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信之14歳 とある計画

良希のバイト中。

「邪魔するぞ」

「あっ、伊織じゃん。久しぶり~」

 店から伊織の声と良希の声がする。


 そう言えば伊織が遊びに来ると言っていたな。


「まじでバイトしているんだな。小夜子から聞いた時は驚いたぞ」

「ど~だ。驚いたか。ってか、仕事の邪魔だからさっさと上がるか何か買ってけ」

 他の客もいるしな。


「じゃあ、これにしとく」

 伊織が焼きそばパンをトレーに入れてレジに来ると。


「お前相変わらず腹持ちよさそうなもの選ぶな。晩御飯入らなくなっても知らないぞ」

 そんな事を言いながらそのまま渡す。


「おい、いくらだ?」

「仕方ないからおごってやる。ほら、上がって行け」

 しっしっ

 追い出すように伊織を手で払う。


 すぐに良希が焼きそばパン分のお金をレジに入れているのを見る。


「別にタダでもいいのに……」

「親しき仲にも礼儀あり。タダで貰ったらそれが当たり前になったら困るだろう」

 勉強するんだろう。伊織の気が変わらないうちに戻れよ。


「そう言って、俺の分のパンをくれるからあいつも大概だな」

「そうだな~」

「あいつは次は自分で払えというスタンスだからな。お前だったら、いつまでも集られて終わりだろうけどな」

「………………」

 集られる。だろうか……。


「あ。分かる」

 エプロンを身に着けた尊がすれ違いざまに声を掛けていく。


「そうか?」

「兄ちゃんはさ。いつも誰かに譲ってばっかりで自分を大事にしないからな。小学校の運動会で伊織兄ちゃんに弁当全部取られて、お腹を空かせたまま競技に出ようとして良希兄ちゃんに叱られたよな。”伊織にあげるのはお前らしいけど、それで全力を出せなくて競技に支障をきたしたらみんなが困るんだぞ!!”って」

「あっ、ああ………あったな」

 そう言えばそう叱られてお弁当を分けてもらった。


「後先を考えない優しさだと言っていたよね良希兄ちゃん」

「良希は野生の獣の優しさだけど。信之は幸福の王子のような優しさだと良希が言っていたな。それをされて本当に相手が喜ぶか考えろともな」

 尊と伊織がそんな軽口を言っているが。


「それのどこがいけないんだ?」

 首を傾げる。


「良希の野生の獣の優しさというのはいまいちピンとこないが、誰かを優しくしたいと思うのは当たり前じゃないのか?」

 何か間違っているだろうか。


「これだからな」

 呆れたように伊織が肩をすくめる。


「まあ、兄ちゃんにも譲れないものがあるからまだ安心だけどね」

 それも譲ったらいくら俺でも怒るから。

 尊がそんな事を告げて店に入る。


「?」

 伊織と尊の言っている言葉の意味が分からない。


「俺店にいるから部屋を使うのはいいけど、俺の机の上のは弄らないでね。まだ乾いてないんだから」

「何か作っているのか?」

「木製の飛行機」

 そんなものがあるんだなと思いつつ部屋に向かう。


 信之の部屋は尊と兼用で尊が店にいる間は部屋で伊織と共に勉強をする。尊が部屋にいる時はリビングで奏子達と遊びながら勉強……一応勉強をする流れになっている。


 が、

 

「飽きた」

「まだ10分もやってないだろう」

 伊織は床に寝転がる。


 やれやれと思いつつ、伊織の好きなようにさせる。

 

 まあ、尊の作った飛行機とやらは触らないから好きにさせておけばいい。


「んっ?」

 伊織がベットの下に何かを発見して手を伸ばす。


(ベットの下に何か入れただろうか。そっちは俺のベットだから別に探られて困るものでもないし)

 入れた覚えない。という事は何かのはずみで落ちたという事だろうけど、何か落ちたと言えば……。


「あッ!?」

「おすすめのデートスポット100選?」 

 思い当たったと同時に伊織がタイトルを読み上げる。


「誰かと逢引きでもするのか?」

「んっ? 何で合い挽き?」

 ハンバーグでも作るのか?


「………………」

「……………」

 二人とも無言になる。


「合い挽き肉の事か。ちげーぞ」

「逢引き。ああデートを古風な言い方するな」

 そう言えば伊織は祖父母に育てられてるから古風な言い方が時折出てくるんだった。


(衣紋掛けと言い出して、良希しか分からなかった事あったな)

 良希も祖父に育てられているから考え方が古風なんだよな。


「で、誰と行くんだ?」

「誰って、良希に決まっているだろう」

 それ以外誰と行くんだ。

 信之が告げるとはぁ~と溜め息を吐かれる。


「お前の事だから下見に行きたいと言われてそれを鵜呑みにして外堀を埋められそうだからな」

「なんで知っているんだ? 下見に付き合ってほしいと言われた事を」

 で、鵜呑みとか外堀と言うのはなんだ?


「もうされていたのかよ……気を付けろよ。お前は優良物件らしいからな。で、その下見はどうなったんだ」

 状況によっては殴るから言ってみろ。


「殴るって……。店の予定を確認しようと小夜子に聞いたら即効断れと叱られて、断らなかったら急所を蹴ると言われた」

 あれは怖い。


「それくらいされても仕方ないだろうが。良希が卒業したからハイエナが動き出したか」

「ハイエナ?」

「お前と良希の関係がおかしいから目を覚まさせてやると身勝手な事を言い出す輩だ。男同士で婚約者は変だと散々罵っているからな」

 古い考えで進化を認めていないとかな。


「そう、なのか」

 何がおかしいのだろうか。

 好きになった存在が居る事に性別は関係ないと思うのに。


「そりゃ。第二の性と言うのが分かったのも最近だし。大概βだしな」

「………伊織は物知りだな」

 古い考えと言うのなら伊織が受け入れているのも不思議な感じだ。


「まあ、爺さんと婆さんが戦国時代には衆道は当たり前だったし、江戸時代ではそっちの方がもてはやされていたのだと教えてくれたからな。西洋文化が入った事で、西洋では同性愛は神が禁じた事だと決められているとか何とか言っていたし、そんな決まりがあるのに女性と婚姻を認められていなかった教会では衆道は当たり前だったし、処女性を大事にされていたシスターはそんなの形ばかりで教会の池には嬰児の

死体が沈んでいたと話してたぞ」

 そうであるべきだと言うという事はそれが行われていない状況があって、そういう決まりは時代で変わる。

「誰も思いつかない事は誰もしないという事でそれがまさに禁止されている事だとよ」

「………………伊織のお爺さんは面白い考えをする人だな」

 だから伊織の考え方もだいぶ柔らかいんだな。


「逢引きするのなら早い方がいいぞ。お前がきちんとマーキングしないとかっさらわれる可能性もあるし、良希の方にはすでにハイエナが攻撃をしているからな」

 いまのところ良希は相手にしてないようだがな。


「そうか……」

 なら早くデートの場所を決めないと。


 そう思ったのだった。

大家族のおおらかさ信之。

実は厳しく育てられている良希。

いろんな豆知識を持っているから考え方が柔らかい伊織。

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