23.二世奴隷たち。
ずいぶん時間がかかりました。ごめんなさい。
あと、時間指定の投稿がうまく行かなかったから、今直接した。
風のないよく晴れた石の月の12日。
私達の前に立つこの1人の男を紹介された。
どうしてこいつがここに連れてこられたのか、わたしにはわからない。普段こんなところには姿を見せない領の偉い人に連れてこられたこの男。素っ裸の体は汚れていて真っ黒だ。伸び放題の髪やヒゲなんて汚く縮れて獣の毛みたい。それにでかい。背がバカみたいに高い。あとなんか臭そう。とにかく汚い。
…すごくムカつく。
どうしてこいつが殺されもしないでここに連れてこられたのかが本当にわからない。
あれだけの騒ぎを起こした「魔人もどき」なんでしょ?こいつは。本当ならその場で殺すことが当然だと思うし、捕まえたのなら犯罪奴隷にして死ぬまで使い潰せば良いじゃないか。どうせこいつはどっかの脱走奴隷なんだろうし、罪を償わせるために死ぬまで働かせればいい。
街から沢山の警邏が武装して駆けつける程の騒ぎを起こして、ここ数日間は私達も街の人たちも、不安に駆られ落ち着かない日々を過ごしてたぐらいだ。
だから、そうするべきだ。使い潰して殺すべきだ。そうじゃないなら刑場に連れてって殺すべきだ。問題を起こしたなら、そうするべきだ。
いや…
そうしろよ。殺せよ。
さっさと殺せよ。
私の妹は、ちょっと暴れたぐらいで――
◯
その夜の怖さを、ボクとガルドちゃんは一生忘れないと思います。
ボクはいつものように寝ていました。何時頃でしょうか?向こうの家の方から騒がしい声が聞こえて起きてしまいました。暗い室内を見回すと、周りでは誰も起きていません。ボクは耳が長くて良く聴こえるから、みんなより早く起きてしまったようでした。ちなみに、ガルドちゃんは隣で丸まって寝てました。
寝直そうかと考えていましたが、向こうの、男の人の家はどんどん騒がしくなっていきました。
「様子が変だね…」
後ろから突然ターラさんの声が聞こえました。短く切りそろえた髪に寝癖をつけたターラさんは、ボクの頭を撫でながら聞いてきました。
「ブルーガ、向こうでなんて言っているかわかるかしら?」
ボクは頷き、耳をよく澄まして、男の人の声を拾うようにしました。数人の話し声がはっきり聞こえます。みんなちょっと焦っている様子でした。僕は聞き取れた単語を小声で口にしていきます。
「光…焚き火?、大男…槍、警らと見張り…、あと、マジン?」
「っ⁉︎魔人だってっ?」
ターラさんのが「マジン」に反応して小さく鋭い声を出しました。普段から鋭い目がますます険しさをまして怖かったです。
「は、はい…街の人の誰かの声で『魔人』と……」
自分で言って体が震え出しました。お話に出てくるあの魔人が現れたのでしょうか?大きな黒い体で、剣も魔術も跳ね返して、悪い子は頭からバリバリ食べられちゃうというあの…。
お母さん達やお姉ちゃん達も、外の騒がしさで起きちゃって、ボクの家も中も騒がしくなってきました。ターラさんは立ち上がり、家族のみんなをぐるりと見回し指示をしました。
「なんか問題があったみたい。まだ寝ているヤツも一応起こしてすぐに動けるようにしておいて。あとあの部屋にも警報出して。わたし話聞いてくるわ」
「何があったの?また魔獣騒ぎ?」
「それがわかんないから聞きに行くのっ。何かあったらまずいから、大ばあちゃんに何人か付いて、すぐに街へ向かって」
「外の声、警邏や見張りの人達も来てるんでしょ?戦える人も向こうにはいるんだからそこまでしなくても…」
「ターラ〜、タカタナ様に会いたいだけじゃないの〜」
うるっさいわ!言うこと聞け!ぶん殴るわよ!!と言い捨てながらターラさんはのしのし出て行きました。本当に怖いです。
「……ぅ、なん、ブルちゃ〜ん……」
玄関へ向かうターラさんを目で追っていると、ガルドちゃんが起きた声がしました。逆にまだ寝てたんだと感心しました。ボクはガルドちゃんの頭のかわいいお耳に顔を近づけて、小さな声でヒソヒソと話しました。
「ガルドちゃん、起きて。なんだか向こうの家が騒がしくて魔人とか言っていたの」
「魔人っ!?」
一気に覚醒したガルドちゃんの声は、騒がしい室内でも良く響きました。一瞬で部屋中の視線が僕たちに集まりあたりはしんと静まりました。誰かの唾を飲む音が聞こえて来る気がします。みんなのまんまるの目が僕たちをじっと見ています。
「魔人、見に行かなきゃっ!!」
静かになった室内で、ガルドちゃんが元気に飛び上がりながら元気に放った一言は、お空と地面をひっくり返したような騒ぎを引き起こしました。
◯
警らさんと見張りさんのおじさんたちを『遠見』で見失わないように尾けるなんてオレには朝飯前さ。なぜなら本当に朝ごはんはまだだから。
街の方へ逃げろと言われたけど、森には着いてくるなと言われたけど、あの「魔人」が来たと聞いて、大人しくなんてしてられないっ!そう考えた家族は多く、60人ぐらいかな?で畑の脇を抜けて森に向かうおじさんたちの後をつけた。オレの『遠視』とブルちゃんの『静謐』を使って、先を行くおじさんたちと一定の距離を取りながら移動する。これなら例え100人ぐらいいてもバレないはずだ。
「ガルドちゃん……本当にこのまま行くの?」
ブルちゃんが一度決めたことに文句を言ってきた。全く女々しいブルちゃんだ。
「勝手に決めたのはガルドちゃんでしょ〜…」
ブルちゃんは押しに弱い。押せば大体話に乗ってくる。渋々だけど。でも「やる!」と決めたら、たとえどんなイタズラでもやり遂げちゃう。オレはそんなブルちゃんが好きだ。
好きだというところだけブルちゃんには伝えよう。
「もう〜……しょうがないなぁ〜」
ブルちゃんは押しに弱いだけじゃなく、チョロい。頰に手を当て、金の髪の毛がぶんぶん揺れるほどにてれてれしてる。
目の前に広がる森は夜で真っ暗だ。草木ボーボーの森の中では背の低いオレの死角が多いから『遠視』は届きにくい。見失っちゃうかもしれない。かといって街のおじさんたちがよく見えるところまで近寄れば、枯れ枝や草を踏む60人の足音でバレてしまう。『静謐』の性能はそんな程度だ。魔人は焚き火をしているそうだけど、その火もここからじゃ見えない。このままじゃ本当に見失っちゃう。どうしようか…
「向こうの方角から声を潜めた話し声が聞こえる」
タタセ兄さんが森の奥を指差してひそひそ声で教えてくれた。エルフの血が濃いから森に関する事ならなんでもお見通し?お聞き通し?なんだそうな。
さあ行こう!魔人のところへ!!
◯
やっぱりくるんじゃなかったっ!魔人は本物だった!!
魔人はあらゆる生き物を憎み、殺すこと以外考えてないと聞いたことがあります。あの巨大な体は人を殺すためのものとしか思えません。
その脚は地面を砕き大地を腐らせ、その腕は森の木を簡単に毟り取り、岩をも砕くといいます。僕の胴体よりも太いあの手足で今に暴れ出すんだと思うと体が震えました。
お父さん達やお母さん達に聞かされた話で、悪い子は骨も残さずバリバリと食べられちゃうとも聞きました。大人の女性はオカサレ?殺され、大人の男は殺され、バラバラにされ地面に撒かれるそうです…。
横になっていてもわかる僕たちより大きい体は、黒いせいか、焚き火の炎に照らされてもよく見えないです。でもなぜかな?一瞬、輪郭がうっすら虹色で縁取られて見えたような…。不思議がっていると警らの人たちが周りを囲み、脚で蹴って起そうとしはじめました。
は?
…や、やめてっ!なんで起こすの⁉︎
月明かりも届かない、真っ暗な森の中、みんなも隠れながら息を飲んでその様子を見ていました。魔人が起きてしまう、その恐怖がまるで風のように駆け抜けて行って、あっという間に胸を締め付けるような死の予感と後悔に包まれました。でも、逃げたい気持ちに反して足は動きませんでした。きっとみんなも同じだったと思います。止めることも逃げることもできませんでした。ガルドちゃんも可愛いお耳をペシャンとさせて、青い顔をして震える肩を抱いていました。それをみて僕もますます怖くなってしまって…。好奇心の塊みたいなガルドちゃんも、よりによって本物の魔人を見るなんて思ってなかったのでしょう。
しばらくすると、魔人が起きました。起きてしまいました。ゆっくりと体を起こし、足をたたんで座りました。とても大きい体です。あの黒い、太い腕でボクを掴んで食べるんだ…。逃げなきゃいけないのに、ガルドちゃんと逃げたいのに、足が震えてうまく踏み出せません。
「――、――――――――っ」
なんの前触れもなく魔人の声が聞こえました。聞いてしまったのですっ!耳を塞ぐ事もできずに‼︎
魔人の声は生き物を腐らせると言います。
突然のことに家族はみんな驚き、悲鳴を上げて逃げ出した家族もいました。さっきまで息づかいですら聞こえなかった森が、叫び声や草木をかき分け逃げ出す音であふれました。
ボクはこんなにたくさんの悲鳴を聞いたことがありませんでした。みんなが腐っちゃうと思って怖かったです。逃げたかったけど、恐怖で足から力が抜けて座り込んでしまいました。一度恐怖に負けてしまうと体が固まってしまい、這うことも出来ず、その場を動くことができませんでした。ボク、腐っちゃうんだ…。そう思って涙が自然に出てきました。その時…
「お前はどこから来た何者だ?」
タカタナ様の声が聞こえました。
タカタナ様は震えて顔から汗をポタポタ垂らしていましたが、勇敢にも槍を向けて魔人に話しかけました。ボクはお伽話の勇者様を見たような気持ちになりました。手に持っているのは魔獣にも対応できる「魔槍」という種類の槍でした。あれで魔人と戦うつもりなのでしょう。
魔人は槍を突きつけられても全く動じませんでした。槍の先っぽとタカタナ様の顔を見ただけ。周りには同じように槍を構えている人が何人もいるのに、そちらには見向きもしませんでした。きっと魔人にはこのぐらいの事はピンチでもなんでもないのでしょう。
緊張のやりとりに目が離せないでいると、また不意に聞こえた魔人の声で僕は目の前が真っ暗になりました。2度も聞いてしまった…もう腐って死んじゃうんだ…
ガルドちゃんの声に気が付き、ボクは慌てて自分の体を確かめました。大丈夫!腐ってない‼︎助かった事が嬉しくて泣きながらガルドちゃんを見ると、ガルドちゃんはボクを見てませんでした。ガルドちゃんの視線を辿ると、縄に縛られた魔人が警らさん達に連れていかれるところでした。警らさんと見張りさんは皆さん無事で、辺りに魔人が暴れたような跡もありません。どういうことか不思議に思っていると、魔人は縄で引かれていきました。大人しく連れて行かれる魔人に、その場に残っていた家族達はついて行きました。ボクは体から緊張が抜けていくのを感じました。
その後、ボクとガルドちゃんは泣きながら抱き合い、お互いの無事を確かめ合いました。
でも、死の恐怖が形に残って、ずっと背中にくっついているようでした。
◯
あいつは魔人じゃない。わたしがそう判断した材料がある。
あの夜、男の家の前で警邏と見張り当番達が血相変えて慌てていたのは本当だ。なんせあの魔人だ、決死の覚悟で対応に当たっていたのだろう。しかし、相談を受けたアウガやタナマヤが「魔人」と聞いて鼻で笑うように呆れた顔をしたのだ。むしろ魔人の特徴と一致すると話せば話すほど、あの2人は体の力を抜いたように見えた。
私達と違って元戦争奴隷のあの2人は世の中に詳しい。外の世界を知っている。なぜ魔人じゃないとわかったのか、学のないただの奴隷のわたしにはわからないが、生まれた時からの付き合いのこのエロじじい達の知識は確かだと経験で知っていた。伊達に長生きしてない。無駄に長生きしているとは思うが。
騒動がひと段落した朝方、じじい2人は偽魔人騒動の説明のためと言いながら、ここぞとばかりに私たちの家に入って来た。鼻の下を伸ばしながらいやらしい目で、まるで舐め回すように女の家の隅々まで見ていた。その割に説明はちゃんとしていたので、みんなはそれを聞いて少し落ち着いたようだった。
「なんで魔人じゃないってわかったの?」
心なしかツヤツヤしたじじいどもが部屋を出たタイミングで聞いてみた。
「なんじゃターラ、そんな大きな乳を揺らして」
「どこ見てんだよ!話聞け!」
ふざけたじじいの戯言に苛立つ。冗談はいいから聞かれたことにさっさと答えろっ!
「そりゃあ、魔人はもういないからさ」
「昔々に滅亡しとる。国はそれを秘密にしておるがな」
2人はわたしの胸を見ながら、なんてことないように言った。国が隠している、というようなことを。
「それが本当だとして、なんで2人はそれを知っているの?あと…なんでわたしには教えて、さっきみんなには言わなかったのよ?」
じじい2人は顔を見合わせから、アウガが言った。
「わしらの先祖が殲滅戦に参加したからじゃ。そこで魔人は絶滅しておる。この話をターラが言いふらして広がっても、所詮学なき奴隷の戯言。わしら奴隷も街の者も信じんからじゃ。」
馬鹿にしたような言葉だったけど、一理あった。外の世界を知らない私たち二世奴隷の口から、国が秘密にしている、なんてことを言いっても誰も本気にしない。
「まあ、しかし…女を取りまとめとるお前さんぐらいは知っといても良いだろうと思ってな」
タナマヤが付け加えて言った。私の胸に。
このクソジジイども…さっさとくたばれっ!!
◯
魔人の人は丘の上の使ってない小屋に捕まっているとのタレコミが。これは行くしかな〜いっ!!
お騒がせおじさんは、ただの迷子のおじさんだったみたいだけど、入っちゃいけないところで野宿しようとしていたから罰を受けているらしい。それをブルちゃんと見に行こうと思う。多分、ブルちゃんは渋るけど、みんなで行くと言えば大丈夫だろう。
「さ、3人だけで行くの?」
みんなを誘ったが、誰も彼も未だに魔人の人を怖がっていて、トートルしか誘いに乗らなかった。「みんなで行けば怖くない!」には少し人数が足りない。
「大丈夫だよ!私たちなら遠くからでも見れるから!」
「本当に大丈夫かな〜」
「トートルの『希薄』も使って遠くからちょこっと見るだけだよっ」
「え〜、でもぉ〜。」
くそぅ。あんなことがあったばかりだから、押しに弱いブルちゃんでもさすがに渋るか。
「でも、街の人もじい様達も、魔人じゃないって、言ってるから、大丈夫だと思う、よ?」
ナイス!トートル!!
これにはさしものブルちゃんも納得したようだ。ちょろちょろだぜ。
丘の見える田んぼのあぜ道に、3人並んで伏せて様子を見る。街の人が2人、槍を持って立っている。『遠視』と『希薄』の魔法を使っているので、遠くて見えづらい存在になっている筈だ。よっぽどのことがないとオレたちには気がつかない。
見張りの2人は妙な表情で魔人の人を見ているな。
「何してるんだろ?」
ブルちゃんが小さな声で言った。たしかに、あれは、何してんだ?
魔人の人はうつ伏せの体勢で肘をつけて体を起こしている。でも起き上がろうとはせず、背筋を伸ばしてまっすぐ前を向きながら伏せ続けている。
「本当に、なんなんだ、ろ?」
トートルにもオレにもわからない。
しばらく見続けていると、おじさんは体を起こしてあぐらをかいた。
あれ?なんかこっちを見ているような?
しばらくするとおじさんはまたさっきの体勢に戻った。
「何か、祈ってるのか、な?」
「…うん。そんな風にみえ……っ!?」
ブルちゃんが息を飲んだ。
おじさんがこっちを見ている!?あ!目があった!!
「うそっ!?見つかった!!」
トートルがびっくりして大声を上げる。こんなに大きなトートルの声、初めて聞いたなぁ。
「ガルドちゃん!逃げよう!」
「ばれちゃった、みた、い」
ありえない事態に現実逃避しかけていた頭が、2人の声で戻ってくる。
「ま、まずいね!よし、少しずつ後退しよう!」
しゃがみ込んだままずりずりと後ろに下がっていく。
いつのまにか『希薄』が解けてしまっていた。びっくりした拍子に効果が切れてしまったのだろう。そのせいでオレたちは丸見え。ついには見張りのおじさん2人にも見つかってしまった。たっ退散〜っ!
◯
ヤツは初日こそヘマしたが、その失点をすぐさま取り返した。その後のこの1ヶ月も率先して働き続け、家族達のいぶかしむような、怪しむような雰囲気を自力で変えていった。…義務を果たしてはいるが、どうも気に食わない。
朝の水汲みでは機転を利かせて、仕事のスピードを大きく短縮した。脱走前のところではアレが当たり前だったのだろうか?その後も水汲みに参加し続けて、わたし以外の女達からの信頼を勝ち取った。さらには子供達を手なずけて、遊び相手になってやることでも、周りからの心象をよくしていった。しかも聞いた話では、今までにはなかった遊びをいくつもあいつが子供達に教えていて好評だそうだ。これには他の家族達も興味津々だ。どこでそんな遊び覚えてきたんだか…ますます怪しい。倉庫整理でも成果を出し、タカタナ様がすごく喜んでいた。腹の立つことに、わたしではあんな風に喜んでもらうすべがない。これで力仕事も驚くほどできるんだからほんとにどうしょうもない。あんな筋肉を持った人間なんておかしいだろ。本当にムカつく。
「ターラ、なんだかイラついてるなぁ」
声をかけてきたペドルはもう着替え終わっていた。薄緑の髪を、細いが筋肉質な腕で撫で付けて最後の身支度をしていた。わたしはヤツの事で気を取られていたせいか、眉間にシワを寄せていたらしい。しかも考えに気を取られるあまり、まだ濡れたタオルで体を拭いている最中だった。それも腕ばかり拭いていたようだ。こすりすぎて赤くなっている。
「…ヤナギサワの事か?」
ペドルが尋ねてくる。ヤツの名前を聞いて思わず奥歯を噛みしめる。頭に血が上って動悸までしてきて、胸には苛立ちが湧き上がってくる。
「図星かよ…大人気だな。ヤナギサワのやつ」
怒りに顔を赤くする私を見てペドルが勘違いしたことを言った。わたしはさらにムカついた気分になった。
「違うわよっ!勘違いでふざけたこと言わないでっ!!誰があんな怪しい、ずるいやつなんかっ!」
「なにがずるいのかわからないが…。お前までヤナギサワにほだされていないようでよかったよ。」
ふざけんな!わたしがあんなつにほだされてたまるかっ!とタオルを投げつけた。
「いい加減服着ろよ。水汲みの時間だろう?…まだし足りないなら付き合ってやってもいいけどな。」
ペドルはからかうような顔で腰を動かしながらふざけた事を言ってきた。
「冗談抜かせっ。誰が好き好んで…」
急いで体を拭いて支度をする。その間に彼は出で行ったようだ。水汲みに遅れて、あいつに仕事を奪われれば私の面子に関わる。あいつは、タカタナ様達の態度を見ると敵ではないみたいだけど、油断はできない。例えどれだけ仕事ができたとしても、どこの馬の骨かもわからないんだから…。
◯
よく晴れた日のことでした。いつもの通りおじさんは突然新しい遊びを教えてくれました。
「ナワトビ、ってなに?」
おじさんは倉庫から長い縄を持ってきて、適当な木にそれを結びつけました。結んでないもう片方を持ち、少し離れたところに立ちました。
「――――――――」
何か言うと縄をぐるぐると回して見せ、その後縄をいったん置き、縄が回っていたところでジャンプをし始めました。それを数回繰り返していました。
「「「「?」」」」
新しい遊びを教えてくれてることは、いつものことなのでわかるのですが、やはりいつものようによくわかりません。ボク以外も同じようでした。
おじさんはボクたちの反応が悪いことを感じて、今度はジャンプしながら、片方の手をジャンプして地面から離れた足の下を通すような仕草をしました。
「「「「「??」」」」
僕もガルドちゃんも他の子も、おじさんがなにを教えてくれているのかよくわかりませんでした。
考え込んでいる僕たちを見て、おじさんはトートルに縄の端を持たせ一緒にぐるぐる回し始めました。縄を回し続けさせると、おじさんはトートルから離れて、回り続ける縄に向かいました。
「なにするんだろっ!」
ガルドちゃんは尻尾がピンと立って興奮気味です。ガルドちゃんはおじさんが教えてくれる遊びの中でも「体動かす系」が大好きです。「ケンケンパ」とか「スイチョクトビ」とか。今回のものも多分「体動かす系」だからか、かなりキラキラした目でその様子を見ています。手をぶんぶん振って握りしめちゃって、耳もぴこぴこ動いてもうわっくわくでした。
おじさんは回る縄が地面についた瞬間、ばっ!と縄を追うように飛び出しました。そしてジャンプ!
縄はおじさんの頭の上で勢いをなくし、そのままおじさんの頭の上にぺしっと乗っかりました。トートルが危ないと思い回す手を緩めたようでした。微妙な空気に包まれました。周りで見ていた大人たちからおじさんへヤジが飛んでいました。
「オレわかった!!」
ガルドちゃんはトートルに縄を回し続けてと言い、おじさんと一緒にに縄が回るところへ飛び込んだ。
「こうやって遊ぶんだ!!」
そして回り続ける縄の中で、タイミングよくジャンプし続けました。
「たのしー♪」
満面の笑みでぴょんぴょんと縄を飛ぶガルドちゃんは、その言葉通りとっても楽しそうでした。
おー!っと歓声が起き、次々とみんな飛び込んでいきました。
みんな、初めは突っかかってしまいうまくとべませんでしたが、何度もやるうちに飛び続ける事が出来るようになりました。ボクも早いうちに飛べるようになりました。みんなで一緒に数を数えながら飛んだのが楽しかったです。いつのまにか周りで見ていた大人達も加わっていました。
おじさんが教えてくてる遊びはもう何種類になったんだろう?ボクたちは毎日新しい遊びて忙しくなりました。ボクたち子供だけではなく、大人達も毎日楽しそうです。
◯
魔人のおじさんはよく、1人で遊んでいる時がある。
時に、伏せの姿勢から腕だけで起き上がってまた伏せる、を繰り返したり。また時に、膝を立てた仰向けの姿勢から上半身だけを起こして、また仰向けに戻ったり。またまた時に、何度も立ったりしゃがんだりを繰り返したり。何の遊びだろう?オレもやりたい。
数日に一度、お風呂の前に行なっているおじさん1人の謎の遊びは、休日になるとその種類が増える。
まず走る。なんかゆっくりなんだけどかなり長く走る。梁にぶら下がり腕だけで体を上下させる。甕に水を入れて両手に持ち、ゆっくり上げ下げする。もうちょっと大きな甕に水を入れてお腹あたりに抱え、腰を落とすようにして大股で歩く……。他にもいっぱい種類がある。
何をしているのかとおじさんに聞くと、
「キントレ」
と言われた。何だそりゃ?
そう言っておじさんは、なぜかおじさんの太い腕に笑顔で話しかけていた。
「キョウモヨクガンバッタ。オマエハサイコウダ!」
胸にも話しかけていた。
「スゴイパンプアップダ…スバラシイヨオマエハっ!」
どうやらおじさんは疲れているようだ。オレたちの言葉が分からないからって、自分の体に話しかけるなんて。しかも顔は笑顔だからこわい。
最初は俺たちもみんなで真似してやっていたが、1人減り、2人減り、最後には俺とブルちゃんだけが「キントレ」遊びに残った。
「「「スゴイヨ!サイコウダ!」」」
意味はわかんないが「キントレ」の最後には自分の体に声をかけるのが習わしらしい。おじさんは最近覚えたオレ達の言葉で『訓練』と言っていた。あのムキムキのムキな体はきっと「キントレ」で出来ているんだとオレは直感した。
目指せムキムキ!いつかおじさんのようになって、水汲みを1回で終わらせるんだっ!
◯
脱穀中の雑談で男の部屋に来客だと聞いた。来ているのがタカタナ様達で2人の騎士まで連れていると言うことも。間違いなくヤナギサワ関係だろう。騎士とは珍しいがついにひっ捕らえられる日が来たのか。よく働いた方だとは思うが起こした事件が大きすぎたようだな。挽回など初めから無理だったのだろう。ざまぁない。
「ターラ、タカタナ様に会いに行かないの〜?男の部屋にいるってよ〜」
「行かないよ」
一つ年上のミラトが、まるで行かないなんておかしいとでも言いたげな口調で聞いてくる。それが癇に障ったのであえてそっけなく答えた。
「ふ〜ん。少し前までタカタナ様と聞けばすっ飛んでいったのに〜。随分な変わりようね〜」
ミラトはニヤニヤとした顔でからかうように言って、わたしの頬をツンツンと突いてくる。うざったい。
わたしは、確かにミラトの言うように、タカタナ様と聞けば会いに行っていた。その理由は…
「街の様子とかを聞きたかっただけよ」
これだけじゃないけど。
「ターラ、市民に憧れあるもんね〜。市民になりたいの?それなら手っ取り早くは市民の男に買い上げて貰えばいいんだっけ?あれ?それじゃあ個人の奴隷になるんだっけ…?それにしたってタカタナ様は高望みすぎな〜い?」
ミラトの近くにで作業していたタチュララも
「さすがにタカタナ様は無理よ?そもそも市民の女性だってあんないい男がいたら狙っているんだろうし…」
「そもそも狭き門よね〜。何か領に役立つ能力を見せるんだっけ?奴隷がそんな事できるわけないじゃん〜。」
「あ、役立つと言えば体と力自慢なら居るわね」
「そうそう〜。胸板とか腕とか、とにかく全身凄いよね〜」
ミラトがうっとりとした表情と仕草を作ってわざとらしく言った。
わたしは、話がヤツの方にされそうだったので
「うっさいわねっ!違うって言ってるでしょっ‼︎」
大声で話の流れを切った。ミラトをはじめ一緒に作業していたみんなに笑われてしまったが仕方がない。ひーひー言って蹲るほどツボに入った奴もいる。本当の事なんて言えないし、ヤツの話なんて聞きたくないし、こうして笑われるのも仕方がないと自分を納得させた。でも笑いすぎじゃない?
部屋へ戻る道すがら男の家を覗いていく。タカタナ様や噂の騎士は既におらず、中では男どもと子供が集まって、何やらわいわい遊んでいるようだった。その中心にはヤナギサワがいた。連れて行かれてないじゃんと、なんだか呆れた気持ちになりため息を吐いていると、騒ぎとは離れて床に座っているペドルに気がついた。彼は騒ぎをどこか暗い瞳で見ていた。わたしの視線に気がつくといつもの顔に戻って肩をすくめて苦笑いをした。それにわたしもしかめ面で返した。
騒ぎの中から、ヤナギサワが抜け出す姿が見えたのでわたしは隠れた。トイレか?と隠れ見るとやつは部屋の裏手でしゃがみ込み何かを見ているようだ。
(あれは…まさか、本?)
何枚も小さな紙が束ねられているあれは、たまに街の人が休憩中に楽しんでいる本、だと思う。しかし分からない。タカタナ様が騎士を連れてここにきた理由はヤナギサワ絡みだったけど、本を渡しに来たの?なぜ本を?わざわざ騎士を2人連れて…?
ヤナギサワの様子を改めて見ると、今度は必死になって何かを書き出した。ペンを持っている?ペンも渡されたの?ますます分からない。それは置いておいても、本に何かを書くなんて今まで見た事もない。あれは中の物語を読んで楽しむもののはずだ。
ヤツの予想外の行動が不思議で戸惑い、考えても答えの出ない思考にイライラして、なんでわたしがこんなコソコソ覗き見なくちゃいけないんだとだんだん怒りが湧いてきた。動悸までする。もっと近づいて正面から堂々と見てやろう。わたしが隠れているなんておかしいじゃないかと、ヤナギサワを観察しながら近づいて行った。その間もペンは忙しなく動いている。
しゃがみ込むヤツの前に立つと、なんとヤナギサワは文字を書いていたようだ。
わたしは一瞬で頭が真っ白になった。
奴隷が文字を書くなんてまずあり得ない。もともと奴隷の生まれで書けないか、書けなくされるからだ。
戦争奴隷や犯罪奴隷、とにかく過去に教育を受けて文字をかける人間が奴隷になった場合は、脱走や反乱などの共謀を防ぐため、魔術によって文字を奪われるのだ。わたしはそれをじじいどもから聞いて知っている。事実じじい達は字を読むことは出来るが、書こうとすると首に痣のような模様が出て苦しくなるそうだ。そのまま下記続けると首と胴が離れるらしい。
内容はわからないが、縮れた紙に何かをさらさらと書いている。明らかに絵ではない。ペンの走りは淀みなく、文字は綺麗な列をなしていた。
こいつは、ヤナギサワはなんだんだ。
突然禁忌の森に足跡もなく現れた。奴隷とは思えない知識を持っている。いつのまにか周りには人が集まっている。脱走奴隷だと思っていたのに、文字を知っている…
目の前のヤナギサワは、わたしに気がつかずに文字を書き続けている。
「…おまえ、やっぱり奴隷じゃないのか?」
つい、聞いてしまった。答えが返ってくるはずもないのに。
するとヤツは目の前に立つわたしにやっと気がつき、間抜け面で何かを言ってきた。その反応によくわからない感情が湧いて、わたしはヤナギサワを一睨みしてその場を離れた。
なんなんだあいつは…。
なんなんだあいつはっ!
ヤツがここにきて以来、ずっとわたしの中にある悪い感情。あんな事件を起こしておいて生かされているなんてずるいと思う気持ち。奴隷には持ち得ない知識を披露してあっという間にみんなから信頼を得たことに対する気味の悪さ。タカタナ様をはじめとする市民たちからも気に入られていることに対する嫉妬。わたしはとにかく、よくわからない、理解の及ばない、「異物」が私たちの中にいる事が気にくわない。それが今日、ますます理解の及ばないヤツだと見せつけられた。
ヤツが文字を書いた事が頭を離れず、家に帰っても少しも気が鎮まらなかった。
このモヤモヤしたした胸の苦しみはなんだろう。
ムカつく。
「あいつに言葉を教える?」
私はタカタナ様から呼び出された。珍しくもないが、まさかこんな頼みごとをされるなんて思ってもみなかった。それに、言葉なんて放って置けば勝手に覚えるもんだろう?
「アウガさんやタナマヤさんにもお願いしてはいるのですが、彼らは、その…自由すぎて」
「どうりで最近、唐突に下ネタを話やがるのか」
タカタナ様は苦笑いをしながら改めてわたしに頼んできた。わたしは奴隷なんだから単に命令すれば良いのに。しかし、そこが彼の素晴らしいところだ。でも分からないのはどうしてわたしが選ばれたのかってことだ。
「普段からなにかとヤナギサワさんと関わっていると聞いていまして、女性ではターラさんが適任だと判断しました。」
「……好きでやっているわけじゃない。でもそういうことなら仕方ないです」
そう言ってわたしはヤナギサワに言葉を教えることを引き受けた。
私たち二世奴隷には権利がある。権利と言う言葉の意味はよく分からないが「それをしていい」と言うことらしい。権利と対になる義務という言葉もある。「それをしなくてはならない」という意味だそうだ。
食べる事・着る事・寝る事・作り生む事、そのために働く事。これが権利と義務だ。この「作り生む事」が厄介な事態を生んでいた。この権利は子供を儲けることと性行為を愉しむ権利だ。
ヤナギサワは私たち二世奴隷に溶け込んだ。また、元魔人もどきだとか、力自慢だとか、奴隷らしくない考え方だとかのせいで、大人気と言っていい程の注目を集めている。そのせいで、特に魔人もどきの捕物を見ていた女に人気が高いのだ。具体的にはヤナギサワの立派だと言う「モノ」を見たヤツらから一度抱かれてみたいという理由で…
しかしヤナギサワは本当の意味でここの奴隷になっていない。これは二世奴隷を取りまとめる一部の家族にしか聞かされていない事だが、ヤツは私たちには言えない理由でここに置かれているだけだそうだ。つまりあいつと関係を持ってはいけない。いや、ヤナギサワが二世奴隷の女と関係を持ってはいけないのだ。でも女達は自身の作り生む権利を主張していて、事態がかなり厄介になっている。中には、「あの部屋」が使えないならどこででも跨ってやると言い出したものがいる。そんなことしたら許可なく妊娠しちまうだろうがバカ…。そこで、不本意ながら最もヤナギサワと接する機会が多く、間違いが起こらないわたしに指名が来たという訳だ。わたしとしても二世奴隷の秩序のためにもこれを引き受けることは仕方がない。
とは言っても、言葉を教えるなんて事経験がない。なので単純な動作や物の名前を教えてくれ、との仰せに従うことにした。
朝、試しに食事で使う物の名前を教えてみた。発音が変だったからそれを指摘するとすぐに直して言ってみせた。次に男の部屋の扉の開け閉めを言葉で教えた。「扉を開ける、扉を閉める」と口に出しながら実際に扉を開け閉めして見せる。ヤツはすぐにそれを理解し繰り返し実践しながら言葉を口に出して覚えようとしている。同じ言い方で通じる蓋の開け閉めも教えたがすぐに理解した。明日からはもっと複雑な言葉を教えたほうがいいのだろうか。分からない…
これから言葉を教えます。
なんて言わなくてもヤツは、言葉を教えてもらえるんだと察し大人しく勉強をしている。繰り返し口に出し、食器を指差し覚えようと努力している。扉や蓋を何度も開け閉めして覚えた。その顔つきや態度は異常なほどに真面目に見えた。ヤナギサワ嫌いのこのわたしが、教えて良かったとすら思ったほどだ。私たち奴隷が新しい仕事を教えてもらう時、大抵の者はこういう態度ではない。もっと気楽だ。ヤナギサワと比べれば不真面目と言っていい。それを当たり前だと思っていたしなにも感じなかった。今日この時までは。
ヤナギサワは奴隷らしくない。魔人騒動で捕まったときも大人しかったらしい。丘に縛られているときも礼儀正しかった。仕事も早くて正確だ。こうして思い返してみるとヤツは奴隷というよりも……
わたしは考えるにつれて動悸がしてきた。よくわからない感情もまた湧いてきてしまい昼飯前に言葉を教えるのをやめた。
気を紛らわせるために炊事場で調理を手伝った。とにかくヤツから離れたかった。調子が狂う。この気持ちは、異物だから気にくわない、とは違うような気がする。でもこれ以上この考えを深めることはまずい気がした。
包丁を使う手が進まない。そんなわたしを見て周りの女達の目もどこか訝しげだ。「大丈夫?ぐわい悪い?」と声を掛けられたが何と答えていいか分からない。いろんな考えが浮かんではそれを押し戻しを繰り返し、ますます調理に集中できない。これではみんなに示しがつかないと、軽く頬を叩き気を入れ直して調理に没頭しようとしたら…
『『んきゃ〜〜〜〜〜〜』』
という声とともにガルドとブルーガとヤナギサワが遊ぶ声が聞こえて、集中が切れた。そのせいで今切っていたイメロを地面に落としてしまった。
…い、い、い、いい加減にしろぉっ!!
突然現れて、今までの生活を良くも悪くも引っ掻き回して何がしたいんだヤナギサワは!
騒ぎの罰も受けずにのうのうと生きていやがる!
街の人達からも評判が良いのも気に入らないっ!
大体ヤツは何者なんだ!
タカタナ様や街の人たちからの扱いも変だ!
気に入らない!
気に入らないっ!!
わたしを感情をかき乱す事も、気に入らないっ‼︎‼︎
わたしは包丁をまな板に叩きつけて騒ぐヤツのもとへ向かった。言葉で注意したってわかるわけがないから態度で示す。とびっきりの威圧を3人に向け歩く。わざと大股で、かかとを地面に叩きつけるように歩く。周りにいた、そろそろ昼飯だと早めに座っていた家族達から何事だと注目を集めてしまったが、知ったことか!
3人はすぐにわたしの怒りに気が付き抱き合って震えていた。怒りが伝わるような表情をあえて大袈裟に作り、3人を見下ろした。そしてガルドとブルーガを掴み上げ、ヤナギサワにはこの顔でわたしがどういう気持ちか気が付け!と睨んだ。
視界に入ったヤナギサワは歯がガチガチと音を立てるほどの恐慌をきたしていた。
目つきの悪さに定評のあるわたしだが、さすがに大の大人にここまでおびえられると・・・微妙な気持ちになった。
毒気を抜かれて気持ちが落ち着いたわたしの目に入ってきたものがある。
おびえるヤツの足元に広がるたくさんの文字。
ところどころに見える子供たちの落書きとは明らかに違うそれがあたり一面を埋め尽くしていた。
肩の力が抜けた。
もうわかった。
十分わかったよ…。
「おまえ、やっぱり奴隷じゃないのか…」
ヤナギサワは多分、市民かそれに準ずる者だ。




