最果ての地にて異世界へと渡る
「貴方の望むものは何ですか?」
「・・・最期にもう一度、己の全てを賭けた闘いを」
目の前の神様と呼ばれる存在に問われ、そう答えた。人として生まれて、色々な場所を巡り、闘った。果ては魔族に生まれ変わって王となり、成り行きで神様にも喧嘩を売った。
己の存在以外何も無いような最果ての地で、志し半ばで力尽きかけた男の今際の言葉がコレかと、我ながら発した言葉に呆れる。
「自分自身で呆れるほどに、闘いが好きなのですね、貴方は・・・」
「・・・そう、ですね」
返答は歯切れが悪い。だって、よく分からなかったから。怖くはあるが、、、人と競うのは楽しい。自分の今まで磨き上げてきた技を、力を、心を、文字どおり命をかけてぶつけ合うのは正直、愉しい。
・・・けれど、その結果に━━━━。悲しくならなかった事は、一度も無かった。
「なるほど。複雑ですね。とは言えここは貴方の心の世界。嘘をつく事は不可能。それが貴方の1番の望みなら、これから我が世界に転生をする上での制約として、その願望に呪いがかけられます」
「呪い、とは?」
「貴方は今までの知識や、意識を残したまま我が世界に転生することが出来ます」
それが目的でここまで来られたのでしょう?とその目が尋ねていた。
「それは、ありがたいです。でなければ目的が果たせない」
異界へと至る為の旅・・・その最大の目的を考えつつ、話の続きを待った。
「ただし、その代償として力の解放に制限がかかり、仮に全力を出して闘った場合、2分もしないウチに世界に存在をたたき潰されて跡形もなく・・・魂すらも消え去るでしょう」
「・・・なるほど」
厳かに、淡々と語る神様の条件は具体的な様でいて曖昧なため、正直ピンと来るものが無かった。とはいえそもそもここで死んでは、全霊で闘うことはおろか、目的を果たす事もできない。
「死にかけているこの命。道が続くというのならその道を歩ませてほしい」
神様はその言葉を噛み締めるかのように一度目をつむり・・・見開いた瞬間、扉が開いた。
「・・・・っっ!!」
扉の奥へと体が投げ出される。ブラックホールのようにあたり全てを飲み込む力が神様にだけは作用しない。
「これにて契約は完了した。魔界領極東地『ヒコク』の領主、上月狼牙。貴方を我が世界へと転生することを許可する。肉体の器期間はおよそ100年。意識の覚醒は転生をして10歳とします。我が世界への貢献と互いの発展を願う」
異界への扉の前で神と呼ばれる存在が謳った。・・・そして。
「妹君の呪縛・・・解く方法が我が世界にあることを願っておりますよ」
一つの個人的な応援を男に送った。
━━━人から魔王にまで上り詰めた男が異界へと至る瞬間だった。
よろしくお願いいたします。