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とにかく俺は帰りたい!  作者: やま
第1章
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2.プロローグその2

 1日目。

 

 そうと決まれば行動あるのみ。自分の命を優先しよう。捜索した範囲には生存者はおろか死体すらなかった。まあ、死体さんは見たくなかったから良かったけど…。

 まずはスーツケースのところまで戻り中身を物色。鍵がかかっているものはなかった。壊す手間が省けたぜ。スーツケースの中には海水が浸水している。

 どうやら2つは女性のものらしい。服から女子力の高さが見て取れるし、特に1つのスーツケースは衣類圧縮袋を使い几帳面に服が分けられている。トップス、ボトムス、水着、ハンカチ、と分けていて素晴らしい。でも下着がまとめられている袋には、とんでもなくきわどエロい下着が入ってびっくりした。パールが、付いてる…パールしかない部分がある…。しかし、このすげー下着の持ち主も、俺と同じ恐怖と絶望を味わったのだと、もしかしたら今俺よりひどい状況に陥っているのではと思うとこれ以上茶化す気持ちにもならない…。

 この衣類圧縮袋は使える。水をためておくことができのだ。人間が生きていくのに1日に3リットルの水が必要だという。先に見つけていたペットボトルは3本。水とジュースとお茶だった。まだ中身が充分残ってるものもあるので、水以外はちょっとずつ飲んでおこう。1本500mlなのでこれで1日に必要な水分の半分が確保できる。衣類圧縮袋は大小複数枚あるので、水さえあればこれで必要量は確保しておくことができる。そう、水さえあればね…。これが一番の問題だな。

 続いて男性ものスーツケースを物色。こちらはかなり乱暴にものが収められており、中身のものは海水でびったびただった。日本旅行の帰りかな。饅頭などと漢字で「東京」と書かれたTシャツがあった。なんだかワキガのかほりがする。外人さんのスーツケースだろうか(偏見)。着るものをゲットしたかったが、どうもサイズが合わなさそうだ。まあ、俺とおんなじような体型の人はまずいないし仕方ないか。

 服の替えは手に入らなかったが収穫はあった。ナイフだ。正確にはレザーマンのポケットツールだ!いわゆる十得ナイフだか、こいつはペンチがメインのイカしたやつ。ポケットツールなだけありナイフの刃渡りは小さいがこれがあるだけで大違いだ。かなり幸先のいい遭難生活が始められそうだ。よく使い込まれていて頼もしい相棒になりそうだ。持ち主の人、このマルチツールはありがたく使わせていただきますっ。

 他にも使えそうなものを数点確保できた。スナック菓子など食料や、薬などもゲットできた。残りのものはスーツケースにしまい、藪に隠した。また後で必要になるかもしれないしな。

 さて、スーツケースの物色も終わったのでお次はキャンプ地の選定だ。ただキャンプ地はいい場所が見つかり次第変更するということも視野に入れておかなくては。とりあえずは俺が漂着したあたりで探そう。太陽はまだ登りきってないようなので、おそらく11時ごろだろうと思い、腕時計の時間をおよそに設定した。

 物色品にあったかわいいトートバッグにナイフ等を入れ森側の日陰を、先程生存者を探した方とは反対に歩いていく。



 ツイている。飛行機事故からの遭難で不運を使い果たし、その分幸運が舞い降りているのかも。浜と森の交わるところを歩くこと30分ほどで、森側が少しづつ高くなってきた。海とある程度の高低差があるところにキャンプを張れば高波などあっても安心できる。

 ちょっとこの辺で森の中にも入ってみようかな…いいポイントが見つかればスーツケースを持ってくるにもちょうどいいし。というわけで、いざ森へ。と言っても海が見える範囲で。藪、雑草、倒木でまさに手付かずの自然。地面ももちろんデコボコ。背の高い植物は森の木くらいで見通しはそこまで悪くない。しかし足元には膝ぐらいの下生えが続いている。下生えは、足元に「何か」がいても気がつかないぐらいには生い茂っている。適当な木の枝を拾い武装したが、野生の肉食獣が現れたりゴリラと鉢合わせたりしたら、気休めにもならないだろう。どうせなら美人アマゾネスに会いたい。この木の棍棒は「木っキッコロ」と名付けよう。ふざけでもしないと精神が保てない…。


 熊鈴と言うものがある。鈴の音で熊に自分の位置を知らせ、不幸な異種遭遇を避けるためのものだ。しかしそんな便利なものは持っていないので、大きな声で森の熊さんを歌いながら、草を薙いだり木の幹をキッコロで叩きながら歩く。てか、熊ってこんな南国リゾートみたいな気候にいるのか?何が起きてもすぐ対応できるよう膝を曲げ、腰を落として、前後左右をきょろきょろしながら進む。森の熊さんを歌いながらね。よく耳を澄ませ周りの音に注意する。森の熊さんの合間にね。100メートルを進むのにだいぶ時間をかけた。森の熊さんの1番を幾度となく歌いながら…。

 野生生物と格闘や底なし沼にハマることもなく、10分ほど捜索するとキャンプが張れそうな場所を見つけられた。早っ。マジでツイてる。背の低い草地の中に石混じりの土がむき出しになっている箇所を見事発見。大きな木が生えており、それを背面に配置すればかなりいい感じのキャンプ地になる。もちろん大きな石を取り除いたり、枯れ葉・枯れ草をひいて環境を整えてやらねばなるまい。とりあえずは一安心と息をついた。だかまだやるべき仕事は多い。しかしやらねばならない。幸いちょっと遠くに海も確認できるので、そこまで森の奥でもない。捜索ヘリや捜索船が来ていないかすぐに確認しに行ける。

 ではいよいよ生命線の1つ「火」を焚こう。

 いいキャンプ地が見つからなければ早々に諦めて、適当な場所で火を焚くつもりだった。日が高くないとこれから行う火起こしが失敗する可能性があったからだ。なんとか場所の確保に成功したのは僥倖だったな。そんなことを考えながら周辺で枯葉・枯枝など燃えやすそうな燃料候補を集めていく。やたらデカイ枯葉があるがなんの植物だ?そういえば森の植物もあまり見慣れないものだった…日本とはずいぶん違うらしい。それら燃料候補をトートバッグへ詰め替え、長い枯枝などは蔓で束ね担いで浜辺まで戻った。

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