良希16歳 昔々の話
良希の心の傷の話。
虐待描写あり。
『お前さえいなければっ!!』
力強く頭を押さえつけられて叩かれる。
『お前さえっ!! お前のせいでっ!!』
壁に叩きつけられる。
『良希に何するんだよっ!!』
守ろうとするように手を広げる兄の背中。
『邪魔すんなっ!!』
『にいちゃ!!』
蹴り飛ばされて、床に倒れる兄の姿を見て手を伸ばす。
『気持ち悪い』
髪を掴まれる。
『気味の悪い。何この金色』
金色の髪の子供を産んだから捨てられた。
みんな黒髪なのになぜか良希だけ黒くなかった。
父親という存在を良希は知らない。
金色の髪は自分の子供ではないと告げて捨てたから。
母親という人は捨てられた原因は金色の髪の子供の所為だと責め立てる。
『お前は疫病神だ』
兄が、静夜が聞かせないように耳を塞ぐが実の親から与えられた毒はゆっくりと浸透していた。
『お前が居なければ!!』
僕ガイナケレバ………。
僕ガイタカラオ兄チャンハ怪我ヲシタ。
叩カレタ。
僕ノ所為デ……………。
『男同士では結婚できないんだぞ』
『ホモかよ!! 気持ち悪い』
与えられた毒は遅効性でゆっくりと影響を与えた。
『あんたみたいなやつに付きまとわれて倉田君がかわいそう』
信之が人気者で女の子にもてた。
格好いいと言われると好みだからと言えるが、優しさとまっすぐさで、困った人に手を差し伸ばす。家族思いで兄弟と一緒に居るところを見ていると誰もが彼を好きになる。
そんな信之を好きになる人はその傍に居るおまけに気づいて眉を顰める。
金色の髪の子供。
真面目ないい子の信之の傍に相応しくないと。
ましてや婚約者。
男同士で婚約なんて間違っている。
正義という名の暴力で人は誰かを傷つける。
その正義で助けを求めていた子供を見向きもしなかったのに。
力を持つ人は誰かを傷つける。
でも、誰かを守るためにも力は必要。
『良希』
信之の笑顔が曇らないように守るよ。
信之が真実に気づくまで――。
(お前に相応しい人にお前が会えるまで)
そしたら、目を覚ますよね。
「俺はお前の家族になれないよ」
誰かを守りたいけど、守るための力が誰かを傷つける。
世間というものは誰よりも彼の敵だった。




