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良希15歳 思春期

もう一人の主人公は置き去りにされている(-_-;)

 くしゃっ

 もらった結果用紙を乱暴に握りしめる。


「どうした?」

 覗き込んでくるのは小学校からの腐れ縁の友人。


 と言うか、小学生の時に信之と婚約しているというのを揶揄ってきた奴らの一人である。あの事件のあった後に兄貴と信之に責め立てられて謝りに来てからの付き合いだ。


「どうしたもこうしたも」

 どう言えばいいのかと、結果用紙を貰ってわいわい友達と見せ合っている光景とか、しんじられないとじっとその用紙の結果を見つめている者がいる教室をそっと抜ける。


 あそこで話す勇気はない。


「どうしたんだよ。こんなとこまできてさ」

 そう言いつつも付いてきてくれるそいつの人当たりの良さに苦笑してしまう。


「瀬名の結果どうだった?」

 まあ、分かるけど。

 苗字こそかっこいいが、正直苗字負けしていると評判のいわゆる凡人枠に入れられてしまうからこそ予想は付く。


「平々凡々フツーが一番。βに決まってんだろう!! と言うかαとかΩなんて都市伝説だろう。って、お前は違うか」

 お前らは運命の番サマだしな。


「………………」

 無言で結果用紙を見せる。


「んっ? 何々? ………なんだこれ? 測定できませんでした?」

 お前Ωだよな。


「………………()()分からないんだよ」

 そう。


「ずっとΩだと思ったんだ」

 過去形。


「信之と婚約者だと言うのを普通に受け入れていてさ。覚えてるか? お前が俺に向かってホモだとはやし立ててたのは」

「………覚えてるに決まってんだろう。お前の兄ちゃん怖かったし、そのあと騒ぎを知ったお前の婚約者に突進された時死んだと思ったわ!!」

 猪か熊に襲われる人はこんな気持ちになったんだろうかと覚悟を決めた。


 まあ、それも杞憂で済んだが。


「そろそろ解放しないといけないのかな………」

 ぼそっ


 廊下の窓から外をぼんやりを眺める。


「ただ分かんねえだけだろう。第二の性が発見されたのはまだ十年ちょっとなんだし、検査も確実と言えないだろうし」

 何変な事を言い出しているんだ。


「と言うかこんな暗い事を言い出して。お前の旦那が聞いたら叱られるぞ」

 あいつが怒鳴り込んできても知らんぞ。

 瀬名が呆れたように告げるが良希の心には届いていない。


「はぁ~」

 自分の声が届いていない事に瀬名が気付いて溜息を吐く。


「なんであいつ年下なんだよ!! 押し付けらんねえじゃねえか」

 このめんどくさいのを回収しに来ねえか。

 瀬名がある意味元凶を呪うが当然届くわけないし、届いても来ないのは理解している。


 因みにもう一人回収してくれそうな人がいるがあの人は剣道が強い高校に進学してしまったし、第一受験生に何をさせるつもりだと言われたらたまんない。


「…………この結果ってさ」

「うわっ!?」

 黙っていたのに急にしゃべりだしたぞ。


「俺が現実を受け入れたくないから測定できないと思うんだ」

「はぁ~!?」

 何言い出すんだこいつ。


「俺が、Ωじゃないという結果が出るのが怖くて第二の性の進化を拒んでいるんじゃないのかな」

 そんな気がする。


「なんだそれ? いきなりすごい事言い出すな」

 と言うかそんな事できたらすごくねえか。


「…………この検査受けるの実は二回目なんだよね」

「まじかっ!!」

 思春期の頃に出やすいからその時に学校で検査してもらえるんだろう。


「まあ、そうだけど。念のためね」

 一回目は中学の時に受けたんだ。

 

「念のためって……?」

 なんかあったのかよ。


「………………」

 気まずいと黙り込んでいる。

 これは何かあったな。


「………………信之を解放してくれと言われたんだ」

 遠い目。


 良希は思い出す。

 いや、思い出すのではなく忘れられないのだ。


「信之ってさ。成績は普通で運動神経は特にいいというわけじゃないけど、努力家で出来ないのならその分努力すればいいと必死に取り組んでやり遂げちまう。で、誰にでも優しい」

 そんな信之を好きにならない者はいない。


 まあ、一部では、いい子過ぎて気持ち悪いと言われているけど。


「そんなあいつの汚点は俺が婚約者だという事でさ。ある日、可愛い女の子に呼ばれて有頂天になって向かったんだよね」

 来てくださいと言われた場所に。


 こういう時に呼ばれるのは典型的パターンだろうと婚約している身分だが浮かれていた。

 だが、

「”あなたは信之君に相応しくない”と言われたんだ」

 きっぱりと。


 男同士で婚約者なんてどうかしている。

 気持ち悪い。

 貴方みたいなチャラい人信之君に相応しくない。

 いい加減解放しなさいよ!!


「そんな事ない。信之は俺の婚約者なんだと言い返せなくて、じいちゃんに頼んで検査してもらったんだ」

 結果は測定できなかった。


「まだ未発達だから検査に引っ掛からなかったかもしれないと検査をしてくれた看護婦さんに言われたけど、その後別の看護婦さんが話をしているのを聞いちゃってさ」


 たまにいるんですよね。βの子が自分がαだとかΩだとか思い込んでしまって、身体の成長を止めてしまうというのが。

 αの子供は検査する前から選ばれた者という空気を放っているし、反対にΩって、身体能力とかが劣っている事が多いんですよね。あの子どこから見ても普通の子でしょう。検査が測定できなかったんじゃなくて、βだから変わらないだけじゃないかな。


「それを聞いてすこんと納得したんだよね」

 俺は誰かの特別でいるのはおかしい。


 普通なのだと。


「信之はさ。子供大好きなんだよね」

 妹と弟の世話をするのが好きで、家族を大事にしている。


「Ωなら子供産んであげれるけど、俺は産めない」

 男同士で婚約者と言うのがおかしかったんだ。


「解放してあげないとな………」

 そう思いつつも先延ばしてしまう。

 酷い事をしていると良希は自覚していた。

??「手放すと思うか」

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