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信之15歳 良希のお爺さんと

お爺さんの名前を決めていない。

 試合は終わった。


(やっぱ、お義兄さんは強いな。あっという間に倒してしまった)

 東と書かれた胴着がいつ相手を倒したのか分からなかった。それだけ早かったのだ。


「あっ、お爺さんだ」

 静夜に近付いて声を掛けるのは良希のお爺さん。


 お爺さんが嬉しそうに声を掛けて静夜が恥ずかしそうに顔を赤らめている。


「照れてんな~」

 にやにや

 良希がそんな静夜の様子を面白がっている。

 

 その視線に気づいたのだろう静夜がこっちに視線を向けて、二言三言お爺さんにこちらを指さして話をするとお爺さんもこっちを見る。


「あっ、やばっ」

 そう言えば良希は一緒に行くかと誘われていたのに断っていたんだ。


 見つかったら何か言われると身構えるのも納得できた。


「良希っ!!」

 大きな声で遠くにいるのにこちらまではっきり届く。


「お前来ないと言っていただろう!! って………」

「こんにちはお爺さん」

 無駄な抵抗をしようとしている良希の首根っこを捕まえて、挨拶をすると。


「信之くんと一緒に行きたいから断ったのか。それならそうと言えばいいじゃろう」

 それなら無理に誘わなかったぞ。

 お爺さんが告げてくるので。


「いや……気分が変わっただけで……」

「俺の誕生日だから一緒に遊びに行こうと約束していたんです」

 間違っていない。


「そうかそうか。そう言えば誕生日だったな」

「はいっ!!」

「一か月だけ良希と同じ歳じゃな」

 言われてみればそうだ。


 学年は同じではないけど、少しだけ同じ年齢だ。


 てれっ

 同じ歳と言う言葉につい嬉しくなってしまうが、良希は残酷だった。


「一か月だけで何言ってんだよ。爺ちゃんも」

 俺が年上なのは変わんないでしょう。


 まあ、それはそうだけど………。

(同じ年齢だったらよかったのにな)

 同じ歳なら一緒の教室で授業を受ける事も出来たかもしれないし、修学旅行とかも一緒に行動できた。

 何で自分が年下なんだと思った事か。


「社会人になったら年齢なんて関係ないでしょ」

 特に1,2歳差なんてさ。


「それもそうじゃな」

 お爺さんも頷く。


「お前ら。社会人になってもべったりするのかよ」

 心底嫌そうに静夜が顔を歪める。


「はい。結婚しますので!!」

 そうだ。年齢が一つ違うなんて関係ない。将来はずっと一緒なんだから。


「そうか。そうか」

 お爺さんは嬉しそうだ。


「今から静夜と食事に行くが、二人もどうだ? 信之くんが誕生日だから奮発するぞ。静夜の好きな焼肉でいい店があると聞いたからな」

「わざわざ店で喰うもんじゃねえだろう。食が細くなっていると聞いたぞジジイ」

 静夜が悪態をつくが、お爺さんを心配しているのと祝われて嬉しいのと恥ずかしい想いで素直になれないだけであるのを信之も良希も理解している。


「爺ちゃん。倉田家でも御馳走が出るから昼間に食べ過ぎたら困るだろう。せっかく頑張って御馳走作っている小夜子ちゃんと奏子ちゃんが悲しむよ」

 ましてや焼肉なんて食べ過ぎるのが予想できるし。

 育ち盛りの中高生を甘く見るなよと信之が告げる。


「なんで小夜子と加奈子がご馳走作っているって分かるんだ?」

 確かに二人がご馳走作っておくからと言っていたけど。


「それくらい予想付きます」

 毎年の事だしね。


 そう言えば毎年だった。

「良希」

「お断りします」

 晩御飯を一緒に食べないかと誘おうと思ったらその前に断られた。


「家族団らんに部外者が混ざっちゃ駄目でしょう」

「…………………………どうしても駄目か?」

 しょぼん


「ッ!? ………駄目なものは駄目」

 きっぱり言われてしまった。


「そ、そうか…………」

 寂しいな。


「お前ら相変わらずべったりかよ。うぜえ」

「静夜」

「けっ」

 静夜が信之と良希を見て本当に嫌がっている顔をしている。


「お前らに付き合っていたら時間足りなくなったじゃねえか。………荷物取ってくる」

「あっ、手伝うよ」

 静夜が悪態をついて離れようとすると良希が声を掛けて一緒に向かっていく。


「じゃ、じゃあ、俺も」

「信之は爺ちゃんと一緒に玄関で待ってて」

 手伝うと言い掛けて先に釘刺された。


 誕生日だからもっと一緒に居たいのに。

 いや、誕生日関係なくもっといつでも一緒に居たい。


「仲いいの」

「ありがとうございます……」

 落ち込んでしまうが落ち込んでもいられないので一緒に玄関に向かう。


「小夜子ちゃん達が用意していいるのなら御馳走は諦めないとな」

 一緒に食事が出来たら楽しかっただろうが。


「焼肉じゃないのなら付き合いますが……」

 さすがに焼肉は食べ過ぎる。


「そうじゃな。志信くんに叱られたら困るしな。だが、年寄りの我が儘じゃ付き合ってくれるかな」

「ええと……」

 迷いながら。


「二人がいいというのなら」

 せっかくの家族団らんなのに混ざってしまうのも心苦しいので。


「大丈夫だろう。悪態付いているが静夜は信之のくんの事は可愛がっておるし、良希は言わずもがなじゃ」

「静夜さんに嫌われていないのは知ってますよ。あの人はなんだかんだで俺達の面倒を見てくれましたから」

 そう長男として下の子を見ているのが当たり前だと思っていた自分をなんだかんだで気に掛けてくれていたから。


「そうじゃったな」

「はいっ!!」

 だから良希は勿論静夜の事も好きである。


「………そうか」

 嬉しそうに微笑んで。


「信之くん」

「はい」

「ありがとう」

 優しい目を向けられる。


「君が居てくれてよかった」

「お爺さん……?」

 一緒に玄関に向かうだけだよな。わざわざお礼を言われる事では。


「………………静夜と初めて会ったのはこの町じゃった。今日のような剣道の試合があって観に来てな」

 初めて会った?

 意味が分からないので首を傾げる。 


「そうか。知らないか」

「お爺さん?」

 一体何の事だろうか。

 いや、良希の幼い頃の話だろう。


 聞きたいと思ったけど良希が言いたくないと思っていたので聞かない事にした昔話。

「………いつか良希の口から説明があると思う。それまで待ってくれるか」

「待てます!!」

 良希が直接話してくれるのを。


「そうか……」

「……………」

 お爺さんは嬉しそうに何度も頷いて。


「良希も静夜も君が、君達がいるから楽しそうだ」

「楽しそう……?」

 良希はともかく静夜も?

 まあ嫌われていないし、面倒も見てもらっているけど楽しそうと言われると……。


「二人を家族として引き取ったが正直不安も大きかった。老いぼれ一人が二人も子育てを出来るかとな」

「……………」

「良希は君に出会って、笑うようになった。静夜は本音を言えるようになった」

 儂一人では無理だった。


「ありがとう」

 礼を言われるが。


「良希は俺が居なくてもお爺さんのこと大好きですよ。それに静夜さんも口が悪いけど慕っているのは分かりますし」

 仲の良さは端から見ても分かる。


「そうか………」

 とても嬉しそうだ。


「これからもよろしく頼むよ」

 頭を下げられる。


 そのタイミングで良希と静夜が荷物を持って現れれた。

この後みんなでファミレスを食べに行く。


静夜は焼肉とか鍋のように大勢で囲んで食べるメニューが好きだが、胃が小さくなったお爺さんの好きな薄味の日本料理の店を調べていたので少し残念に思っていたりする。


良希は甘い物が好きで特にホールケーキをみんなで切って分けるのが好きであったりする。

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