170:コラボ開始前に
お待たせしました!
夕方投稿予定だったんですが、寝落ちしてしまいました...
二月十四日、それは多くの女の子が想いを寄せる男の子にチョコレートを贈る日。
時代は移り変わり、友チョコなどといった形でチョコを渡す光景が増えていってはいるけれど、やはり多くの男子は心のどこかで期待していた。
自分もチョコを貰えるんじゃないかと......。
だけどそんな中、僕は——
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「お、おはようございます!」
——僕は、撮影をするスタジオへ足を運んでいた。
「おはようございます。
あなたが白姫ゆかさんで合ってましたか?」
「はい! 合ってます!」
「合っていたようで良かったです。
私が今回のコラボの責任者を務めさせて頂く山口と申します、よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします!
ええと、僕も本名を言った方が良いんですかね......?」
「いえいえ、お気になさらず。
Vtuberさんと言うのは余りリアルの事は表に出さないとお聞きしていますので問題ありませんよ」
「そう言って貰えると助かります!」
僕はメッセージでのやり取りしかした事の無かった山口さんと挨拶を交わし、スタジオの中に入るとそこには既に華さんとエミリーさんらしき人がいた。
「あっ、ゆk、こほんっ、ゆかちゃん......おはよう!」
「おぉー、あなたがゆかちゃん?」
華さんはおはよう、とエミリーさんらしき人は僕が白姫ゆかであるか確認をする為に声をかけてきた。
と言うかエミリーさん日本語上達しすぎじゃない!?
「え、えっとふわちゃん、エミリーさんおはようございます?」
会う時は本名で呼ぶ事が多かったのと、配信の時はなりきっているのもあって変な喋り方になってしまった。
「いつもみたいな口調で良いんだよ?」
「い、一応、こっちが素なんですけどね......?」
「はい、ふわりお姉ちゃんおはよう、だよ?」
「ふ、ふわりお姉ちゃん、おはよう......」
「あぁーやっぱゆかちゃんにお姉ちゃん呼びされるの最高......」
「ふわりさん! ふわりさんだけずるです!」
華さんには配信の時みたいな口調をお願いされ、エミリーさんはそんな僕たちの会話を聞いてずるいと言っているんだけど、この状況は一体どうすればいいの!?
「それよりもさっき、ゆかちゃんが来たら自己紹介するって言ってませんでした?」
「おーう、そう言えば自己しょーかい忘れてました、私が殲滅のエミリーことエミリーでーす!」
「え、えっと、僕は白姫ゆかこと、姫村優希です......」
「んー!やっとゆかちゃんに会えましたー!
かんむりょーです!」
そう言ってエミリーさんは突然、僕にハグをしてきた。
「むぎゅ!?」
「ちょっ!? エミリーさん!?」
「あー、本当にちっちゃいでーす......てーてーです......」
そう言いながらエミリーさんは僕の頭を撫でて来る......なんで皆こうなるの!?
「ず、ずるいですよ!わ、私だって!」
「(ちょ、ちょっと二人とも!?)」
そう言って前と後ろから抱きしめられている僕、すると突然スタジオに誰かが入ってくる音がした。
「おーいエミリー、今日の段取りの確認......なんだこの状況」
スタジオに入ってきたのは閃光のシュバルツこと僕のお父さんでもある姫村優斗。
「シュバルツさん!ゆかちゃんめっちゃかわいーです!」
「いや、二人同時に抱きつかれたら、流石に......と言うか優希も嫌なら嫌って言ったほうが良いぞ?」
「んー!!」
「あぁ、声出せないのか......とりあえず離してやってくれないか......」
「仕方ないですね......ちぇっ」
「おーぅ、そーりーです......」
「ぷはぁ......お父さんありがとう......」
「うん、何というか......大変そうだな......」
お父さんは遠い目で僕を見ながら同情するようにそう言った。
「他人事だと思って......」
「いやー、優希くんを見るとついつい......」
「私もこーふんしてました......」
「良かったな、美人さんに好かれて」
「お父さん?」
僕はじとーっとお父さんを見つめる。
「......何でもない」
「......うん」
そう言うと、エミリーさんの方を向きお父さんはエミリーさんと喋り始めた。
「とりあえずエミリー、撮影時の注意点は覚えてるよな?」
「えーと、手を写す時は手袋着けてる状態、出来れば写さないです?」
「そうそう、それで合ってる。
それ以外は自由にしてもらって構わないから、やりたいようにやってみろ」
「分かりましたです!」
エミリーさんがお父さんと今日の内容や注意点を再確認して、ミスの無い様にしている。
「ねぇ、優希くん。
改めて、今日はよろしくね」
「は、はいっ!」
緊張で思わず声が上擦ってしまった僕を見て華さんは微笑んだ。
「ふふっ、緊張してるのかな?」
「り、リアルタイムでこういうのやるの初めてなので......」
「優希くんはいつも通りやってればいいと思うよ? 私たちと違って姿を見せちゃダメなわけでもないからね」
「確かに、そうですね......」
「それじゃもうすぐ始まるみたいだし、自分の使う材料のチェックとか済ませちゃおうか」
「はい!」
そして華さんの言う通りにチェックを済ませて問題がない事を確認した僕達は配信のスタートを待っていた。
「ごめんなさい、お待たせしましたー」
「すいません、少し遅くなってしまいました」
そこに現れたのは僕も見ているYotuberのタツヤさんだった。
それと同時にもう一人の声が聞こえる。
なんだか聞き覚えがある声な気がするんだけど......まさかね?
「ええと、今回審査員として呼ばれたYotuberのタツヤです、よろしくお願いします」
「そのレシピの担当をしている姫村希美です、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げながら挨拶をしているのはタツヤさんと、まさかのお母さんだった。
「えええええええええええええ!?」
「は? え? 母さん? なんでここに?」
「えっ......姫村? つまり......」
「シュバルツさん、姫村......この人も姫村......」
華さんとエミリーさんがぽん、と手のひらの上を叩いて叫んだ。
「優希くんのお母さん!?」
「ゆかちゃんママ!?」
「うふふ♪」
お母さんは悪戯が成功した子供のような顔をして笑っていた。
希美「優斗さん、母さんだなんて......。
希美お姉ちゃんって言ってくれても良いんですよ?」
優斗「流石にこの歳でそれは勘弁してくれ」