていたヘイワード中尉に連れられて憲兵隊の施設内を進む。


「ここだ」


 そして、会議室と思しき部屋に到着し、ヘイワード中尉が外で待ったまま、私だけが中に通された。


「君という人間には驚かされたよ、ストーナー伍長」


「……ラムリー中佐」


 会議室の中で待っていたのはラムリー中佐だ。


「やっぱりあなたが仕組んだんですね?」


「名推理だ、伍長。君の脳細胞は灰色に違いない」


 私が言うのにラムリー中佐はそう言ってぱちぱちと拍手をした。嫌味な感じ!


「だが、ここはまず謝罪しよう。君を見くびっていた。すまない」


「え?」


 ラムリー中佐は態度を一変し、頭を下げて見せる。


「私はここまで追い込めば君がうっかり口を滑らせると思っていたのだ。君はアーサーの正体を漏らしてしまうだろうと。私は君を試すように仕向けた。一連のことは君の読み通り私が仕組んだことだ」


「そうだったんですね」


「ああ。だが、君は決してアーサーの秘密を漏らさなかった。私が幾重にも罠をかけたにかかわらず、君は常に適切な対応を取ってきた」


「ジョンソン中尉とは約束しましたから。絶対に秘密は漏らさない、と」


「その誓いを果たしたわけだ。もう一度謝罪しよう。私が間違っていた。君は信頼に足る忠臣であり、彼の真の友人だ」


 私の言葉にラムリー中佐はもう一度頭を下げた。


 ラムリー中佐は彼なりにアーサーのことを心配していたんだと思う。アーサーが第一王子アルバートと知ったのは、性別について嘘をついている私なわけだから。


 私は一度嘘をついている。そのせいで信頼されないのは理解できる。


「それよりジョンソン中尉は?」


 私がそう尋ねたとき会議室の扉が開き、アーサーが姿を見せた。


「ストーナー伍長。どうして君がここに……?」


「あなたを弁護しに来たのですよ、アーサー。決してあなたの正体を明かすことなく」


 アーサーが戸惑うのにラムリー中佐がそう言った。


「君が私の弁護を?」


「はい。けど、疑惑は解けたようですね」


「ああ。突然解放されたよ」


 アーサーは手錠などをしておらず、階級章や徽章なども剥奪されずにそのままだ。


「その友人は大事になさることです。政治家は忠誠を金で買えると思っていますが、間違いです。忠誠は決して金では買えません。真の忠誠とは魂のレベルに及ぶものなのですから」


 ラムリー中佐はそう語る。


「それほどまでの忠誠心と正義を知ったる友がいることは、あなたのためになるでしょう。いざという時に頼れるのは私などよりも、ストーナー伍長のような人間です」


「そう考えているつもりだ。だが、ラムリー中佐。あなたが私を心配してくれたことも理解はしている。感情的には受け入れられないが……」


「受け入れずも結構。時には嫌われようとも苦言を呈する必要があるのです。そして、そんな嫌われ者には嫌われ者なりの使いようが組織には存在します」


 アーサーの言葉にラムリー中佐は苦笑いを浮かべていた。


「ストーナー伍長。あなたにもお願いしよう。どうかアーサーを頼む」


「そのつもりです」


 言われるまでもないと私は思った。しかし、ラムリー中佐から改めて頼まれるというのは、彼からの信頼を勝ち取れたのだろう。


「では、行きましょう、ジョンソン中尉。みんなが待ってますよ!」


「ああ。戻ろう、ウォースパイトに」


……………………

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