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3.照らされた先

記憶の一部を取り戻した男は急いで町へ戻った。今となっては荒れ果て、人も居なくなってはいるが、確かにそこは男の記憶にあった街である。追いかけっこに使った裏道、通い詰めた馴染みのお店、それが鮮明に思い出されるのである。決してすべてを思い出したわけではないが、男にとって大きな前進だった。そして思い出したことがきっかけとなったのだろう、その街で眠りについた男はある一つの夢を見た。


「―…きなさい、ウィル!いつまで寝ているの?あなたで最後よ!」

ふと目が覚めると中年の女性が不機嫌そうな顔をしていた。母の催促に渋々起き上がるとそばにあった服に着替え、リビングに出る。手早く食事を済ませると玄関へと向かう。

「珍しいわね、本でも買いに行くの?」「ちがうよ、建物を見に行くの」

母親の小言を背に外へ出ると、街の中央へと足を運んだ。まだ活気のある街は記憶の少年時代そのままであり、しかしその時代にいるからか懐かしさは微塵もなかった。確かめたいことがある。少年は研究所の門を睨みつけた。

施設へは父の名を出せば簡単に入ることが出来た。向かったのは例の日記が置いてあった部屋である。目的の部屋に着き、扉を開けようとしたところで中からの会話が耳に留まった。

「…が危ないというのに…」「確かに。今この島に必要なのは…のか?」「先日も…」

断片的にしか聞こえてこないが、この時すでに何かしらのピンチは迎えていたらしい

「ところで…」「地下の…番研究室?」「そうだ、あそこには‥‥」

「こんなところで何してんだ?」後ろからの声に振り向くと中年の男がむすっとした表情で立っていた。「お前みたいな坊主に言っても分からんだろうがな、やみくもに時間が過ぎたって何の解決にもなりゃしねぇ。でも、今更始めたって遅いんだよ…だからといってネメシス計画が上手くいくともなぁ」「おじさん、ネメシス計画って何?」「ケッ、妙なところを気にするガキだ。分かりやすく言うと救世主を作っちまおうって話だな。まぁ、後一つ足りないものがあるなら…フッそうだな、おじさんの部屋に来たら詳しく教えてあげるよ―」


そう言ってニヤリと笑った中年に従いその地下とやらに歩き始めたところまでで目が覚めた。惜しいことに悪寒に震える反動で目が覚めてしまったのだ。夢の続きはもはや自分の目で確かめるしかあるまい。

時は現代、朽ち果てた研究所の廊下を記憶に頼り進むと行き止まりに当たる。しゃがみ、床を調べれば隠し扉がそこにあった。中から声無き呼び声を聞いた気がした。同時に身体が激しくざわつくのを感じた。果たして、今の疑問の答えはその奥にあった。


なんと、液体に浸かって眠っているかつての自分がそこに居たのだ。


すぐそばの鏡を見れば少年時代の自分からは程遠い顔がそこにあった。そしてその顔は少年時代に見た記憶がある。昔に山でかくれんぼをしていたとき、丁度最初の拠点、カプセルの中に安置されていた怖い人形そのものである。いや、そこでの記憶にもっと重要なものがあるはずだ。直ぐ側の机に小袋を見つけた。中には一つの金属塊があった。この形状は確か、そうだ。あの拠点に当てはまる穴があったはず。次の手がかりは!

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