363:VLF
お待たせしました!
ちょっとデスマ状態で執筆する体力がなかった⋯⋯
「VLF、かぁ⋯⋯」
僕は家に帰った夜、メールを見て一人でそう呟いた。
「前までは、ピヨッターで切り抜きとか見る程度だったのに、まさか僕に出演依頼が来るなんて⋯⋯」
あれが偽物のメールじゃないと分かると、それまで湧いていなかった喜びや驚き、不安が一気に僕を襲ってくる。
「んー!!!!」
思わずベッドの上でジタバタとしてしまう。
「皆、喜んでくれるかな⋯⋯」
僕はメールに返信をすると、スマホを置いて天井を見上げながらそう呟いた。
それから3日ほど経った頃、メールの送り主である中村さんから返事が返ってきた。
内容に関しては、一度実際に会って話がしたいようで、心配ならお父さんを連れてきても良いとのこと。お父さんに大丈夫って言っちゃった手前、流石に一緒に行って欲しいって言うのは少し恥ずかしい。
それに、一人で頑張れるんだぞって所を見せたいって思ってる部分もあったり。
せっかくなので夏休み中に話をまとめたいという事で、中村さんに会いに行くことになった。
♢
「(ちょっと、緊張する⋯⋯)」
配信をやる時とは違う緊張が僕を襲い、少し身体がガチガチになっているような錯覚を覚える。
これがもっと小さい規模のイベントならまだ良かったんだろうけど、今回出るのはあのVLF。
出演者の殆どが登録者30万人を超える有名な個人勢VTuberだけが参加するイベントなのだから。
「(そんな大きなイベントに僕が招待されるなんて⋯⋯)」
中村さんに指定された場所へ向かうと、何やら大きな会社が見えてきた。
「あれ⋯⋯?この会社って⋯⋯」
見えてきたのは月野テックの本社。
「VLFって⋯⋯月野テックの関係だったの!?」
「(もしかして、お父さんが⋯⋯って言ってたけど恵ちゃんがゴリ押したとか、無いよね?大丈夫だよね?)」
本人が聞いたら、その手があったか!と言いそうではあるけれど、今回は流石にそれは無いと思いたい。
そして、月野テックのビルに入ると、受付に立っているお姉さんに声をかける。
「いらっしゃいませ。
本日は面会のご予約などはありますでしょうか」
「はい!中村さんと会う約束をしている姫村優希と言います!」
「姫村様ですね、少々お待ちください」
そう言うと、受付のお姉さんは少しパソコンを触るとすぐに確認が終わったようで、案内をしてくれた。
「あちらの奥に応接室がありますので、一番手前の部屋へお入り頂き、そちらにてお待ちください。すぐに中村が参ります」
「は、はい!ありがとうございます!」
やっぱり大企業ともなると、対応が違う。
僕はGlory Cuteみたいなフレンドリーな感じの方が好きなんだけど⋯⋯ってあそこもかなり大きい企業だった。
案内された応接室へ入ってみると、やけに広い。
「ほわぁ⋯⋯」
なんか凄いところに来ちゃった気分。ソファもふっかふかだ。
座りながら部屋をキョロキョロと見ていると、ノックの音が部屋に響いた。
「すいません、お待たせしました」
「い、いえっ!僕もちょっと早くに来てしまったので⋯⋯」
部屋に入って来たのはスーツでビッシリと決めたイケおじさんだった。この人がお父さんの飲み友達⋯⋯?あんまりイメージが湧かないかも。
そんなことを思っていると、やけに見られている事に気が付いた。
「あなたが優斗さんの息子さんですか。
私は中村元、元気の元と書いてはじめと呼びます。
よろしくお願いしますね」
「は、はい!
僕は白姫ゆかをやらせてもらってる姫村優希です!
こちらこそよろしくお願いします!」
「ちなみにですが」
「はい?」
「優斗さんからはゲンさんって呼ばれてます。
好きな方でお呼びください」
「お、お父さん⋯⋯」
「あ、ちなみにこの呼び方は私の公認ですのでお気になさらず」
「あっ、そうなんですか?」
「実は気に入っています」
「そ、そうなんですね⋯⋯」
「とまあ冗談はここまでにしておきまして⋯⋯
早速ではありますがVLFについての簡単な説明とスケジュールについてお話をしたいと思います」
「はいっ!」
そう言うと、中村さんは資料を取り出し、テーブルに並べて僕に見せてくれた。
「まず、VLFはご存知の通り個人勢限定のライブイベントとなっています。何故個人勢限定なのかについてですが⋯⋯こちらは公式HPに掲載されている通りです」
「個人勢でも企業勢のライブに劣らないクオリティのライブを行える環境を提供したい。でも企業ほどの集客力を持たない個人勢でも、複数人集めることでそれを実現するというものですね」
「個人勢でも企業に劣らないライブ⋯⋯ですか」
「はい。ノウハウが無い、機材がない個人勢でも、あの舞台に立って欲しい。多くの人の心を掴む、そんなライブをやって欲しい。でもライブには多額の資金が必要で、個人勢ではなかなか厳しいものがありますからね」
「それに、世の中にはこんなに魅力的なVTuberがいるんだと、多くの方に布教したい⋯⋯というのもありますが。これはあくまで私個人の意見ですので、企業の意図ではありません」
「さて、ここまで軽くお話ししましたが、次はスケジュールについてです」
「開催は4月の第一週目の土日の予定になっています。
基本的には両日の出演になるのですが、大丈夫でしょうか?」
「はい!」
「ありがとうございます。それと本番へ向けてのレッスンなどをこちらで手配させて頂きますが、ご都合の悪い日がありましたらお知らせください。
姫村さんは学生ですし、無理のない程度にやって頂ければ。放課後などに細かくレッスンを入れるといった形でも大丈夫です」
レッスンかぁ⋯⋯どこかで纏めてやるよりは、短い時間でも日数をかけた方が良いような気はする。コツコツ勉強もやってるし、受験に不安はあんまりないけど忙しくなりそう。
「そう、ですね⋯⋯」
「それなら短く日数を増やす方向でも大丈夫ですか?」
「はい。もちろんです」
「それでは詳しい契約などの方はこちらの書類をご覧ください。念のために優斗さんに見せて確認を取ることをお勧めします」
「はい!わざわざありがとうございます!」
「他にも細かくお伝えすることがありますので、公表の時期も含めて打ち合わせを行いましょう」
それから細かな擦り合わせを行い、公表は契約書を出した1週間後に決まった。
大体夏休みが終わってすぐくらいに発表の予定。
みんな、どんな反応してくれるのかな?
ちょっとだけ、楽しみかも。
コミケ参戦が決定しました!
抽選が外れてしまったのでXのフォロワーさんのスペースで委託頒布させて頂く予定です。
一応メロブさん辺りで委託販売も考えていますので、希望される方いるようでしたら是非反応を頂けると嬉しいです。(刷る数の参考にします)
ちなみに今回はハロウィンにゆるママとふわちゃんにドッキリを仕掛けるゆかちゃんのお話になる予定で、なんと表紙と本文にもイラストが⋯⋯?




