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運命だと分かる前に本能は気付いていた  作者: 高月水都


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信之15歳 名前の話

ずっと書きたかった名前の話。

 良希はぐっすり休んでいる。


 それを見つめていたらスマホが鳴った。


「…………」

 無視しようかと思ったがずっと鳴り響き、さすがに無視はできなかった。


「はい」

 不機嫌を隠そうもせずに出ると。


『未来のお義兄さまに対してその声は何だろうな』

 スマホから聞こえたのは静夜の声。


 しまった。誰から掛かってきたのか確認しないで出てしまった。


「す、すみま」

『まあ、お前の偽善ぶった面が崩れたのは面白いからな』

 許してやるさ。


『馬鹿弟はどうした?』

「良希は馬鹿ではありませんが、眠ったところです」

 抑制剤の効果があったようで。


『そりゃよかった』

 安堵しているがそれを隠そうとするような声。


『じゃあ、少しいいか』

 話があると言われて、繋がれた手を見る。


 離したくないが、離さないと話を聞けないし、起こしてしまう。

 ここで起こしてしまうからと電話を切る事もできるがそれをしたら恐ろしい目にあいそうなので辞めておく。


 起こさないように手を放して、そっと部屋を出る。

「なんですか?」

 ………もう暗くなっている。騒ぎを知っているとは思うが家に連絡しないと。


『爺が目を覚ました』

 ぼそっ

 喜んでいいのか泣けばいいのか分からないとばかりに告げられた言葉。


「えッ……」

 じゃあ、良希に伝えないと。


『伝えなくていい。良希もいろいろあったしな。休ませてやれと爺から言われたんだ』

 起きてから早速何を言っているんだろうなと悪態をついているが照れ隠しだ。


「お爺さんが? なんでそんな……静夜さん話したんですか?」

 良希に起きた事を。


『というか知っていた』

「えっ?」

 知っていた? 誰かが伝えたのだろうか。


『爺が夢で良希の危険を見たんだとよ。で、助けないといけないと慌てたら起きたんだ』

 寝てても孫馬鹿だ。

 泣きそうな声だった。良希の危機に気付いて起きてくれたという事実にそこまで愛されているんだと実感したというかのように。


『………事情を知らないで巻き込んで悪かったな』

「い、いえ……」

 そう言えば何も知らないし、どうしてああなったのかも知らない。


『電話越しでいうのもなんだけど、()()俺らの腹違いの弟だ。出来が悪くてな素行も悪いから()()を後継者にしないと決めて捨てたはずの俺らを無理やり後継者にしようとしていたんだ。その事実を知ったから暴走しての誘拐騒ぎ』

 捨てたのに利用しようとするなんて虫が良すぎだよな。

 その声に宿っているのは呆れか。


『ほんとぶっ潰してやりたいな』

 いや、怒りだった。


 静夜さんなら実際につぶしそうだなと思うが、それに巻き込まれたのが良希だと考えると止めようなんて考えない。


『はッ』

 鼻で笑う声がする。


『いい子ぶるよりもそっちの方がいいぜ』

 綺麗ごとばかりじゃ反吐が出る。


『…………その綺麗なのを良希は守りたかったようだけどな』

「…………」

 守りたいか。それは無理だな。だって、

「俺だって良希を守りたいです」

 誰かを傷つけても。


『………だったら泣かせるなよ』

 静かな声。名は体を表すとはまさにこの事だな。


『あいつはな。自分のせいで苦しむのは見たくないからな。あいつのためという大義名分で動いてあいつの心に傷を負わせるんじゃねえぞ』

 それをしたらぶっ殺してやるぞ。


「肝に銘じます」

 静夜さんならやりかねない。なんだかんだで弟想いだしな。


『………なあ』

 ぼそっ


『あいつの名前の由来。あいつは絶対言わねえから教えてやる』

 名前の由来? なんでいきなり。


『良希。字面だけならいい名前だよな。()()()()()()()()()という親の身勝手さが付けた名じゃなきゃな』

「えッ……!?」

 都合の良い子……?


『あいつは生まれた時から親に厄介なガキだと思われていた。だからこそ人の好意が理解できないし、それが怖い』

 多分、一生続くだろうな。


『重いぞ』

 それでもいいのか。


「もちろんです!!」

 そんなの当たり前だ。


「なら、いい」

「あの……静夜さん」

 都合の良い子という意味での良希なら。()()()?()


「静夜さんの名前は?」

 どんな由来ですか。


『ちっ』

 舌打ち。


『…………夜泣きをするな。静かにしろ』

 そんな呪いだよ。


「殴ってやりたいですね」

 そんな身勝手な二人の親を。 


「良希と静夜さんの家族は彦五郎さんだけだ。もう関わるなと殴りたいですっ!!」

 ここまで殴りたいと思ったのは初めてかもしれない。


『殴る分あいつを大事にしろ。それをするのは俺とあいつの役目だ』

 そんな馬鹿に時間を取るのも面倒だけどな。


『という事で、そろそろ切るぞ』

 用件は済んだとばかりに告げる静夜にふと今なら言えると思って口を開く。


「そういえばお義兄(静夜)さん」

『なんだ?』

 さっさと切らせろよという悪態をものともせずに。


「今、()()()()って言いましたよね」

『………』

 ぶちっ

 返事もなく切られた。


「…………」

 きっと心配して掛けてくれたんだろうな。後、すぐに知らせたくて。


「良希喜ぶだろうな」

 お爺さんが起きた事を教えてあげたい。でも同時にゆっくり休ませたいとも思った。


 幸せな悩みだなと笑みを浮かべながら。

そんな勝手な名前だけど、綺麗にまとまっているのは親の見栄。

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