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友達がいない主人公は彼女との青春を満喫したい  作者: ねこ永ねこ太
一章 月と猫と美少女と。
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一話 月城 月乃という者 前編

「おにいちゃんー」


「……スー、スー」


「おにーーーーちゃん?」


「…ん……スー…」


「おにい起きろ!!」


ぼふっ。


「うげぇ…!?ごほっごほっ」


ぐーすか寝ていた七斗を殴り起こすということが日課になっている彼女は、七斗の妹の奈々扇鳴美ななおうぎ なるみだ。


鳴美は兄の七斗に対しては少し気が強く、よくポニーテルを揺らしている中学生の女の子だ。着ている制服からは、張った胸が強調されて程よく見える。


この暴力的な目覚ましの儀式を始めてはや一年にもなるが、七斗は未だに三回目より前に起きたことはない。


「なるちゃんもうすこし優しくしてくれよ…」

殴られた腹をさすりながら言った。


「その呼び方キモい。さっさと学校の支度して出ないと二年生初日で遅刻だよ?」


鳴美はスカートを揺らしながら七斗の部屋のドアの前まで行き、虫ケラを見るような視線を七斗に浴びせながらそう告げると、ドアを思いっきり閉めた。


部屋には外から聞こえる鳥のさえずりと時計から奏でられる秒針の音のみが響き渡っている。

先程中学生三年生の女子から殴られた腹は筋力が全くないせいかまだジンジンしている。

ゆっくりベットから体を起こした。


「さっきのもやっぱり夢……か」


七斗が『も』と付けるのには理由があった。


二週間ほど前から全く同じ夢しか見ていないからだ。

だがしかし十四日間連続でみている夢だが、奇妙な点がある。風景は鮮明なはずなのに肝心な女の子の顔や容姿が思い出せないのだ。

女の子がいたのかどうかも記憶が薄れてあやふやになってくる。


同じような実体験をネットで目にしたことがあるためか、同じ夢を見ることに恐怖などという感情があるわけではない。


ただ、とても重要な夢で忘れてはいけないような気がしてならないのだ。


恐怖心があると言えば忘れることへの恐怖心だ。


「……」


「ま、これも考えすぎか」と七斗は立ち上がった。


「そういえば」と妹の言葉を思い出し、嫌な予感がしたので恐る恐る時計を見ると日時は四月十日の午前八時。

朝礼は八時五分には始まるので登校時間をどれだけ短縮したところで遅刻をまぬがれることはできなさそうだ。


「やばい!遅刻だ!」


急いで支度をすると部屋からドアを開け、リビングを駆け、廊下を通り過ぎて玄関まで行くと、いつもの学校靴を履き、家を飛び出た。


「え、えぇ!?ちょっと、おにい…せっかく朝食つくったのに…」


出て行く兄をリビングから驚くように見ていた鳴美はすこし悲しそうな顔をした。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


私立山風やまかぜ高校にて。


「十分遅れだぞ。お前というものは、どうして初日から遅刻なんてするんだ?」

「すみません…」


下駄箱付近。

廊下に生徒指導の先生と、悲しげに頭を下げた生徒が一人。

絶賛遅刻して叱られているのは寝癖が目立ってパッとしない顔の七斗だった。


「これには、深い理由がありまして……」


必死に誤魔化そうと、頭の中で最適な言い訳をこれでもかという回転速度で考えることを試みたがその良いともいえない頭では思いつく言葉もない。


「寝坊だな」とあっさり先生に見破られた七斗は「うぅ」と頭を下げた。


直後、コツ、コツと上靴で歩く音が廊下を響いた。

先生と七斗は視線をそちらへ移動させた。


コツ、コツ、コツ。


廊下の角から姿を現したのは、生徒会長にして学年トップの成績を収めている制服をしっかり着こなしている三年生の月城つきしろ 月乃つきのだ。


「おぉ、月乃か。丁度良かった。先生今から会議あるからな、遅刻魔のこいつを叱ってやってくれ」


月乃は七斗たちの前で止まると、七斗の方を一度見るなり、「先生。お言葉ですが今は忙しいので」と冷たく一言。


「これも生徒会長の務めだ」

俺のいうことは絶対だという雰囲気を出しながら生徒指導の先生はそう言うと、七斗と月乃の二人を置いて会議室へ向かって行ってしまった。


「……」

「……」


二人とも沈黙。

気まずい雰囲気だ。


「はぁ…」と月乃はめんどくさそうにため息をついた。


「あのー…なんかすみま…」

沈黙を奪回するべく謝罪することを試みたがそれも月乃の言葉によってかき消された。


「すみませんで済むと思うわけ?遅刻したということで学校に恥を晒したのと同時に私の時間を取ったのよ?土下座の一つもないのかしら」


「……」


そういえば噂で聞いたことがあった。この女、超絶美人生徒会長であると同時に学校一の腹黒な性格をしていて、人を寄せ付けないということで名が広まっていたのだった。

実際話したことはなく、これが初めてだったが流石にここまでであると予想しておらず、七斗は内心驚いた。


「土下座の一つもないのかしらと聞いてるの」

めんどくさそうに、黒く長い整った髪をひらりと手で流すと、こちらへ睨む視線を向けた。


「ちがうんです、あのー深い理由が…」

七斗が言いかけたところで月乃は「寝坊ね」と即答。


「あー、えっと……」

困ったなぁ、と七斗は頭を掻いた。


「はぁ…」と月乃はさらに長いため息を一つ。


「くだらない。そもそもなんでこんな話に付き合わされなきゃいけないのよ」


「……」


「先生も先生よ。なにもかも毎回生徒会長である私に押し付けるって、無責任にも程があると思うのよ」


ここで「そうですね」と生徒会長の事情をわかりきったかのように同情するのもそれはそれで無責任さがあるだろうと七斗は黙った。


「……」


「私は用事があるの。もう一生話すことはないから。あ、それと先生が来たら『月乃さんに素晴らしいお叱りを受けまして、改心いたしました』とでも伝えておくように。じゃあね」


捨てゼリフのようにそう言うと、冷たくぷいっと首と目的の方向へ向けてさっさと歩いて行った。


「冷たいなぁ。優しくなれば絶対可愛いのに」

と肩を落とし、一人つぶやきながら教室へと向かった。




新クラスは全員で三十人。

机をつけて楽しそうに雑談をしながら弁当を食べ始める者。購買に急いで向かっている者。窓の外を見るとサッカーを始めようとしている集団もいた。各々、昼休みの時間を満喫しているようだ。


人がいないことを確認するなり一番後ろ窓側の席を確保することに成功した七斗だが、今まで友達ができたことがないため、今日も今まで通り一人での昼食とした。


友達ができない理由。


それは別になにか人から嫌われるようことをしたからではないが、逆に言えば人に良いことをしたこともない。

どうも積極的にはなれない。

最近になってやっと気づいたことだが、友達ができない理由はそこにあったのだろう。


だがしかしそれを改善して友達を作ろうなんてことも全く思えなかった。

決して人と関わることが嫌いなわけではない。

友達を作って、バカなことしたり勉強会なんて開いたり気を使ったりすることが疲れるだけだ。

何より一人でいる方がよっぽど楽だろう。


そんなことを考えながら七斗は弁当の中のウィンナーに手を出した。


だがそんなぼっちな七斗にも昼休みには楽しみにしていることがある。


はっ、と大事なことを思い出したかのように食べる速度を早め、さっさと弁当を食べ終えると片手に本を一冊持ち、教室からでた。


廊下を通り、階段を降りると少し開けた場所へ出た。

渡り廊下は開放的になっていて、その先へ進むと下駄箱があるが、人が出入りする場所である下駄箱では今は中途半端な時間なので人が少ない。


七斗は上靴から靴に履き替えると下駄箱から外に出た。グラウンドを眺めながら、あまり人目のつかないコースで向かった。

一話をご覧になっていただき、ありがとうございます!

一話では、メインヒロインの月乃ちゃんが初登場し、七斗に対して冷たかったでしたが皆さんはどうでしたか?

僕は読み返していて「いやぁ、こんな感じに言われるのもアリだな」と思いました(笑)

今後の展開もだいたい考えています。内容のさらなる向上を目指していますので、少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!

目指せ毎日投稿!

以上!ねこ永ねこ太でした!!

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