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あまえんぼうねこちゃんの番 3

セオルド視点




 アリッサのしっぽを放してやると、隣の空席に逃亡を図ろうとしたので腰を腕で抱き、横向きに膝に逆戻りさせた。


「あまえんぼうねこちゃんが孤高の狼さんを意識し過ぎるのが問題なのよ」


「意識しないというのが無理な話です。負けっぱなしのまま死にたくないので」


 殿下が、呆れたわとばかりに肩をすくめた。七歳の子供がする仕草ではない。


「もしレオナルド・カレン選手権があったら、きっとあなたが一番よ? はずかしがりやのタヌキちゃんも、そう思わない?」


「あ、はい。……あ」


 しまった、という顔をしてぎこちなくこちらを窺い見るアリッサとの話し合いは後にするとして。


「そんなわけのわからない奇怪な選手権に出場する人など、いるとは思えません」


「あまいわ、あまえんぼうねこちゃん。あまえんぼうねこちゃんの頭の中は、きっと綿あめとかマシュマロとかが詰まっているのね」


「お姫様のおっしゃる通りですわ」


 全面同意する孔雀夫人に、キツネ令嬢も追従する。


「ファンクラブの方たちならば、こぞって出場すると思います」


「……この国の将来が不安になって来た」


 ある意味平和の証ではあるが。


 現実逃避していると、リスちゃんが頰に手を当てて困った表情で言った。


「ですが、選手権と言うのなら、勝者への特典が必要ですわ」


「優勝者にはお兄様にお願いして、婚約者候補として紹介してもらえる権利を与えるわ」


「まあ! あの方と結婚できるかもしれないとなれば、参加者が倍増しますわよ」


 わいわいと、なにが楽しいのかわからない話題で盛り上がる侍女たちを横目に、アリッサへと問いかけた。


「アリッサも参加したい?」


「いえ、さすがにそれは、ちょっと……。間違えたら妹の立場まで失いそうで」


 だけど全問正解されても、それはそれで複雑だ。僕のアリッサなのに。


「それにこれは、兄様が嫌がると思います」


「選手権?」


「それもですが、結婚相手のことです。自分で決めた人としか結婚しないと思います」


「そうかな? カレンってそもそも女っ気ないし、かと言って男が好きなわけでもないし、好きなタイプとかあるの?」


「わたしにもそれは……。できれば優しい兄嫁さんがいいな、とは思っていますが……」


 カレンがアリッサをいじめるような女を結婚相手に選ぶことはないだろうが。


「アリッサがいびられないように、僕が全力で守ってあげるね」


 頰にキスしてぎゅーっとしてまたキスしていたら、さすがに殿下の非難の声が飛んで来た。


「あまえんぼうねこちゃんは、発情期なの?」


 殿下の発言に思わず真顔になった。誰だ、そんな言葉を教えた不届き者は。


「姫様。本当にどこでそんな言葉を覚えて来るんですか? 侍女の人選に問題があるのでは?」


「あらやだ、失礼だわ、あまえんぼうねこちゃん。姫様は最近、動物の生態について深く学んでおられるのです」


 もっとほかに学ぶべきことがあるのでは?


「ついこの間も、この世界に獣人族がいないことを大変嘆かれて」


 そのやり場のない感情の発露が、この動物たちのお茶会なのか。迷惑過ぎる。


「獣人族……それは具体的にどういう種族でしょうか? アリッサは知ってる?」


「それは、もちろん。獣人族は、人の体だけどケモ耳……動物の耳と、しっぽが生えているのが基本的な姿ですが、場合によっては獣姿になったりもします」


 アリッサがめずらしく胸を張って解説をはじめた。僕が知らないことを知っていたことが嬉しいらしい。子供みたいでかわいいしかない。


 人間に動物の耳としっぽ……というと、今の自分やアリッサみたいな姿をイメージすればいいのだろうか。


「彼らには、番という生涯にひとりきりの運命の相手がいるのが特徴です」


「へぇ……。あまえんぼうねこちゃんである僕と、番であるはずかしがりやのタヌキちゃんのアリッサは、生涯にひとりきりの運命の相手同士、ということ?」


 それはなかなか悪くない響きだった。僕らが番という配役にしてくれた王女殿下の粋な計らいに、ほんの少しだけ気持ちが持ち上がる。


 機嫌を直した僕を見て、キツネ令嬢が思わせぶりにくすりと笑った。扇子を使い、殿下には聞こえない小声でそっと囁く。


「獣人族は、ひと月以上蜜月を取り、番とふたりきりで巣穴に篭って子作りに励むのが一般的だそうです」


「詳しく」


 前のめりに食いついた。


 獣人族、うらやまし過ぎる。


「わたくしも結婚するなら獣人族がよかったわ。……人間はすぐに心変わりするもの」


 殿下のやや尖った実感のこもったつぶやきには、腑に落ちるものがあった。


 父親である国王陛下が側妃を寵愛していたのは周知の事実であり、それは幼い王女殿下の知るところでもあった。


 殿下はまだまだあまえたい盛りのときに、父親が若い女に入れ上げているのをその目で見てきたのだ。思うところがあるに決まっている。


 側妃であるモニカ妃は実家のアブゼル侯爵の失脚に伴い、離宮への療養という名の実質幽閉が決まったのはつい先日のこと。モニカ妃の産んだ子供は名目上は王妃の子として王妃が育てるということにはなっているが、実際に育てるのは乳母であり、間を置かず王太子殿下の庇護下に入ることになりそうだ。


 王太子暗殺未遂に実家が関わっていたとなれば、側妃自身がなにも知らなくても情状酌量するわけにもいかず、陛下もすっかり気落ちしている…………わけでもなかった。


 陛下はアブゼル侯爵家もモニカ妃のことも、あっさりと切り捨てた。あれほど寵愛していたのにも拘らずだ。


 それはきっと、王太子殿下ですら予想外のことだったろうと思っている。


 廃妃ではなく離宮に幽閉というのは慈悲などではなく、今後のための打算が隠されているのだろう。国王の側妃という肩書きに利用価値がある限りは生かされているだろうが、陛下が彼女の元に通うことは、きっともうない。


 そして王女殿下が父親として国王を尊敬する機会は永遠に失われたまま、国王と王女という肩書きだけの冷めた関係がこの先も続いていくのだろう。


「……姫様。心変わりする人間ばかりではありません。そういう人もいれば、そうでない人もいる。人間、とすべてをひと括りにして相手を見極めることもなく、はじめからすべてを否定するような浅慮な大人にならないことを願っております」


「……なによ、あまえんぼうねこちゃんのくせに生意気よ。せっかくいいことを言っているのに、その猫耳のせいでいろいろと台なしね」


「誰がさせているんですか」


「わたくしかしら?」


 とぼけたように殿下が小首を傾げる。


「殿下以外、僕に猫耳をつけようなどと考える人はいませんよ」


「似合うあなたにも問題があるのよ?」


「似合いません」


「鏡を見なさい」


 僕だけでなく侍女や近衛も、殿下がいつもの調子に戻ったことにそっと安堵した。


「あまえんぼうねこちゃんは、お膝に婚約者を乗せている時点でまともではないわ」


「僕なら、膝に乗せてくれないような相手と結婚なされないようにと進言しますね」


「孔雀夫人、子供でもないのにお膝に乗るのは普通なの?」


「熱愛中ならば……なくもないかと」


 孔雀夫人が困った顔をしながらも、器用にこちらをにらんだ。自分たちの方がよほど殿下を毒しているのに、八つ当たりも甚だしい。


「あの、わたし、降りた方が」


「だめ。レオナルド・カレンとの悍ましい噂を払拭するためには必要な行為だから」


 逃げないように腕の締めつけを強める。


「あらあら、あまえんぼうねこちゃんはずいぶんとお固い頭をお持ちのようで」


「なにか文句でも? 孔雀夫人」


 固くてあまい……飴玉かしら? と神妙につぶやいた殿下を眺めてアリッサが和んでいるのに癒されつつ、悪辣な侍女たちと向き合った。


「噂ごときに心を乱されるなんて、あまえんぼうねこちゃんもまだまだですわね」


「聞き流せる噂と、そうでない噂があるでしょう。これは実害があり過ぎる。この近衛の腑抜け具合を見ればわかるのでは?」


 周囲の近衛たちは必死に取り繕っているが、今なら僕でも彼らの隙をついて殿下の首を取れる。腹筋ばかり鍛えていないで、もっと精神を鍛えて来い。


「僕自身がレオナルド・カレンと不仲だと認めて、大多数もそれを周知しているのに、どうして一部の女性陣は僕らを勝手にくっつけようとするんだ」


 なぜこんなに否定しているのに、そんな風ににやにやされなければならないのか。


 憤慨する僕に、キツネ令嬢が憐憫を込めて言う。


「不仲だからこそ、おいしいのです。実は裏ではこうなのではないかと、想像力を掻き立ててしまう。否定すればするほど火に油を注いでいると言いますか……」


 なにをしても裏目に出ていると?


 そんなのもう、お手上げでは?


「ですので、そこまで気にされていると言うのならば、みな様の興味を別の方向へと誘導してはいかがでしょう?」


「別の方向?」


「婚約者さんとの馴れ初めとか、結婚に至るまでの恋愛エピソードをお話しになればよろしいのですよ」


「あまえんぼうねこちゃんの馴れ初めを語ってくださるの? それはぜひ、聞いてみたいわ!」


 キツネ令嬢の提案にリスちゃんが食いついて来た。さすが情報屋のリスちゃんだ。


 しかし馴れ初めと言われても、そんな大した話ではない。彼女たちの興味を引けるようなドラマチックな出会いではなかった。


「出会いはどちらでしたの?」


「競技会ですが……別におもしろい話ではないかと」


「おもしろいかどうかは世間が判断することですわ。さあ、競技会で? どうやって出会ったのです? もしかして、一目惚れ?」


「一目惚れ……なのかな?」


 まあ、一目惚れ、と侍女たちが華やかな声をあげる。


「あの、セオ様、やめた方が……」


 アリッサがなにかを訴えるかのように必死に首を振っているが、照れているのだなと思って聞き流した。


「競技会と言いますと、四年ほど前でしたか?」


「競技会? リスちゃん、大変だわ。記憶がないの。わたくし、記憶喪失なのかしら?」


 殿下は当時三歳だ。さすがに記憶があったら怖い。


「ご安心ください、幼かった殿下は城で乳母とお留守番でしたよ」


「そうなのね? よかったわ……。それで、みなさんはその競技会のことを覚えているのかしら? 孔雀夫人も?」


「ええ、わたくしは観戦しましたよ。決勝戦、それはそれは盛り上がりましたわ。まさに狼対猫の縄張り争い。あの後、孤高の狼さんの元には未婚の娘を持つ父親たちからの婚約を打診するお手紙が殺到したらしいということまで記憶していますわ」


 ああ、あったね……。


 うちの親が僕の結婚相手にと狙っていた令嬢が取られたと激怒していたことを今思い出した。そんなこと、すっかりと忘れていたのに。


「あら? タヌキちゃんはご存じない?」


 聞き手に徹して反応の薄いアリッサに、孔雀夫人が小首を傾げた。


「あ、いえ。話だけは聞いています。兄様……狼さんは、両親に話が通ると言いくるめられると予想してか、すべて丁重にお断りしてから、両親に事後承諾したみたいです」


 うん。間違いなくアリッサの両親は言いくるめられただろうな。


 田舎のタヌキが都会の有象無象に敵うはずがない。


 殿下はその話を聞きながらふと小首を捻り、僕へと、たった今思いついたばかりの疑問を投げかけて来た。


「あまえんぼうねこちゃんはそのときに求婚はしなかったの?」


 もしあの時点で勢いのままに婚約打診をしていたらカレンに徹底的に潰されていただろうし、うちの両親も今ほどすんなりと認めてくれなかっただろう。


 なにより……。


「そのときはアリ……タヌキちゃんと、話もできなかったので」


「そうなの? ではお手紙でのやり取りからはじめたのかしら?」


「いえ……特には」


「なにも? お花やカードを送るとか、そういうことも?」


「会話もしたことのない相手から花が送られて来たら、それは恐怖でしかないのでは? 殿下ならときめきますか?」


 なぜだろう、答えるたびに侍女たちの表情が、ちょっとずつ妙なものへと変わっていく気がする。


「あなた……そんなにも長い間、なにをしていたの?」


「なにって……想像の中で愛でていましたが?」


 そう言った瞬間、場が水を打ったように静まり返った。


 そんなに変なことを言ったつもりはないのに、なぜ侍女も近衛も顔を引き攣らせているのだろうか。


 アリッサに至っては両手で顔を覆ってしまっている。


 孔雀夫人がどうにか気丈さを保ち、こちらを向いた。


 ……いや、なぜ気丈さを保たなければ僕と向き合えないのか。おかしくない?


「あなた、三男とは言え公爵家の人間でしょう? 望めばいくらでも機会は得られたのに、なにを手をこまねいていらしたの?」


「幼い頃から婚約しているならいざ知らず、相手はまだ十二、三の子ですよ? しかも自分の兄を敵視している男なのに、家柄を盾に無理に会ってどうするというのですか? 怯えさせて、嫌われろと?」


「ロリコンの自覚はあるのですね……」


「人聞きの悪いことを言わないでください。ロリコンというのは殿下くらいの少女に不適切な好意を抱く人間のことを示すもので、僕は健全に心の(うち)にタヌキちゃんを飼いながら、狼に話を振って嫌がらせをすることで満足でしたから、全然違います」


 これ以上静まり返るはずのない場が、静まり返った。……なぜだ?


 ひとりだけ、のんびりスミレの砂糖漬けを摘んでいた殿下が、凍りついた周囲に気づき、仕方なさそうな顔をして全員の心を代弁をした。


「どちらにしても気持ち悪いそうよ」

 

 妄想癖怖っ、ってぼそっとつぶやいた近衛の誰か、後で覚えていろ。異常性愛者、って言ったやつも、後で殴るからな。


「純情を拗らせたロリコンの末路が、悲劇ではなくハッピーエンドでよかったですわ……」


「そんな長期間に渡り自分の妹に執着する男の戯言につき合い続けたなんて、孤高の狼さんが気の毒過ぎます」


「これで結婚を許すだなんて、もはや洗脳に等しいのでは? あまえんぼうねこちゃん、恐ろしい子……」


 言いたい放題言われているが、じゃあ、十三歳のアリッサ相手に、家柄を盾にして迫ればよかったのか?


 それとも、自分の素性を伏せて近づき、悪い大人のように判断能力を鈍らせて誘導し、退路を塞いでしまえばよかったと?


 そうしていたらいたで、難癖をつけてきたに違いない。


 人のやり方にごちゃごちゃ言うのなら、なにがまともな策だったのかご教示願いたい。


 まったく、洗脳なんて、冗談じゃない。


 アリッサの部屋に置いてある本の主人公のように、純真無垢な少女を誘拐して監禁して逃げられないように足枷をつけて毎日毎日愛を囁きながら抱き潰して孕ませて、それが幸せなのだと錯覚させるくらいのことをしてやっと洗脳と呼ぶのだろうに。


 …………本当にアリッサ、なんて本を読んでいるんだ……。


 どこに参考できる要素があったのか、未だに解明できずにいる。


 一時の感情で行動したところで思うような結末を迎えられるはずがない。


 だいたい、未成年に手を出すという倫理に伴わない発想自体、僕の中には存在しないのだ。心の中でさえ、アリッサを醜い男の欲で穢すようなことはしなかったのに、それが証明できないのがもどかしい。


 そもそもアリッサへの気持ちに気づいたのは、最近なのだ。だから僕はロリコンではない。絶対に。


「タヌキちゃん自身が僕を選んでくれたのだから、外野がごちゃごちゃ言わないでもらえますか?」


 急に話をふられたアリッサは、狼狽しながらも首肯した。


 あまり深く考えていなさそうなうなずき方だったせいで、洗脳の精度が高過ぎるとあたりがざわついたが、黙殺しておいた。


「僕は果実が熟すのを気長に待ってから食べるタイプなだけです。そして彼女は、下で待っていた僕目がけて落ちて来た。ただそれだけのことなのです」


「はずかしがりやのタヌキちゃんは、あまえんぼうねこちゃんのどこに惹かれたのかしら?」


 僕の言葉は華麗に流されて、アリッサへと標的が移った。


「最初に惹かれたのは……優しいところ、です」


「優しい……。教科書に載っているような、当たり障りのない無難な解答ね」


「うっ」


「僕の番をいじめないでください」


 大丈夫だよと、よしよしと撫でる。恥じらいながらもアリッサに嫌がるそぶりはない。


 周りがなにをどう思おうと、アリッサさえ幻滅しないならそれでいい。


 アリッサの許容範囲の広さに感謝している。


「……本人同士が幸せなら、それが一番いいのかもしれないわね」


 そうですわね、と侍女たちも同調したが、その目は正直なもので、この普遍的なねことタヌキの番を珍獣扱いしていた。


「次のお茶会は、どのような趣向にしようかしら?」


 殿下もようやく森の動物たちのお茶会に飽きたらしく、その発言によって僕の肩の荷が八割は下りた。


 やっと猫耳から解放される。


 どんなお茶会になったとしても、あまえんぼうねこちゃんよりひどいことはないだろう。


 もう殿下の近衛ではないので、これまでのように無理やり参加させられることもない。


 僕は心穏やかに殿下たちの話に耳を傾ける。


「はずかしがりやのタヌキちゃんは、なにかいい案があるかしら?」


「わ、わたしですか!?」


 殿下の思わぬ指名に、アリッサの声は裏返ってしまっていた。


 まさかとは思うが、アリッサは次回も引き摺り出されるのだろうか……?


 そうなると心配なので僕が参加せざるを得ず、今後もふたり揃って犠牲になる展開になるのでは……?


 ぞっとする僕の膝の上で、水を向けられたアリッサは根が真面目なので、殿下の期待に応えるために必死に頭を巡らせていた。


 アリッサの思考回路は普通の人のよりもややずれぎみなので心配だ。こちらが思いもしない発想で飛んで、明後日の方向へと着地したのに、胸を張っているような。


 ある意味予想通り、アリッサはおかしなことを口にした。


「…………あの、男女逆転、とかは……?」


 絞り出したか細い声のその提案に、しばし無音の時間が続いた。


「……ご、ごめんなさい、やっぱり違うものに」


「それはおもしろそうね。採用します」


「えっ!?」


 まさかの採用に驚くアリッサを置き去りにして、侍女たちはもう気持ちを切り替えて盛り上がりを見せている。


 王女殿下など、すでに王太子殿下の子供の頃の衣装があるかを確かめるよう王太子殿下の侍女へと遣いを出していた。


 僕はだいぶ遅れて、その残酷な事実へと、たどり着いた。


 ちょっと待て。


 本当に、待って?


 それって、もしかして……。


 無情にも、殿下が僕に目をつけた。


「というわけだから、あまえんぼうねこちゃんはこの後、ドレスの採寸をしてから帰りなさい」


 侍女たちが腕が鳴るわとうきうきと弾んだ声をあげ、近衛たちの腹筋がとうとう死んだ。


 戦慄く腕の中で、顔面を蒼白にしたアリッサがことの重大さに気づいておっかなびっくり、窺うように僕を見上げている。


 うん? そんな顔をしても、絆されないよ?


 しっぽをぎゅっと握りしめながら、アリッサへのお仕置きをなににすべきかを思案しながら、現実逃避を試みた。





ラヴィ・アン・ローズ先生の最新作

『わたしはもう食べ頃です!〜ロリコン近衛騎士は心の裡にタヌキを飼う〜』

あらすじ

いつまで経っても子供扱いで手を出して来ない猫獣人に焦れたタヌキ獣人が、ロマンス小説を参考にしてあの手この手で迫り、最終的に返り討ちに遭っちゃうお話


しっかり最後まで読んだアリッサは、後日セオルドにバレて、膝詰めで説教されました

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森のゆかいな仲間たちのお茶会、楽しすぎる w 護衛やメイドさん、笑い上戸の人がいたら声我慢するの拷問に近いのでは。 王女様、王太子様と血のつながりを感じます。 ってことは、王様経由の性質なのか、人生…
[良い点] 王女さま、つよい! [一言] 説教だけですんで、良かったね? お仕置きは‥セオ様の自己規制の賜物、かな? 先輩の感想も欲しいものでござる。
[良い点] 私の腹筋も死ぬ!大笑いしてるのに、死ぬ! あージリツシンケイトトウー
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