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プロローグ 守護者様は野外プレイをするド変態

エロはありません。

微エロはあるかも。

見切り発車です。

週一更新目標にがんばります。

一人の村娘はただ街に買い物に来ただけだった。最近は魔王の動きが活発になっているのは聞いていたけど大丈夫。自分が出てきた時に限って、街を魔族が襲うなんてない。

誰にでもある、そんな根拠のない楽観。

村娘はその代償を今、支払っていた。


「逃がすか、女! よくも私に屈辱を味合わせてくれたな!」


後ろから魔族が鬼の形相をして追ってくる。


「いやいやいや! 来ないで!」


泣き叫びながら走った。縺れそうな足に鞭打って必死に逃げた。しかし、所詮は村娘。やった十歳となった幼さだ。


「きゃっ」


何かにつまずいて転んでしまった。

痛みを来られて顔を上げるとそこには魔族がいた。


「もう逃がさない」


人ではありえない赤色の肌に頭についた一本の大きな角。筋骨隆々な腕は掴まれただけで、人の体などひとたまりもないだろう。


ーああ、私はここで死ぬんだ。

まだ何も知らない。たった十年しか生きていない。ずっと村で生きてきた。街はきらびやかで、行き交う人々は皆輝いていた。キレイな服や靴に生き生きとした表情。

この人たちみたいにおしゃれして綺麗になって素敵な恋をしたい。


「いや、いやよ。私まだ恋だってしたことないのに!」


村娘の悲痛な叫び。それも届かない。

魔族はカードを取り出し、叫ぶ。


覚醒アウェイクンー燃やし尽くす者」


カードから黒い光が生まれ、魔族の体に吸い込まれていった。

ギフトカード。

神が生きとし生けるものすべてに与えた道標。カードには自分の才能や力を象徴した神の言葉が刻まれている。

解放すれば、途方もない力を行使できる。特に魔族は人よりも強大な力を行使する。


「冥途の土産に見せてやる。我がギフトは何者をも燃やし尽くす。小娘ごときがコケにしてくれた礼をたっぷり支払ってもらおう」


下種な笑顔で舌なめずり。その手には、村娘を包み込んでもなお余りある大きさの太陽のごとき日の塊がある。

今から、私はあの魔族に焼き尽くされるんだ。

目をぎゅっと瞑った。

大丈夫。どうせすぐに終わる。今までだってそうだった。嫌なことは全部目を瞑っていたら終わっていた。

だから大丈夫。怖くない。それなのに。


「嫌だよぉ。死にたくない。誰か、助けて!」


吐いて出た言葉は助けを求めていた。

都合よく誰か助けてくれるなんてありえない。街は魔族に襲われて混乱している。皆自分のことだけで手一杯。普通の人は、他人を助けるなんてことはできない。

だから、村娘の前に都合よく現れたのは紛れもない英雄だった。


覚醒アウェイクンー守護者」

 

現れた英雄の少年は触れてもいないのに建物を溶かしている恐るべき炎を、盾一つで防いだ。

巨大な盾だ。

まるでそびえ立つ壁のよう。


「大丈夫?」


信じられなかった。

村娘を助けてくれたのは少年だ。年もそう変わらない。少年の方が少し大人びているように見える。

そんな少年が自分の身の丈以上の盾で、魔族の炎を防ぎきっている。


「あ、はい」

「よかった」


やわらかな笑みが、恐怖で凍り付いた村娘の心を温かく包み込む。


「良くないよ! このままじゃ、持たない!」


 魔族の炎がずっと盾に浴びせ続けられている。このままだと溶けてしまうだろう。

 

「その盾ごと燃やし尽くしてやるわ!」

「お前の炎ごとき、僕には生ぬるすぎる」

「どこまで持つか見ものだな!」


炎の勢いがさらに上がる。灼熱の炎によって金属製の盾はどんどん熱を帯びる。盾を持つ少年の手から肉の焼け焦げる音と悪臭がする。しかし、少年は痛みが増せば増す程、快楽を得るかの如く笑みを浮かべた。

そして逆に一歩踏み出し、炎を押し返しながら走り出した。


「馬鹿なっ。ガキごときにこんな芸当、有り得ない!」


魔族に体当たりする。魔族はひとたまりもなく、吹き飛んだ。


「トドメだ」


 身の丈ほどもある巨大な盾をブーメランのように投げた。


「あああああああああああ」


魔族は胸を貫かれ、断末魔の悲鳴をあげてそのまま動かなくなる。


「すごい……」


村娘は呆然とその光景を眺めていた。


「怪我はないかい?」


少年は自分の盾よりも先に少女の怪我を心配して声を掛けた。


「だ、大丈夫よ」


 精いっぱいの強がり。けど、緊張で声が震えてしまう。


「よかった」


少年は盾を拾って、走り出そうとした。


「待って!」

「なに?」

「名前を聞かせて。私はサディ」


この街は多くの魔族に襲われていた。英雄の助けを待つ人はたくさんいる。それはサディだってわかっている。だけど、聞かずにはいられなかった。


「エムド。神に魔王討滅を予言された勇者の仲間だ」


そう告げると走り去っていった。


「エムド、君」


何度もその名を心の中で繰り返して刻みこむ。

さっきからドクンドクンと胸の高鳴りが治まらない。


ー一目惚れだ。


自分を受け入れてくれるのは、この人しかいない。

ただの独りよがりな想いなのはわかっている。けど、どうしてもこの胸の高鳴りを抑えることはできなかった。


※※※※


「だめ、落ち着いてサディ。今日を逃したらもうチャンスはない。勇気を出して告白するの。じゃないとこの五年間準備してきた計画が台無しよ」


そう自分で自分に喝を入れる。


守護者エムドに出会って五年が経ってサディは十五歳になっていた。必死に頑張って来た甲斐もあり、きれいになれたと思う。

茶色く汚れた髪を街で桃色に染めたり、服のことも勉強したりして見た目にはだいぶ気を使っている。体も無駄な贅肉がつかないよう日々努力をしている。村の同世代の男の子全員から告白される程度には美しく成長できた。


ただ誰に告白されても心は動かない。悪いとは思う。それでもエムドへの想いは変わらない。エムドと一緒にいたい。添い遂げたい。しかしエムドは魔王を倒す旅に出る。

ただの村娘には、手の届かない存在。


けど、チャンスが到来した。


サディの村に勇者とエムドが来たのだ。自分の想いを伝えるための絶好の機会。

それなのに、話しかけることすらできなかった。遠くで見ながら高ぶる鼓動を抑えるだけで精一杯。


村での歓迎が終り、今は夜。

なんとか気持ちを落ち着かせて、エムドの部屋の前まで来れた。

目の前にある扉が、五年前の魔族よりもよほど強敵のように思える。


「エムド様、お話があります。入ってよろしいでしょうか?」


意を決して声を出した。

ドクンドクンと胸が高鳴る。けど不思議だ。今はこの胸の鼓動がとても心地いい。期待と不安が混ざってもう何も考えられない。

しかし、いつまでたっても返事はない。


「エムド様? 大丈夫ですか? 入りますよ?」


扉には鍵がかかっていない。

心配になり、部屋に入ると中には誰もいなかった。


「ノーマ様、いらっしゃいますか?」


勇者ノーマの部屋も同様に返事がない。


「あ、いた」


ふと、廊下の窓に目をやった。

ノーマとエムドが森に向かって歩いていく姿が見えた。

いけないことだとわかっている。勇者のノーマは女で、守護者のエムドは男。そんな二人が人目を忍んで暗い夜の森に消える。

その意味が理解できない程、サディも子供ではない。

けど、自分を抑えられなかった。


気づいたら、二人の後をこっそりと追っていた。

二人は、森の開けた場所で立ち止まる。

サディはばれないように茂みに隠れた。


「はぁはぁはぁ。ノーマ。僕もう限界だ」

「そんなにがっつかないで。気持ち悪いわね」

「あぁいいよ、それ」


 暗い森の中。しかも茂みのせいで視界はほとんどないに等しい。

二人の姿はほとんど見えなくて何をしているのかはわからない。

けど、声は聞こえた。

……エムドの興奮した吐息も。


やっぱりそういう関係だったのか。さっきまでのドキドキはなくなり、胸に重い鉛がつけられたような気分だった。


「速く済ませるわよ。さっさと服脱ぎなさい」

「わかったよ」


エムドが服を脱ぐ衣擦れ音が夜の森に響く。

この場にいちゃいけない。すぐに帰るべきだ。サディにもそれはわかっていた。けど、体は動かない。


「脱いだ」

「じゃあ、始めるわよ」


今からナニが始まるのか。夜の森。何度も戦場という窮地を乗り越えて、信頼し合った男女がやることは一つだけ。

気づけば体が動き出し、茂みから大声を出しながら飛び出ていた。


「だめぇぇぇぇぇぇ!」


次の瞬間、バチンという何かを強打する音が鳴り響いた。


「誰、だ……?」

「何者かしら?」


 苦し気なエムドの声と鋭いノーマの声。

 最初は見えなかった。

けどだんだんと月明かりに勇者とエムドが照らし出される。

そこには、サディの予想とはちがう光景が広がっていて脳が一瞬フリーズした。


「え?」


 なぜか木の棒を振りかぶるノーマ。

上半身だけ裸のエムド。その背は赤くなっていた。木の棒で叩かれたのだろう。

てっきりナニをしていたのだと思っていたが、違うようだ。


「何をしているんですか?」

「あ、いや。これは、その……」


ノーマはさっきまでの強気な雰囲気が消えて、目が泳いで動揺を隠せずにいる。

対してエムドは、俯いてプルプルと震えていた。


「……だめだ。もう我慢できない」


 エムドがプルプルと震えながら言った。


「ちょっ。だめよ! 今は不味いわ!」

「何が不味いんですか?」

「いいから、今だけでいいの。この場を離れて!」

「ちょっと、せめて何をしていたか教えてください。じゃないと納得できません」


ノーマがサディを強引にこの場から連れ出そうとした。

その時だった。



「気持ちいいぃぃぃぃっぃぃぃっぃ!」



エムドが恍惚な表情を浮かべ、口から涎をだらしなく垂らしながら叫んだ。


「もっと! もっと罵って! 強くいたぶってください! 女王様ぁ!」


ノーマの足元に縋り付くエムド。

この事態に青くなりながら顔を引きつらせるノーマ。


「これは、一体何が……? ナニをしてたんじゃないんですか?」


 サディの脳のキャパシティはもう限界で、理解が追い付いていない。


「はぁ? 私がこいつと? 考えただけでおぞましいわ。こんなド変態とヤるわけないじゃない! こうなった以上、仕方ないわね」

「きゃうん!」


すがりつくエムドを蹴り飛ばしてノーマが口を開く。


「ここで何してたか、気になるのよね」

「は、はい。何をしていたんですか……?」


夜の森で男女が二人。男は服を脱ぎ、興奮した様子。ここまではわかる。

女は木の棒をその背に叩きつけで、男は喜ぶ。ここでサディの脳が理解を拒んだ。


「ここでやっていたのは『SMプレイ』。で、こいつはドMのエムド。ただのイかれた変態よ」


お読みくださりありがとうございます。

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