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良希15歳 静夜18歳

血のつながった赤の他人と血のつながらない家族。

 先日信之と遊びに行った。

 最初はデートだと張り切ったけど、奏子ちゃん。風斗くん雷斗くんが居るのを見て、ああ子守りを手伝うんだなと自分の勘違いが恥ずかしくなった。


 そうだよな。俺と違って信之モテるし~。


「あいつもいつまで誤解しているんだろうな」

 婚約者とか。好きだとか。

 あいつならより取り見取り。可愛い女の子がいいだろうに。


(男の俺なんてな)

 まあ、でも。


「俺も大概だけど」

(いつまでも目を覚ますなと思っているんだから)

 ほんと酷い奴だ。


「良希。場所はこっちであっているか?」

 メモと睨めっこしていた信之が声を掛けてくる。


「うん。あってるよ。剣道の大会はそこで大概行われるって聞いてたし」

 小さい時爺ちゃんの試合を観た事あったけど、それもここで行われたし。


 あたりを見渡して、だいぶ景色が変わってしまったので記憶は当てにならないなと思っていたら。

(あっ……)

 ふと既視感に襲われる。


「ああ、ここは……」

「良希?」

「昔、住んでいた辺りだ………」

 周りの光景が変わってしまったけど、変わっていないものを見ると思い出す。


「そうなのかッ!?」

 信之。なんでそんな興奮しているんだ。


「そうか。俺と出会う前はここに居たんだな。その頃の良希はどんな子だったんだ。でも、きっと可愛かったんだろうな~」

 想像しているのだろう。なんか嬉しそうだ………若干気持ち悪いけど。


「…………昔の俺か」

 

 ゴメンナサイ

 ゴメンナサイ!!

 叩カナイデ!!


 ゴメンナサイ。兄チャンハ叩カナイデ


「…………………………そんな可愛いものじゃないよ」

「そうなのか」

 じゃあ、どんな子だったんだ。


「さて、その話はお終い。早く入ろうぜ」

「だ、だが……」

 聞きたそうにうずうずしているな。そんなにいい話じゃないのにな。


(俺だって思い出したくなかったしな)

 そっと前髪を摘まる。


 奇妙な金色。

 兄である静夜は黒い髪なのに俺は金色。


 目の色は同じ琥珀に近い金色だけど。


 自分の金色の髪が嫌いだった。

 でも、好きになれた。


『良希の髪は綺麗だな。お日様みたいだ』

 そう馬鹿みたいにいつも言ってくる奴が傍に居たから。


「………いいたくない話なのか」

「………」

「なら、聞かないでおく。すっごく聞きたいけど」

 本当に聞きたいのだろう。すっごく我慢している音がする。


(お前は本当に聞きたいのか? 俺の事?)

 そんなにいいものではない。


 爺ちゃんにもらわれる前の話も。

 その時の経験で人の感情を音として捉えれるようになったこの特殊な耳も。


 ……………俺がΩじゃなくてもお前はいいのか。


「――良希」

 信之が声を掛けてくる。


「俺は良希の事は何でも知りたいぞ。だから」

「?」

「いつか聞かせてくれ」

 言いたくなったら。


 真っ直ぐな目を向けられて告げられる。


「それを誕生日プレゼントにしてくれと言われるかと思った」

「ッ!? いっ、いやっ!! それは無理やり聞き出す事じゃないからなっ!!」

 その手があったかと今更気付く信之に笑ってしまう。

 こいつはいつもそうだ。


(いつも俺を優先しようとしている。いや、俺だけではなく。誰かを優先にしてしまう)

 それがこいつの困ったくせ。


(ここで無理やり聞き出せばいいのにな)

 まあ、そんな事が出来ないから信之なんだろうけど。


「いつかな」

 今はそう返すのが今は精一杯だ。

 そういつか話せる時が来るだろうか。




 会場に入る。

「あっ、俺先にトイレに行ってくる」

「そうか。じゃあ、俺は席を取っておくな」

 信之に一声を掛けてトイレに行き、すっきりしてくる。


 信之にどこらへんにいるかと携帯を取り出して掛けようとした矢先だった。


「――しつこいなあんたら」

 ピリピリした声が耳に届く。


「兄貴?」

 不快だと怒鳴りたいのを堪えている怒りの重低音の音が響く。これが本当の音だったらとっくの昔に窓が割れているよなと思われる。


 それだけ怒っているのだ。


「試合前にお邪魔して申し訳ありません」

「まったくだな」

 別に野次馬ではない。そちらを通った方が観客席に近いだけなのだが、こんな場所に突進していくのは正直気が向かないのだが。


 柱にもたれて機嫌悪そうに剣道着に身を包んでいる静夜とサングラスをかけたスーツの男が二人いるのが見える。


 スーツの男の方が下手に出ている。


(誰だろう?)

 大学のスカウトとかもありそうだけどそれとは違うだろう。すごく不穏だから。

 

「今日は旦那様も静夜さまの試合をぜひ観られたいと」

「はっ。で、そちらのぼんくらなお孫さんの出来の悪さを嘆かれるんですかね」

 ざまあみろ。っていうか来んじゃねえ。


「そんな事をおっしゃらずに貴方様のおじい様と弟様ですよ」

(えっ!?)

 おじい様と弟様……?


「俺のジジイは東のジジイだけだし、弟も良希だけだ」

 分かったならさっさと帰れ。


 しっしっ

 手で追い払う仕草をした矢先に静夜の目が大きく開かれる。

 その目が良希を捉えたのだ。


 だが、すぐにそれをポーカーフェイスで隠して、隠れろと言われた気がした。


「では、また来ます。今日は上で応援しておりますので」

「だから来んじゃねえ」

 そいつらを追い払って、もう来ないだろうと確認してから。


「出てきていいぞ」

 声を掛けられる。


 不機嫌なのは相変わらずだけど怒りは少し収まっている。

 

「さっきのは……?」

 聞いていいのか分からないけど、ここで呼んだという事は尋ねてもいいだろうと思って聞いてみる。


「…………俺達を産ませた奴の身内の部下だ」

 遠回しに言ってくるが、それもそうだ。


 俺達の家族は爺ちゃんだけだ。


 今更、チチオヤもハハオヤもその親もいないも同然だ。


「俺達を産ませた奴の子供がぼんくらの出来の悪いβで後継者にそぐわないと思っていた矢先にとっくの昔に捨てた子供がαで剣道で有名になったからシャリシャリ顔を出してきやがったんだ」

 利用価値があるとどの面で言っているんだ。


「勝手だね。似てない俺だけならともかく似ている兄貴を連れていけばよかったのに」

「……………親の反対を押し切って駆け落ちしたくせに、金髪のガキを産んだから浮気扱いして捨てて、実家で悠々自適に何食わぬ顔で再婚したからな。親権も放棄したのに」

 自分勝手な存在だなと思っても所詮また聞きだ。


 お前のせいでいなくなったんだと責め立てられる声でしかその存在の影を知らないのだから。


「あちらさんは捨てたはずの俺も浮気してできたはずのお前も手元で育てると接近してきたんだ。お前が知らないって事は、そっちにはまだ来ていないようだな」

 ジジイが隠していてもお前なら気付くだろうし。


「捨てた金髪のガキでも? 美談にでもするつもり?」

「……………浮気だと散々喚いていたが、なんて事ない。お前の金色の髪は先祖返りなだけだったのですまない事をしたと謝ってきたぞ」

 挙句に自分の子がした事を知らなかったと言い訳してきてな。


「…………………今更」

 子供の言い訳でももっとましだろう。


「倉田家のガキの育て方がいかに素晴らしいかと思い知らされたぞ」

「あんなのと比べたら失礼だよ」

 倉田家は近所でも評判なんだから。


 そんな軽口を言いながら。


「爺ちゃんには……?」

「いつか言わないといけないかもしれないが、ジジイには言いたくねえな。ただでさえ厄介な俺らを面倒見てくれているのに」

「遠慮された方が怒るよ。爺ちゃんは」

 また拳骨を食らっても知らないよ。


「…………………」

 ぶすっ


「………兄貴がさ」

「んだよっ」

「兄貴が言いたくないのってさ。あんなのと血が繋がっているのを爺ちゃんに知られたくないからだよね」

「…………」

「受け入れてくれるのかそれでも愛してくれるか。怖いよね」

 信じているけど、怖い。


「勝手な事言ってんじゃねえ」

 軽く小突かれる。


「さっさと戻れ」

「そうする」

 答えて信之の元に戻る。それと同時に俺にも黙っていたのは俺のいらぬ心配を掛けさせたくなかったからだろうな。


 そんな不器用な兄の優しさに苦笑しつつ、家にも来る可能性があるからこそ警戒しないといけないと身を引き締めた。 

 良希の髪は金色です。

 それが原因で浮気だと言われて捨てられた母親に暴力を振るわれていたのを静夜がずっと守っていました。


 母親は今どこにいるか分かりませんが、生きているのは確かです。

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