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良希15歳 小夜子13歳

ここで東家の秘密暴露。

 高校生になったらバイトをしたい。

 良希はずっとそう考えていた。


 なんて事ない。兄の静夜も高校に入ってすぐに欲しいものがあるからと爺ちゃんを説得して、バイトを始め、欲しいものがあると言いながらも貯金をしているのだ。


 爺ちゃんに言ったら文句を言われるのは予想が付くが、じいちゃんの手を煩わせないように自分の事は自分でしないといけないと静夜も良希も思っているのだ。


 静夜は成績優秀だったし、口が上手いからすんなりバイトの許可を得られたが、良希は中間の成績を見せてからにしろと言われ、無事関門を突破したのだ。


 後は、第二の性がまだ不明な事を心配されたのだが、その辺は臨機応変にできるところを選ぶつもりだ。


「とは言っても」

 コンビニに置かれてあるタダでもらえるバイトの紹介の冊子をぺらぺらと公園で開いて見る。


「一体。どれにすればいいのか」

 静夜が剣道の強い遠くの学校に通っているから近くの学校を選んだ。


 爺ちゃんはとても元気だが、年齢の事を考えると何かあったらすぐに動ける場所にいた方がいい。

(そんな事を言ったらまだまだ年寄り扱いすんじゃないと正座でお説教だろうけどね)

 ははっ


 公園のベンチでどれがいいかなとチェックをしていると。


「何してるんですか?」

 ひょいっ

 後ろから覗き込んでくる影。


「うわっ!!」

 びっ、びっくりした。


「驚かせてしまいましたね。お久しぶりです良希さん」

 ぺこっ

 挨拶をしてくるのは。


「小夜子ちゃん」

 制服を着たままの幼馴染の小夜子の姿。と。


「よしくん。こんにちは!!」

 元気な大きな声で挨拶をする男の子と。


「こっ、こんにちはよしくん」

 びくびくとスカートの影に隠れながら顔をのぞかせて挨拶をする男の子。

 反応こそ違うがそっくりな子供の姿。小夜子とも小夜子の兄の信之にもそっくりな顔立ち。


「こんにちは。風斗(ふうと)くん」

 まずは元気よく挨拶をした風斗に。


「こんにちは。雷斗(らいと)くん」

 次におずおずと恥ずかしがっていたけどしっかり挨拶をした雷斗に。


 それぞれしっかりしゃがんで目を合わせてから挨拶をすると風斗は満面の笑みで雷斗ははにかみながら微笑んでいる。

 

 二人とも幼稚園の服を着て、バックを下げている。


「小夜子ちゃんがお迎え当番だったの?」

「当たりです」

 兄妹で交代でお迎えに言っているのを知っているからの確認。必ず誰かが行けるので手が空いてる人が行くのだ。

 因みに誰も手が空いていない時は爺ちゃんが迎えに行った事があったりする。

 

(俺も奏子ちゃんが幼稚園に通っている時に爺ちゃんと迎えに行ったな)

 まあ、その時は信之と何で俺がとぶつぶつ文句を言いながら静夜も一緒だった。


 小夜子ちゃんと尊くんはお留守番だった。


「今だに、お爺さんがとお父さんが行くのは珍しいから保母さんが二人が来ると大騒ぎみたいですよ」

 レアだと言ってましたよ。

 小夜子の報告にそんな風に言われるんだとかなり驚いた。


 誘拐の心配もあるのできちんと身分証とか知り合いかどうか確かめてから引き渡されるので、当初は警戒されたと爺ちゃんが言っていたのに気がついたらレアもの扱い。


(警戒されないからいいのかもしれないけど)

 それで大丈夫なのか。


「姉ちゃん。少し遊んでいい~」

 滑り台を見て風斗が目をキラキラと輝かせている。


「ぼ、僕も……」

 雷斗もおずおずと遊びたいと告げてくる。


「いいわよ。一回ずつね」

「「はぁい」」

 二人が滑り台に行くのを危なくないか見守りをしつつ、

「バイトを探しているんですか?」

 小夜子が尋ねる。


「静夜さんは高校入ってすぐに始めたけど、良希さんは全然そんな素振り無いからしないのかと思いましたよ」

「素振りって何で知っているの!?」

 それに驚くけど。


「知ってるも何も。良希さんの家って、店番しているとしっかり見えるんですよ。静夜さんが遅くに帰ってくるのも良希さんが夕方に帰ってきているのもばっちり見えますよ」

 夕方に帰ってきて、そこから家に出ないところを見るとああ、バイトはしていなんだなと予測できますよ。

 そうあっさり言われて、プライバシー筒抜けだなと思いつつも文句を言わないのはこちらもある意味倉田家の状況を知っているからだったりする。


 だからこそ、お迎えに行ける人がいない時は爺ちゃんが行くなんて事も出来るのである。


「兄貴は成績よかったからすぐに許可が出たけど、俺は中間の結果を見るまで認めないと言われてたんだよね~」

 で、無事に許可が出ました。


「いいところを探しているんだよね。家の近くで」

 やっぱ家が近いと便利だしね。


「静夜さんは遅くまでバイトしていましたよね」

「兄貴はこっそり年齢を誤魔化していたからね。俺が家にいるから安心して働けたし」

 でも、俺は近場がいいんだよね。


「爺ちゃん孝行したいしね」

「……………前から気になっていましたけど、良希さんも静夜さんもお爺さんに遠慮している時がありますよね」

 普段甘えているのに何か一線引いている時が。


「う~ん。まあね」 

 苦笑。


「内緒にしてくれる?」

 これ勝手にしゃべったら爺ちゃんと兄貴に叱られるんだろうけど、小夜子ちゃんなら大丈夫かな。


「爺ちゃんと呼んでいるけど、戸籍上は俺達のお父さんなんだよ」

 爺ちゃんは。


「えッ!?」

 とんでもない事を聞いたと小夜子の目が大きく見開かれる。


「俺も兄貴も養子なんだ。詳しい事は覚えていないから省くけど。養護施設に居た俺らを引き取ってくれて息子にしてくれたんだ。この歳でお父さんと言われるのは落ち着かないと言って爺ちゃん呼びにしろと言っていてね」

 それで爺ちゃんなんだ。


「俺らの恩人なんだ」

 だからこそ恩を返したい。


「兄貴はもともと剣道を楽しんでやっているけど、将来の夢は爺ちゃんの道場を継ぐことで俺は兄貴が戻ってくるまで俺が爺ちゃんを守ると決めていたんだ」

 だから近場でバイトを探しているんだけどね。


「………………」

 重い話を聞かせてしまったからか小夜子はずっと下を向いている。


「あの、良希さんっ」

 ふと思いついたばかりに小夜子が口を開く。


「お兄ちゃん。今年受験生なんですよ!!」

「うん。知っているよ。俺の一つ下だしね」

 あいつの成績どう? よく俺が教えていたけど。


「お兄ちゃんはまじめにやれば成績は悪くないんですけど、店の手伝いとか兄弟の世話とかをしないといけないと思って勉強を疎かにしてしまうんですよ」

「そうだね~。うん知っている」

 よく勉強中に店が混んでないかとそわそわしていたからな。

 そういう所で不器用な面を見せていた。


 逆にそこら辺小夜子ちゃんは器用で何でもこなしていたが。


「お兄ちゃんに勉強に集中してもらいたいからアルバイトを雇おうかと話が出ているんです」

 そこまで聞けば次の言葉がわかる。


「それを俺に……?」

 確認すると頷かれる。


「ご近所さんですから何かあったら融通が利きますし。良希さんは昔から店に出入りしているので任せて安心ですし」

「あっ、そこまで信頼されていると嬉しいけどっ、それは公私混同しそうで甘えてしまって役に立たないと思うし……」

「大丈夫ですよ。お父さんは仕事に関しては公私混同しませんし、良希さんの性格からして雇われたら仕事とプライベートをきっちり分けて、逆によそよそしくなったと寂しがらせると思いますから」

 誰が寂しがると言うのだろうか。


「それに……」

 小夜子はそっと隣に座る。


 滑り台では一回だけだと言っていたのに風斗と雷斗が二回目をしようと階段を上っている。


「一方的に秘密の話を聞かせてもらうのもなんですから私も誰にも言っていない秘密があるんです」

 こそっ


「高校は遠くの学校に行くつもりで、店の手伝いは今年でおしまいにするつもりなんです」

「えッ!?」

 内緒ですよと指を口元に持って行く。


「洋裁の学校に行きたいんです。そこで学んで店の制服を作りたいんですよ」

 これを見てください。


 鞄からスケッチブックを出して見せてくれる。


 そこには可愛らしいチェックの制服にエプロンの絵。着ているのは奏子だ。


 ぱらっ

 めくると次は信之と尊。

 風斗と雷斗もいる。


「私が作った服をみんなに来てもらいたいんです」

 パン屋の仕事も手伝いたい。でも、夢の事を考えると手伝うのも難しい。


「だから良希さんが働いてくれると助かるんです」

 お願いできませんか。

 小夜子のお願い。


「いいよ」

 ぱぁぁぁぁ

 小夜子が心底嬉しそうに微笑む。


「小夜子ちゃんの作った制服。俺も着れるかな」

 バイトの期間では難しいかなと話をすると。


「大丈夫!! 着れますよっ!! しっかり作り上げてみせます!!」

 小夜子が張り切った様に約束をしてくれた。

 

小夜子(お兄ちゃんのお嫁さんになるから私の作った制服着れますよ!! 結婚式の服も私が作りたい!!)

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