表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とにかく俺は帰りたい!  作者: やま
第1章
13/24

13.旅立ちじゃない、かも。

 95日目。

 目の前には満点の星空。星降る夜という表現がぴったり当てはまるほど空一面を星がびっしり埋めている。俺はビーチに寝転がって寄せては返す潮騒を聴きながらそれを眺めている。都会の喧騒を離れて過ごす最高にリラックスした時間だ。ふと口さびしくなりヤシの実(仮)のジュースを一口のむ。時折吹いてくる風は湿度をはらんでいて少しべとつく。波の音以外には焚き火の炭が爆ぜる音がたまに聞こえるだけの静かな夜。仰向けに寝る俺の足の間にはなねこが丸まって寝息を立てている。


 ここは俺のプライベートビーチ。誰にも邪魔されない自分だけの場所。ここが私のアナザースカイ、的な。ここでは空も海も陸も、そう大自然そのものが俺だけのもの。最高の空間だ。不満を挙げるとすれば、酒が無くて、女っ気が無くて、電気は通ってなくて、トイレはその辺で、俺は全裸で、ここに遭難していて、明日の保証はないってことぐらい。…最低の状態だ。

 空に浮かんだ3つの月をぼんやり見上げていると、思わず独り言が漏れた。

「帰りたい…」



 森では20時にもなれば、月や星の明かり以外はなく真っ暗に近い。焚き火の炎が照らす範囲だってたかが知れている。この静かな夜にぼんやり星空を眺めるのが最近の流行りで、()()を見つけた日から欠かさず行っている。この第2キャンプ地は赤いプロペラ機で飛ぶ男前な豚さんのアジトと似ており、白い砂浜と青い海を高い崖で丸く取り囲んだ様に囲ってる。中の砂浜と海は半々ほどに空間を分け合っている。あの飛ぶ豚さんのアジトもイタリアだかどこかにモデルになった場所があるらしいので、ここにも似たようなところがあっておかしくはないのだろう。そう思うことにする。ちなみに崖にはトンネルのような洞窟があり、そこを通って森と行き来し出来るのだ。周りを高い崖で囲われているおかげで夜中に動物たちの襲撃を心配しなくても大丈夫だし、意外と夜の森の喧騒を遠く離れたものにしてくれるので、こうして静かな時間を過ごせるようになった。

 ぼんやりと爬虫類野郎の薫製肉をかじっているとなねこがあくびをした。ついでに俺を一瞥した視線は、お前も早く寝ろと言っている。俺はすっかりハマって乱獲しまくっている爬虫類野郎の薫製肉を飲みくだしそのまま目を瞑った。



 96日目。

 やることは変わらない。俺の顔面に乗っかって寝ているなねこの首根っこを掴み脇へどかす。寝ボケているのかなねこは犬かきみたいな動きをしている。キュンとした。朝のストレッチと洗顔歯磨きを終えれば、第3湖(小)まで1kmほど歩いて水を汲みに行く。ペットボトルはあの激闘の夜に一つ壊れてしまい残りは2つ。

 最初の爬虫類野郎との戦いの後、キャンプ地に戻ったら破壊の跡でしっちゃかめっちゃかで、ペットボトル2・トートバッグ・日記・レザーマン・衣類圧縮袋3を救助するのに精一杯。なんせ山火事になるのでは?というレベルの延焼具合で、火傷しながらの回収作業だったし。俺は自分がしでかした(正確には爬虫類野郎)自然破壊に酷く罪悪感を感じていたが、なんとあの青いカブトムシたちか大群で押し寄せて、あわや山火事か!?という炎を食べ尽くしたのだ。炎を反射して紅く光りなから飛び回る蒼い彼らの食事風景は妙に神秘的な光景で感動した。

 閑話休題。文明の利器はもう3ヶ月あまりも酷使されてボロボロだ。それを受けて木の水筒やバケツ・桶など新たに製造した。しかし洋服はダメだ。新しく作れない…。ジーパンは裂け、シャツには穴が空き、パンツはとっくに擦り切れて履いてない。…全裸で過ごすことが多くなった。誰も見てないしね☆

 湖で水浴びを楽しむ。ここは浅い湖なので安心して遊べる。もちろんなねこも一緒だ! 猫は水浴びが苦手だと思っていたが…まぁなねこは猫じゃないしねっ。なんなら洗わなくもていい匂いしかしないんだよなぁ。俺は今、常識的な生活をしている第三者からしたらどんな匂いなのだろうか。きっと俺はもう麻痺しちゃってわからない…。ちなみにこの湖(小)は3つ目に見つけた湖だ。2つ目に見つけた湖より東北東に8kmほど歩いたところに見つけた。そこから1km北に歩くと現在のキャンプ地だ。

 湖から上がるとすぐさまなねこが俺の足にじゃれついてくる。なにやらんなんな呟きながら靴紐を噛んだり引っ張ったりしている。俺はなねこの邪魔をしないようにスクワットを始める。この可愛い相棒とももう3ヶ月も行動を共にしている。洗わなくて臭くないどころか、あれだけ食いしん坊なのに排泄しているところは一度たりとも見たことがない。不思議だ。魚は狂ったように食べるが、森の動物は粛々と食べる。これも不思議と言えば不思議。その差はなによ?爬虫類野郎はあんなにも旨味があるのになぁ。不思議と言えば、なねこは朝起きた時に目ヤニが付いていないのに顔を洗う。いや待て、そもそも尻尾が複数あるのもおかしい…。

 一緒にいてくれてありがたいが、感謝の気持ちしかないが…本当に不思議です。いい加減正体が気になる。俺はスクワットを終えてプランクの体勢を取った。


 さて、朝の日課も終わったことだし、ここらでちょっと食料の調達でもして帰るか。俺はついにハーブや香辛料を使える様になったのだ。これらの調味料は森の奥と言えるこの辺でしか生えていないものだ。干し肉のくさみを誤魔化すために主に使うのだが、森の奥の動物達の肉は「怪物クラス」の強いヤツになればなるほど、肉に臭みがないし痛みづらい。ちなみに爬虫類野郎はハーブで揉んでから焼くと最高にうまい。

 あの爬虫類野郎も今は昔。昨今ではお手軽に獲れる俺のおつまみに成り下がった。1匹目の爬虫類野郎の美味しさの虜になった俺は第2湖に仮設キャンプを立て、湖周辺の針葉樹林帯に爬虫類野郎を誘い出し乱獲した。それはもう狩りまくった。なねこなんか連日の味に飽きて食わなかったぐらいだ。

 多くの大木を消費したが爬虫類野郎の乱獲は思わぬ成果を生んだ。ナイフのレベルアップだ。いや「レベルアップとかゲームかよ」と言いたいところだが、錆だらけの刃にアラビア数字で「Ⅱ」とかなり硬いフォントで浮かび上がってきたもんで「レベルアップ」だと認めざるを得なかったのだ。これにより、爬虫類野郎を狩るときに必要な犠牲だった大樹たちが、もっと細い木でも攻撃が成立するようになった。自然破壊には変わらないが…。また、どう言う原理がは全くわからないが、物理的な刃厚よりも薄く切れ込みを入れたり、木の内部を掻き出したりできるようになった。本当に不思議です。


 爬虫類野郎と、久し振りに捕まえた「飛べないけど空も走れるダチョウのような鳥」の血抜きをしながら燻製機の用意をする。どちらも森の一般的な動物とは違う「怪獣」クラスのためか何故か肉の質が良く、臭みやクセがない上質な味わいだ。正直燻製にするのがもったいないが、美味しい焼き肉を食えるのは捕まえた直後だけだ。保存食はたくさん作り続けているんだが、これからのことを考えると保存食はいくらあっても足りないぐらいだろう。


 これからのこと


 そう、この森から脱出するために俺は準備を整えて来た。例えば保存食以外だと、レベル2のナイフで軽い木をくり抜いて水筒を複数作ったり、突き刺し強度が異常に高い葉を使ってリュックサックをこさえたりした。そもそも「持ち物」なんて物はほとんどないので、水と食料があれば生きていける。道中で水と食料を確保していくことももちろん考えている。究極的には、なねことナイフさえ手放さなければまたここに戻ってきていくらでも立て直せそうだ。そんなことを考えて「先ずはいけるところまでトライしてみよう」と準備をしていたのだ。ちなみに火起こしに関してもナイフのおかげで大幅に簡単になった。なにせ摩擦で火を起こすための道具が超簡単に作れてしまうからだ。肝心の摩擦なら俺の筋力でなんとでもなるしな。

 他にもトライしようと決めた要因が2つある。ひとつは念願の川を発見した事だ。ただし下流から上流へ遡上する川だったが…。湖(小)のほど近くにもうひとつ湖(小2)があり、そこから川が伸びている。その方角が海とは真逆なのだ。高い方に向かっているのだ。この森はなんでも不思議。

 もうひとつは川の向かう方角が北〜北東なのだが、そちらの方角に以前見えていた山脈がごっそり無くなっている事だ。気がついたら山がなくなっていたんだよなぁ…自分の生活に精一杯で全然周りが見えてかったんだなぁ。もしかして以前、食中毒明けに見た「動く山ほどの大きさの何か」は本当に動く山だったのかもしれない。とにかく山越えしなくても良いかもしれない!という事がさらに俺を後押しした。

 もうすぐこの森で過ごして100日が経つが、記念日に出発しようと思うほど気持ち的な余裕はない。ダチョウ(仮)の燻製が準備でき次第出発しようじゃないか。



 97日目。

 リュックサック(葉)に必要なものを詰め、湖(小2)へと歩き出す。これは普段の「朝の日課」ではない。この森から脱出するための一歩だ。できればもう2度と戻りたくないアジトを振り返り、視線で別れを告げる。

 天気は晴れ。うざったいぐらいの日差しは鬱蒼と茂る植物たちの影に遮られている。ここまではまだ知っている森だ。湖(小2)で水を木の水筒に汲む。途中の川でも汲めるのでここでは2リットル程。なねこは近くの芝で虫を見つけたようで咥えて俺のところまで見せに来てくれた。俺はなねこの喉をかりかりしながら虫を受け取る。あ、これ食えるヤツだ。黄金色した親指ほどの芋虫なのだが、エナジードリンクの匂いと味がするのだ。俺は湖の水でさっと洗って芋虫を半分噛みちぎった。効くーっ。カフェインでも入っているのかねぇー。ねっとりした濃い味を岩清水で流し込む。もう半分をなねこに差し出すが、ふいっと顔を背けお前が食え的なリアクション。なねこにお礼を言っ食べきる。

 川に沿って歩き始める。なねこは先頭を歩いてくれて、たまにこちらを振り返り俺の様子を確認してくれる。左右に揺れる尻尾たちのリズムが軽やかでどこか機嫌が良さそうに見える。この川、中を調べたのだが生き物が生息していなかった。実は湖にも水棲生物がいないので、その水で出来ている川の流れにもやはり生き物、淡水魚はいないのだろう。生き物が生息していない、若しくは生息できない水を飲んでいるなんてなんだか怖いが、今更だ。ちなみに水草なんかは生えているから不思議。

 川沿いに2時間ほど進んでいるが道は緩い上り坂。でも川の流れは登っている…。なねこと川のほとりに座って干し肉をかじる。道中見つけた果実や木の実が付け合わせだ。川沿いは比較的涼しいが、緩い上り坂をひたすら歩く移動は汗を掻く。全裸で歩いているが、汗を吸う衣類がないので、流しっぱなしの汗で体が気持ち悪い。

 そうだ川に入ろう!早速俺は川の流れが滞っている浅瀬で水を身体に浴びる。冷たいっ。気持ちいい〜。汗を流して体はさっぱりするが、いつものことながら「拭くもの」が無いので自然乾燥。いつの日かふかふかのタオルで体を拭きまくりたい。

 ひたすら歩く。動物たちとの遭遇もあるが荷物になるので襲ってきたヤツの対応以外はしない。昼休憩前に動物と遭遇したら昼飯にするつもりだが。焼肉にするにも干すにも火を起こしてからなのでなかなか面倒。この判断が吉と出るか凶と出るか、またわからない。

 動物たちの中で一度爬虫類と遭遇した。しかしもう爬虫類野郎ぐらいじゃ慌てない。周りに太い木がある場所に誘い込まなくても対応できる方法を使って()退()した。俺は右手のナイフの他に太い丸太を左手に持って歩いている。もちろんナイフは鉈として道を邪魔する枝や茂みを切り取るために使っている。左手の丸太はかなり太いが持ち手を削り込んで握りやすく作っているし、中は空洞にしているので軽く持ち運びしやすい。これは生き物をナイフで切る為に必要な、相手を挟む2本の木のうち手前の木の役割を果たす。つまりこいつを爬虫類野郎に向けて、爬虫類野郎の背後にある木と一緒に右手のナイフできるだけであら不思議!?爬虫類野郎は哀れ深い切創を身体に作り逃げて行きましたとさ。めでたしめでたし。と言う寸法だ。1匹目の爬虫類野郎との戦いの時もこれを考えて薪を握りしめて寝たのだが、キャンプ地から飛び出す時にはもう持っていなかったし、その後もこの作戦が頭に浮かんではこなかった。しかも、もしかしたらナイフがレベル2じゃないできないことかも。

 なねこが俺の横を歩き足にまとわり付いてんなんな鳴いている。何かと思ったがそろそろ昼か?なんて賢いんでしょ、うちのなねちゃんはっ(ハート)。俺は近くの岩に腰掛けてやはり干し肉を取り出しヤシの実(仮)と果物で昼餉をいただいた。なねこは俺の手から昼ご飯を食べたいらしく、岩に置いた干し肉を俺の手に当ててくる。かわいい。なねこの干し肉を手のひらに乗せなねこに差し出すと、前足で俺の手のひらを押さえながらもぐもぐし出した。もぐもぐしながらこちらを見つめてくる。好き。

 なねこは散歩気分なのだろうか、この道中実に楽しそうだ。自由になる指でなねこの喉をかりかりしてやりながらふと考える。この森からの脱出が上手くいったとして、なねこは大丈夫だろうか。先ず人前に出してもいい種類なのだろうか。尻尾がたくさんある動物をこの森ですらなねこ以外には見ない。さらに多分だが、人間ぐらい軽く殺せるだけの身体能力がある。そう言った意味ではこの森の怪物クラスかそれ以上の危険生物だ。ただふわふわでラブリーというだけでは隠しきれない牙を持っている。次に、なねこは森の外で生きていけるのだろうかという事。野生のライオンを東京に連れて行ったらエサの問題がある。広い敷地で運動もさせてやらないといけないだろう。なねこはこの森以外のものをたべれるのだろうか。この森以外の環境で暮らしていけるのだろうか。



 脱出初日のキャンプ地はなかなかいい場所が見つかった。下草が低く密集していていて柔らかい天然の敷布団地帯を発見。時間的にはやや早いが火の支度や晩飯のことを考えたら遅いよりはマシだ。

 晩御飯は魚の干物と簡単なスープを食べた。なねこは相変わらず魚に目が無く、貪るようにして魚を食べ、浴びるようにスープを飲み、俺に体を洗われる。俺もついでに軽く体を清め寝る支度を済ませた。もういつでも眠れるが、寝る前には月を見ないとなんだか落ち着かない。川までなねこ少し散歩しよう。あそこなら空がよく見える。そうと決まれば松明作りだっ。


 なねこに声を掛け連れ立って川まで歩く。なねこは足にまとわりついたり少し先行して進んだりとやはり楽しそう。俺もそんななねこを見てほっこりする。木の葉の間から見える3つの月は大きく、今夜の森は明るい。松明がなくてもギリギリ歩けそうだ。川まで戻ると空が開け月がよく見える。十日夜の月といったところか。そこは俺の旅立ちの前途を祝して満月だろうがよ。この世界に俺を転移させた神なり何なりは全く俺に配慮が足りない。まだまだ満月には遠い月に今日の無事を感謝し、明日の幸運を祈る。なんだかあの洞窟以来習慣になってしまったな。

 キャンプ地に戻り横になった。右手にナイフ、左手に太い木のハリボテを握り顔の横にはなねこをご招待。リュックサックを枕として使う。人里を目指したこの森からの脱出。まだまだ深い森の中だけどいつか無事で辿り着けますように。

「なねこ、おやすみ」

 尻尾が俺の頭をひと撫でしていった。





「お兄ちゃん起きて〜。」

 つんつんと沙奈が俺をつつく。ほっぺたを突かれながら、もう一人の沙奈が肩を揺さぶる。俺はこれが夢だと理解していながらも、久しぶりの沙奈の姿と声に少し泣きそうになった。夢で俺はその光景を部屋の隅から見ている。

「「お兄ちゃん起きてよ〜。」」

 ほっぺたをつつく沙奈、肩を揺らす沙奈、俺の足に蹴りを入れる沙奈、と沙奈が3人に増えた。てか、沙奈!お兄ちゃんを足蹴にするなんてお行儀の悪いことしないの!

「「「お兄ちゃん、ほんといい加減起きてよ〜。」」」

 それぞれの沙奈の行動がどんどん激しくなる。ぺちぺちと頬を叩かれ、肩と腰を強く揺さぶられる。俺はいつの間にか、見る側ではなく起こされる側になっていた。なんだか肌寒い。そういえば俺はなんでこんなに丸まって寝ているんだろう。

「「「お兄ち*ん起きな¥と遅刻%#よ〜」」」

  沙奈の言葉が遠くなり、俺は意識が覚醒していくのを感じた。夢だけどまた沙奈と会えてよかった。俺は必ず帰るからな。待っていてくれよ。



「「「O兄?*8起Fj¥と×$%#yUo!!!」」」

 突然の野太い声に俺は驚いて飛び起きた。

 まだ薄暗い森の中、焚き火の炎に照らされて複数の人間、男たちが浮かび上がって見えた。

 俺はとにかく驚いて声が出なかった。


 人だ。


 ついに人間に出会えたのだ。

 手足が2本づつあって、目と鼻と口の数が俺と一緒。ヒューマンだ!人類だ!ホモ・サピエンスだっ!!自然とびっくり顔から笑顔へと表情が変わっていく。しかし男たちの表情はすぐれないぞ?…あっ!突然の出会いで気が回らなかったわ〜。いやいや、俺全裸じゃ〜ん(笑)丸出しじゃーんwwお見苦しいものを失礼いたしました。と、とにかく謝罪と前を隠してコミュニケーションを取らなくてはっ!笑顔ではっきりと言葉を伝えましょうっ。ご開陳の失態を取り返すのだっ。

「いやー、丸出しですいませんっ」

 と謝罪しながら股間を隠すと



 眼前に白く光る刃、俺を囲む男の1人に槍を突き付けられた。

 突然、様々な音が爆発的に鳴り出した。ほかの男たちは怯えたような顔で口々に何かを叫び出した。慌ただしく周りに声をかけているように見える。周りには男だけではない、女性の声や子供の声も聞こ出した。皆一様に怯えたような声を上げている。走り去っていく様な影が見えた。顔を背けつつも俺を見ずにはいられないと怯えた子供の顔もあった。ここで初めて、俺は周りを囲まれていたらしい事に気がついた。大勢の人間が出すざわめき、足音が聞こえる。俺は今にも突き刺さりそうな槍の穂先に視線を戻した。周りから上がる悲鳴と怒号は、俺を囲む人達が恐慌をきたしたからの様だ。しかもこの状況は俺が作り出してしまったものらしい。この混乱を、この逼迫したらしい状況を俺の行動の何かが作ってしまった。目の前で震え出した槍の穂先のその先を見る。俺に槍を突き付けている男の表情には敵意と恐怖がありありとみて取れた。俺の視線に気がつくと男は震える口を動かし俺に言った。


「&¥A@?#dsE%$£BB€+g=L」




 俺の異世界転移は言葉の習得も自力らしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ