第一話
まだ、昨日の事のように思い出せる、あの、少し切ない僕の信じられないような恋の物語を忘れないようにノートに書き留めておこう。
20年前の夏、僕は、高校生活に馴染めなくて周りから浮いていました。小さい時から、いつも周りには人がいて、友達もいて、それなりに楽しく学校生活を送っていて、ひとりぼっちの人を「あの」目で見てた。「あの」目が何をさすか分からない人もいると思うから説明すると、まあ、説明って言っても言葉に言い表せない感じの孤独を見下したような目とか、心にグサッとくる視線のことだよ。わかる人にはわかるよね。で、僕はそのとき分知った。「あの」目がどんなにその人を傷つけて、苦しめていたか。「あの」目で見られると、心が苦しくなって、自分はいなくなった方がマシなんじゃないかななんて思って。そして本当の孤独を受け入れようとしたあの日に君は僕の前に現れた。本当に、現れたとしかいいようがないぐらいぱっと僕の目の前に。直感的に君は人間ではないと思った。と言うより、どう見ても人間には見えなかった。だって、君は屋上の柵の向こう側に「立って」いたから。彼女は言った。「なにしてんの」いや、見たらわかるだろ、そう思って「見たらわかると思います。」と言うと「ずるいよ」「なにがですか。」「そうやって死んで消えようとしてるところ」「消えようなんて思ってないです。」「じゃあなんで」「、、、僕がいてもいなくてもみんな何も変わんないかなと思って、で、これから先未来のこと考えるより今死んだ方がいいかなって思ったから。」「なんだ、理由あるんだ」「ていうか、あなた誰ですか?」「あ~!自己紹介するの忘れてた、私は広川実奈、あなたと同い年の17歳です。で、君は、池村遼君!そうでしょ?」「え?なんで僕の名前知ってるんですか?」「え、なんでって私死神だもん、これくらい知ってて当たり前だよ~!」「は?死神?え?は?」「いや、だって私人間に見えた?あ、見た目は人間に見えるか。だけど私今浮いてるよw」「いや、人間ではないっていうか生きてる人には見えなかったけどまさか死神とは」いやでもなんで死神?死神は全員の名前知ってるの?個人情報ダダ漏れじゃん。おそろしおそろし。「うそ、私人間に見えない?なんか地味に傷ついた。」僕は聞き逃さなかった。彼女が最後に聞き逃す程の小さな声で私、人間だったんだけどなと言ったことを。