196:遥、迷う
お待たせしました!
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二月ももう終わりに入り、気が付けばわたしの卒業式の日が目前に迫って来ていた。
「⋯⋯卒業、かぁ」
わたしは事務所で一人そう呟いていた。
「あら、卒業するのが嫌なのかしら?」
「へっ? ま、マネージャー?」
「驚かせて悪かったわね。
それで、何か悩みでもあるのかしら?」
マネージャーさんはにっこりと微笑みながら、わたしにそう問いかけてきた。
「悩み⋯⋯と言えば悩みだと思います」
「アタシで良かったら聞くわよ?」
わたしはこの事を相談出来る人もいなかったから、マネージャーにその話をする事にした。
「ありがとう、ございます。
なんとなく察してるとは思うんですけど、優希くんの事なんです」
「ふふっ、恋する乙女の悩みって言うやつかしら」
「⋯⋯かもしれません」
「続けて頂戴」
「わたし、前まで優希くんと一緒にいる時間が楽しくて、あんまり会えなくなってから、どうしても寂しく感じるんです。
今思うと、そんなに大事な話をしてたとか悩みを聞いてもらったとか、そんな事は無かったんですよ?」
「でも、いなくなってからはそんな時間がとてもわたしにとって大切でかけがえの無いものだったんだって気付いたんです」
「えぇ、なんとなく分かるわ」
「それでこれが好きって言う気持ちなのかな、って思ったんです。
でも、わたしが優希くんと会う事が出来る時間ももうすぐ終わりで。
わたしが進学してしまったら優希くんにも会えなくなっちゃいます」
「だから優希ちゃんに告白しようか迷っていた、ってところかしら?」
「⋯⋯そう、なんです」
「今の遥ちゃんの悩みは、告白して関係が壊れるんじゃないかってこと。
それと、ウチの方への心配ってところかしら?」
マネージャーさんが言った一言はわたしの考えていた事そのままだった。
「凄いですね、その通りです」
「とりあえずアタシから言える事は、ウチの事務所に関しては気にしなくてもいいわ。
ただし、あくまで健全なお付き合いならって前提はあるけれど⋯⋯遥ちゃんならわかるわよね?」
「はい、それは大丈夫です」
「だったらアタシからこれ以上言うことはないわ。
あっ、一つだけあったわね」
「なんですか?」
「後悔しない選択をしなさい」
「後悔しない、選択⋯⋯」
「遥ちゃんがこの後でああしておけば良かったなんて後悔するくらいなら当たって砕けるべきよ」
「⋯⋯分かりました」
そんな話をマネージャーとしたわたしはその後にお仕事を頑張った。
だけど、家に帰ってからもマネージャーの言葉が頭から離れなかった。
そして、とうとうその日が訪れてしまった。
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わたしは朝からずっと緊張していた。
卒業式にではなく、優希くんと会う事に。
卒業式自体は何の問題も無く進んでいき、わたし達卒業生は後輩達に祝われながら、この学校を去って行った。
でも、学校を出て行った後、それぞれの部活では卒業生と一緒にお祝いをする部活が多くある。
勿論中には親と一緒に祝う為に帰る人もいるけれど、わたしは——
「先輩、お待たせしました!
それと卒業おめでとうございます!」
この最後の高校生としての一日を優希くんと過ごす事にした。
「優希くん、ありがとう。
それとわたしも今来たとこだから大丈夫だよ!」
一度帰宅し、着替えて来たわたしは駅前で優希くんと合流した。
「それで先輩、どこに向かうんですか?」
「えっと、実はわたしカラオケにあまり行ったことが無くて、行ってみたかったんだ!
打ち上げって言ったらカラオケって良く言うし!」
「カラオケ良いですね! 僕も大好きです!」
「だ!?⋯⋯そ、そういえば歌の配信とかやってたもんね、歌うのやっぱり好きなんだね?」
「歌うとなんかスッキリするんですよね!」
一瞬大好きと言う言葉に反応しかけてしまったわたしは、取り繕いながら話したけれど、その時に察した。
大好きなんて言葉に反応しちゃうんだもん、そう言う事なんだよね。
きっと。
「(あぁ、やっぱりわたしは優希くんの事が⋯⋯)」
確信したわたしではあったけれど、今はそんなタイミングじゃない。
今はただ、純粋にカラオケを楽しむんだ。
わたしと優希くんは二人で駅前のカラオケ店に入るとカラオケを楽しんだ。
それはもう、目一杯楽しんだ。
ただ、やっぱり優希くんの声って可愛いから、どうしても女の子っぽさを感じちゃう。
それを言ったら優希くん拗ねちゃうかもしれないけど⋯⋯
でも拗ねた優希くんも可愛いんだろうなぁ⋯⋯
なんてそんな事を考えながら歌っていると時間はあっと言う間に過ぎていく。
その間にわたしはずっと考えていた。
今日の帰りに、優希くんに告白するかどうかを。
もし優希くんと付き合う事が出来たなら今日みたいに一緒に遊びに行ったり、デートとかも出来るようになるかもしれない。
でも、もし、断られたら?
次に顔を合わせる時、どんな顔で優希くんに会えば良いのか分からない。
だからこそ、わたしは迷っている。
「先輩? せんぱーい?」
「あっ、ごめんね。
どうかしたかな?」
「えっと、先輩なんだかボーッとしてたみたいだったので大丈夫かなって」
いけない、どうやら考え込んじゃってたんだ、わたし。
そんなわたしの様子を見て不安に思ったのか優希くんが声をかけてくれたみたいだった。
「うん、大丈夫。
ちょっと考え事してて⋯⋯もう大丈夫だよ!」
「なら良かったです!」
笑顔でそう言う優希くんはとても可愛くて、その笑顔を見るだけで愛おしく感じる。
そして残り時間も目一杯楽しんだわたし達はカラオケ屋を出た。
その帰り道、わたしはずっとそわそわしていた。
もうすぐ駅に着いてしまう。
ここで分かれたら、もうチャンスはないかもしれない。
わたしは今この瞬間に、決断を迫られていた。
この話を書きながら先輩に感情移入しちゃったせいで死ぬほど遅筆になってました。
先輩ルートでは幸せにしてあげるからね.......




