369:自己暗示の特訓!③
お待たせしました!!!!
「だ、だったら⋯⋯」
優希くんにこんなことを言うのは卑怯かもしれない。そう分かってはいるけれど、私の口はもう止められない。
「デート、したい」
私は、絞り出すように小さな声で優希くんにそう伝えた。
「ふぇっ!?」
「え、えっと⋯⋯」
優希くんは顔を赤くして慌てている。
「⋯⋯い、良いですよ」
言った?良いって、言った?
「⋯⋯本当に?」
私が聞き返すと優希くんはこくりと頷く。
「じゃあ、どこ行こう?」
「僕はどこでも大丈夫⋯⋯です」
どこでも⋯⋯か。そうなると逆に迷っちゃうんだよね。
あっ、そうだ。
「せっかくだし、良いところ思いついた」
「良いところ、ですか?」
「うん」
「一緒に、温泉とか⋯⋯どう?」
「い、一緒に!?」
私が提案すると優希くんは顔を真っ赤にしながら驚いている。あ、これ勘違いしてるかも。⋯⋯ちょっとイタズラしたくなってくる。
「嫌⋯⋯かな?」
「え、えっと、その、嫌というかまだ早いと言いますか⋯⋯」
優希くんは慌てて早口で言い訳をしている。
「嫌では無いんだ?」
「うっ、そ、その言い方は卑怯だと思います!」
少し怒らせちゃったかな?でも、そんな反応がまた可愛い。
「ふふっ、冗談だよ」
「でも温泉って良いと思わない?」
「温泉で疲れを癒して、そのあと⋯⋯周りのお店で食べ歩きとか」
「そ、それは楽しそうですけど⋯⋯」
優希くんの反応は悪くない。押したらいけそう?
「じゃ、行こう?」
「う、うぅ⋯⋯」
迷ってる。混浴と絶対勘違いしてるよね?これ。
「ふふっ、優希くん、一緒にって言ったけど混浴じゃないよ?」
「あっ、そ、そういえばそうですよね⋯⋯」
優希くんは勘違いに気付くと少しほっとしたような表情になる。
⋯⋯なんか、負けた気がする。
「⋯⋯やっぱり家族風呂あるところでも探そうかな」
「そ、それはダメです!!」
「どうして?」
「恥ずかしくて死んじゃいます」
「普通逆な気がする⋯⋯」
でも、優希くんと一緒にお風呂⋯⋯かぁ。
『か、薫さん、見ないでください⋯⋯』
なんて言いながらタオルで身体を隠したりするのかな?案外、オープンだったり?
いや、でもそうなると私も見せることになるのか。
流石の私も恥ずかしくて死んじゃうかも⋯⋯
「うん、普通に遊びに行く方がいいね!」
「当然どうしたんですか!?」
そういうのはもっと後の私がどうにかしてくれるはず!
⋯⋯あ、でも、だらしない身体は優希くんには見せられないし、トレーニングとかも始めようかな。一応軽くは毎日やってるから大丈夫だと思うけど。こういうのは早めが良いって良く言うもんね。
♢
「と、とりあえずデートの事は置いておくとして、僕のトランス状態、どうすれば良いと思いますか?」
「うーん⋯⋯」
思い付く手段が無いわけではないんだけど⋯⋯ただ、手間が凄いのがネックかな。
「一応⋯⋯あるよ」
「あるんですか!?」
私は自分に催促させるみたいなやり方は好きじゃないから少し躊躇ってしまう。優希くんならきっと私を頼ってくれると、考えてしまう。
「優希くんの演じる役というか歌に合わせたイラストを私が描いて、優希くんはそれになりきる。
細かい設定を作っておくともっと良いかな?」
「それは流石に厳しそうですね⋯⋯薫さんに負担かけちゃいますし」
私に負担が来るのは良いの。好きな人のためだもん。
他に選択肢があるかもしれないのに、最初に私を選択肢に掲示するのが、なんだか狡いと感じちゃうだけ。
「でも、歌ってみたやオリジナル曲を作るならどのみちイラストは用意するよね?そう考えたらあんまり変わらない気もするかなって」
「あー⋯⋯そう言われたら確かに⋯⋯」
「だから、一回試してみない?」
「試す⋯⋯ですか?」
「そう、リスナーの人達に見てみたいゆかちゃんの姿を選んでもらうの」
「それで優希くんはそのゆかちゃんになりきる」
「ゆかちゃんにはイメージがあるのも分かる。でも、色んな人に聞いた上で皆の理想のゆかちゃんを演じるなら、きっと文句も出ないと思うの」
「だから、予防線を張った上で挑戦とか、どうかな?」
「凄く良いと思います!」
「じゃあ、次の配信でやってみよっか」
「はい!」
「あ、優希くんが大丈夫なら一緒に配信しながら⋯⋯とかどうかな?」
「一緒にですか?」
「うん。そうしたら目の前でラフを見せてあげることも出来るし、良いと思うの」
「目の前で描いてくれるんですか!?」
私の提案に目を輝かせる優希くん。この笑顔の為なら頑張れちゃうよ。
「もちろん!だから、どうかな?」
「ぜひお願いしたいです!」
「良かった。じゃあ次配信やれそうな日、どこかな?」
「それだったら今週の土日辺りはどうですか?
コラボの予定とかも無いですし、時間ならいっぱい取れますよ!」
「本当?じゃあ⋯⋯うちでコラボやろっか」
「へっ⋯⋯?薫さんのお家で、ですか?」
「そうしたら機材もあるしちょうど良いと思わない?」
「で、でもそれだと⋯⋯」
「もちろん、オフコラボだよ」
「⋯⋯そ、そうですよね」
「大丈夫」
「私がいっぱい可愛くしてあげるからね」
「それは大丈夫なんですかね!?」
何も考えずに書きたいものを書いていたら危うく温泉で優希くんに悪戯しちゃうゆるママが脳内に現れてしまいました。
危ない危ない。




