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7.照らし合わせれば見えてくる

山の拠点を発ち廃墟との境になる大門を抜けた男は、思い出したように立ち止まり振り返って辺りを観察する。建物の脇に扉を見つけ開けようとするがそれは長年放置したせいか何を試しても中々開かず、すぐに痺れを切らし勢いよく扉を蹴破って中に入った。男が思い出した記憶によれば守衛の部屋には書籍が多くあった記憶がある。門が出来て以来何度も入ろうとしては失敗し毎度ここで大目玉を食らっていたので配置には自信があるつもりだ。鼻をつまみたくなるほど腐ったお菓子を外に放り出しつつ辺りを探ると物が多く置かれた作業机の引き戸に一冊の小説を見つける。挿絵はつぶれ、文字も多少滲んではいるが、それが数巻構成の内の一つであることは見て取れた。

それを手に取った男はふと机の上を見る。下敷きに描かれている模様はどうやら島の地図らしい。激しい風化によってもはやボロボロではあったが、書かれている文字や配置からかろうじて判別できた。ほぼ知った場所を残して殆どが破れたりシミになったりしていたが、かろうじて港町があることが見て取れた。この町とは対立していたのだろうか、二つの街の間に壁状の要塞みたいな建物(壁砦と呼ぶらしい)があることも書かれている。机の上に立てかけられたファイルを読むことが出来れば詳しいことが分かったかもしれない。しかし、手に取った瞬間崩れ落ち、読める状態ではなかった。ここで手に入る情報はこんなものだろう。男は部屋を後に街へ入って行った。

男は過去の自宅に戻ると持ち帰ってきた小説をしまい、持ち出した食料を整理する。意外にも携帯調理器具や調味料の一部が生きており、多少食にこだわる物的猶予がこちらの家にはあった。実を言うと、男は記憶が戻った時からひと時の楽しみとして料理に挑戦している。正直、海の魚や貝を獲って持ってきたのもこの楽しみが影響しているのだろう。支度と食事を終えると、街の散策に出た。

(考えればあの時は違和感ばかり気にしてその記憶から思い当たる施設しか詳しく調べたことがなかったのかもしれない。もう少し見回りの感覚で歩いた方が良いのだろうか)

そうして男がまずたどり着いたのはひび割れたコンクリートでできた黒い小さな建物だった。硝子の割れた戸を潜って中に入るとまずは立てかけられていた重い鉄の椅子を下ろして黒い机の奥側に座り、一息つきながら辺りを見回してみる。机の上には本立てが置かれていたが、書類の類は見当たらず丸い金具が机の上に散らばっているばかりだった。乱暴に扱われたからなのか、そもそも机に明らかな凹凸が目立ち、引き出しの多くは空きそうになかった。その机の内側を何の気なしに探ったところ、手のひらサイズの機械を偶然見つけた。取り出して調べてみる。どうやら音声をやり取りする機械のようだが、どう使ったものかが全く分からずに持ち帰って調べることとした。さて、次はどこに寄ろうか。

next title>8.ある一本の道の先に(9/25)

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