信之14歳 残酷な優しさ
鈍すぎて女の敵
「渡辺さんに川越さん。芦田さんもわざわざ来てくれて何かあった?」
同じクラスになったばかりだけど、確か家は逆方向だったよな。
「倉田くんがお店をやっていると聞いて~♪」
「見に来たら店に居なかったらつい呼んでもらったんだ~」
「ご、ごめんなさい……忙しかったのに……」
そう次々と説明してくれる。
そう言えば自己紹介の時にそう伝えたな。実家がパン屋で将来の夢はパン職人。店の手伝いをしていると。
「わざわざ来てくれたんだ。ありがとう」
お礼を告げると三人とも顔を赤らめる。熱でもあるのかな?
「まだまだ寒いから無理はいけないぞ」
「「「えっ?」」」
「顔が赤くて寒そうだ。それに暗くなってきたしな」
外で話をさせてしまった自分が悪かったなと反省して、要件を早めにすましてあげないといけないなと思っていると。
「気にしなくていいよ!」
「仕事をしているところを見たかっただけだからっ!!」
「また、…今度来ていいかな?」
慌てたように告げてくるその子達に、
「だが、ここまで来るのは大変だろう」
家から遠いだろうし。
「う、ううん!! …………会いに来る口実が増えるだけだから」
ぼそっ
「?」
後半何を言ったのか聞き取れなかった。
「そ、そう言えば!!」
思い出したように渡辺が店の中に視線を向ける。
「あの店でレジをしているのって………」
恐る恐る。
「ああ、バイトに入ってくれた良希……東先輩だ」
昨年まで同じ中学に居たから見た事あると思うがと告げようとしたら。
「こんなところまで入り込んで図々しい」
舌打ちをしながらそんな声が聞こえた。
「何か言ったか?」
「えッ!?」
キョトンとした顔で見てきて気のせいだと思わされるが、はっきり耳に届いた。
「図々しいとは誰の事だ?」
「――そんな事言った?」
質問に質問で問い返される。
「今、図々しいと言っただろう」
それは誰の事かと詰問しようとしたら。
「信之~」
からんころん
「いつまで話をしてるの~? ご飯だよ。あっ、みんなもそろそろ遅くなるとご家族が心配するから帰りなよ~」
明るい口調でその当の本人が現れる。
「良希……」
「こんなに暗いとこで話をしていたら危ないでしょう。って、外で話をしてくるようにさせたの俺だけどさ~」
「いや、母さんが外で話せと……」
「じゃあ、さっさと戻りなよ」
信之の背中を押して店の中に入れていく。
良希は店の信之を入れると女の子に一言二言声を掛けていく。
何を言ったのか分からないが、良希の顔が一瞬だけ沈んでいた気がした。
良希「俺の事気に入らないのは知っているけど、ぼろを出したら駄目だよ。あいつこちらの気持ちに気付かないくせに悪意に反応して正論を言ってくるから。嫉妬から出た言葉でもね」
女の子「煩い。ホモが!! あんたみたいな気持ち悪い奴が倉田くんに付き纏わないでよね!!」
という事があった。




