信之5歳 欲しいもの
無茶ゆうな
「信之。もうじきお誕生日ね」
晩御飯の片づけを手伝っていたら母さんに声を掛けられる。
母さんは生まれたばかりの奏子をあやしながら尋ねてくる。
いい夫は家事を手伝う事だって聞いたからな。
きちんと家事も出来る男になるんだ。
ましてや母さんは育児にお店にと忙しいからな。
「何か欲しいものある?」
母さんに聞かれて首を傾げる。
欲しいもの……。
「特にないけど」
「おにいちゃん。お母さんはいつも頑張っているおにいちゃんにごほーびをあげたいの」
小夜子がよたよたと食器を運びながら教えてくれる。
「小夜子にはばれてしまったね」
父さんが食べている途中で眠ってしまった尊の顔を拭きながら困ったように笑う。
「じゃあ、弟か妹」
欲しいものといわれたらそれしか浮かばない。
「えッ!?」
「えっと……信之?」
母さんと父さんが戸惑っているみたいだ。
「おにいちゃん? 尊も奏子もいるよ?」
なんで?
「良希が遊びに来てくれるから」
きっぱり。
「良希くんが?」
「うん!!」
良希は先日生まれた奏子に会いによく遊びに来てくれる。
奏子のために子守唄を歌ってくれて、あやしているのだ。
そう言えば、尊にもよく子守唄を歌ってくれたし、小夜子とも遊んでいる。
「子供が好きなんだ。だから、もっと妹か弟が居れば家に来てくれるんだ!!」
だから弟か妹。
「それは……」
「えっと……」
「?」
困ったようにこちらを見る父さんと母さんに。
「奏子がいるのにきょうだいはやいとおもうよ」
小夜子が告げる。
「そっか……」
しょぼん
「あっ、でも」
気が付いたとばかりに母さんが告げる。
「誕生日会。良希くんと静夜くん来てくれるから」
母さんの言葉に嬉しくなって顔をほころばせる。
「ホントかっ!!」
嬉しくて大きな声を出してしまったので。
わぁぁぁぁぁぁん
ぎゃぁぁぁぁぁ
眠っていた尊と奏子を起こしてしまい、父さんと母さんが必死にあやす。
そんな自分はまだまだいいお兄ちゃんじゃないなと反省してしまう。
目指すのはいい兄ちゃんと良希に自慢されている静夜。
その道はまだまだ遠いようだ。
「それにしても弟か妹か……」
「今まで誕生日プレゼントを聞いても自分よりも小夜子や尊に何かあげて欲しいと言われていたから希望が出るのは嬉しいけど……」
子供たちが寝静まった時に困った様に話をしている両親が居たとか。
これでお子ちゃまが終わります




