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とにかく俺は帰りたい!  作者: やま
第1章
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4.地球じゃない、かも。

 2日目。

 雨が激しく降っている。スコールの様な土砂降りだ。あたりは少し明るくなってきた。結局夜明けまで起きていたことになるが眠気のひとつもこない。寝れるわけがない。

 3つの月、生き物のいない森、みたことのない植物。生き物と植物は俺の勘違いの可能性があるが、3つの月ばかりはなんともならない。言い訳のしようがないほど、ここは地球じゃない。

 飛行機事故の衝撃で100万光年先の地球によく似た惑星に偶然ワープしたのか。はたまた、沙奈がオススメしてくれたライトノベルというやつで流行りの異世界なのか…。でも異世界召喚ならだいぶ雑だ。神様にあった記憶はないし、何かチートを授かったわけでもない。まず異世界召喚ならわかりやすくファンタジーな人里に呼んでくれよ。いや〜ここは一目で異世界とわかりますねー。みたいな村や町にさ。いや、案外俺の頭がイカれただけかもしれない…。

 ふと時計を見ると5時30分。昨日、太陽の位置から自分で予想して合わせた時間だから信憑性はない。特に月が3つもでる星の太陽?の動きなんて信用ならないし。今が地球の5時30分に相当するかなんて確かめようもない。何もわからない。自分の置かれた状況がただの「遭難」でもハードな事なのに、わけのわからない事態に直面して昨夜から気分は下がりっぱなしだ。小説のように神様の説明があって、異世界とはいえ人里に召喚されたならどれほど良かっただったろうか。

 ともかく、1つわかっていることがある。ここがかなり高い確率で地球じゃない以上、救助は来ない。


 ヘリは漂流者を探しに来ない。

 船は遭難者を探しに来ない。

 …救助は来ない。


 この言葉はすごく重い。胸が不安で締め付けられる。ネガティブな思考には筋トレが一番効くのは世間でも一般常識だが、水や食料が満足にない中の筋トレは自殺行為だ。ポジティブさを取り戻すにはまずは水と食糧、それがあって初めて「筋トレ」が意味をなすのだ。

 水はこの雨のおかげで確保できた。ペットボトルにも衣類圧縮袋にも満タンだ。ならば今一度食糧を確認しよう。救助が見込めない以上、手持ちの食料ももっと切り詰めなければ。手元に食品を並べて数を確認していく。スナック菓子が残り3袋。12個入り1箱の饅頭が3箱。即席味噌汁が………

 涙が出てきた。沙奈の顔が浮かぶ。もう会えないかも知れない。春には中学生になるのだ。制服姿が見たかった。俺が行方不明となれば、沙奈はろくに顔も見たこどかない親戚に預けられることになるだろうか。両親が死んでも葬式に来なかった親戚連中に預けられるぐらいなら、どこか施設にでも保護された方が幸せかもしれない…沙奈は可愛いから心配だ……今どう…しているだ……ろう…



 気がつくと雨は上がっていた。時計は13時16分。ネガティブな考え中に寝落ちしたらしい。日が照って雨に濡れた森を乾かすせいか湿度が高く蒸している。森は雨露が太陽の陽を浴びてきらきらと光り、木の葉の切れ目から見える空は青い一色で雲ひとつない。湿気っぽい風が吹いた。


「飯の種、探すか…」


 なんとなくそんな気分になった。

 雨上がりの美しい大自然が俺を応援してくれている気がして、気持ちが復活してきた。少しでも眠れたこともよかったのだろう。立ち上がり、肩を大きく回し、首もぐるぐるとストレッチ。蒸し暑いので上半身は裸になる。ラジオ体操を思い出しながら体をほぐす。海でひとっ風呂浴びるかなと考えると、なんだか無性にいい思い付きだと感じて早足で海に向かった。


 森と浜辺の境目に到着すると俺は歩くペースをさらに上げた。波打ち際に着くころには全力疾走になっていた。美しいビーチの光景にテンションは振り切ってしまい、浅瀬の波に足を取られるながらも走り続けた。そして倒れこむように海へダイブ!俺の巨漢で倒れ込んだのでなかりの水しぶきが上がった筈だっ。水温がぬるくてちょうどいいぜ!ヒャッハー‼︎‼︎

 これは「遭難者ハイ」というヤツだろうか!(初耳)


 そういえば海水じゃ体は綺麗にならないよなぁ〜と考えながら背泳ぎ。太陽?の日差しが眩しくて、海の波にキラキラ反射している。こうしてのんびり浮いていると色々とどうでもよくなってきてしまうから海って不思議。ちなみに海水の透明度は高く、水中でも水面からでも魚がよく見える。

 

えっ⁉︎魚がいる⁉︎


 森には全く生き物の気配がないのに、海には様々な種類の魚がゆったりと泳いでいるとは是如何に…。なかなかデカそうなのもおり食い出が期待できる、とすぐに思考が飯方向に向かった。しかし肝心の釣り道具はない。ブラのワイヤーで釣り糸が作れそうだが、竿は枯枝じゃすぐ折れるだろうし、しなりそうで丈夫な木とか知らないしなぁ〜。まあ、とりあえず手づかみから始めてみるか。だめなら銛でも作って「取ったどー」すればいいかな。そんな甘い考えが上手くいくはずない…と思いながらも近くを泳ぐ魚に手を伸ばしてみると


 掴めた。

 掴めてしまった。暴れすらしないで掴まれている。


 こいつら全く危機感がない。なんで?簡単に捕まえられたぞ。他の魚はどうだ?手を近づけても逃げないからキャッチ…。進路を予測して待ち構えるようにしても、ろくに方向転換しないからキャッチ…。むしろ手のひらに寄ってくるやつまでいてキャッチ。

 海は魚が掴み放題だった。警戒心のカケラもない…。



 魚、美味い。すんげー美味い!

 取った魚は、脱いだGパンの足を縛ってそこに詰めて運んだ。7匹も漁れた。レザーマンで軽く捌いて、適当な枝に刺して遠火でじっくりと焼いた。いい香りがして腹が鳴る。早くその魚を入れろと内臓が騒ぐ騒ぐ。唾液もだらだら。小さい魚から順に5匹ほど食べた。貪るようにがっついて食べた。青っぽい魚はサバの味がして美味かった。この青いのを重点的に捕まえよう。なんて考えながらもう1匹食べ始めると背中に違和感。胡座をかいて座る腰のあたりに何かがこすられた!?飛び上がって振り向くと、真っ黒な肉食獣が爛々と光る双眸でこちらを睨みつけている。鋭い牙が光る口からは涎をこぼしている。

 

そこには腹減りのご様子の黒ねこ(小猫)がいた。


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