なんでこんな目に合うんだ
人混みは嫌いだ。肩や手がぶつかるわ、香水とかの匂いがひどいとかで吐き気がしてくる。
(妹の頼みでなければ、こんなところくることもなかったのにな…。)
お店に入ってまだ数分もたっていないが、すでにきてしまったことへの後悔でいっぱいである。
黒くて長い前髪、上下ともに黒の服を着ており、お洒落な女性の多いこの店の雰囲気と全く合っていないのが俺、皆野木聖。
今年で36歳だけど、童顔のせいか20歳前半に見られやすい。彼女は…ていう必要ないな。
この顔・名前のせいでどれだけいやな想いをしてきたことか…。この店の雰囲気のせいか、嫌なことまで想いだしてきた。
(うう早く帰って、コロ(犬)に癒してもらおう。)
そう心の中で決意しながら、目的の物を持ってレジへと狭い店内を懸命に移動していく。
「これは先に私が目をつけてたのよ!手を離しなさい!」
といきなり店中に響きわたるような声がし、聖は思わず表情を歪めてしまった。なにやら、レジ付近で120いや130㎏あるであろうおばさんが若い細身の女性に向かって喚きたっている。
(うわ…、嫌だね。あんなおばさんとは絶対関わりたくないわ…。)
聖はその様子に知らぬが仏のごとく、そのおばさんの横を素早く通り抜けようとしたんだが、いや、ここまではちゃんと覚えているんだ。その後どうなって、俺はここにいるんだ?
今日の出来事を思い出しながら、聖は目の前に広がる白い空間に頭を抱えた。さきほど、30分程度か(時計もないため正確には分からんが)歩いてみたが、なにも誰も見つからなかった。
「しっかし、本当に物も人も何一つないところだな〜 。さっきの店に比べたら人の目線とか、匂いとかしないし、俺にとっては天国みたいなところだけど。」
あまりにもなにもないため考えることを放棄し、少し眠ろうかと考えていた時
?:「待たせたな、皆野木聖。」
と俺に名前を呼びながら、テノール声のイケメン(妹が持ってた学園ラブラブ乙女に出てくる生徒会長によく似てる…)が現れた。
聖:「えっと、どちら様でしょうか?」
神様:「君たちのいう神様っていう立場なんだが、立場上名前は言えなくてこの姿も君の記憶から借りたものなんだ。」
聖:「(だから、生徒会長の顔と似てるのか…。ていうか、なんで会長なんだよ!せめて女主人公にしてくれよ!)えっと、じゃあ、ここは天国ってことになるんですか?お、俺死んだつもりはないんですけど…」
神様:「うーん、まあ突然のことすぎて今の状況を把握しきれないだろうな。ちなみにあの店で起こったことは覚えているか?」
聖は神様に覚えているかぎりの出来事を伝えた。
神様:「そうか…、ショックになるかもしれないが、あの後の出来事を君に見せよう。」
神様が何もない空間へと手をかざすと水たまりが現れ、その中で映像が流れ始めた……
間
聖:「…………………」
神様:「そんなに落ち込むとは…。な!ほら見てみろ!すごいだろう!」
映像を見た後、1時間以上体育座りで落ち込み続ける俺をどうにか励まそうと手品?を披露してくる神様。
(…若い女性から物を奪ってた勢いのまま、どでかいおばさんが倒れてきて机の角で頭打って死んだとか、その時おばさんのく、唇が俺の唇をふさい……ウエええええええぇ。…もう嫌だ消えたい。)
神様:「…落ち込んでいるところすまないが、そろそろ本題に入らせてもらいたい。さっきの映像のとおり君は死んだわけであるが、実はお願いがあるんだ。」
聖:「………なんですか?こんな悲惨な死を迎えた俺になんのお願いがあるっていうんですか?」
ヤケになっている俺に神様は申し訳なさそうな顔で話し始めた。
神様:「君が生前、様々な人の相談に乗り、解決してきたエキスパートだと地球の神様から聞いてここに連れてきたんだ。私が守護している世界は表には出さないが、心の中で悩みを抱えているものが多く、それが世界に影響を出し始めているんだ。」
聖:「いや、俺お悩み相談のエキスパートじゃないですけど?!ただ色んな人に頼まれて(パシられて)やってただけですけど?!」
神様:「そこで君に私の世界に行ってもらい、どうにか悩みを解決して欲しい。」
聖:「俺の話を聞いてます?!そんなの無理ですって!俺人見知りのところあるし!それにどうにかってあまりにも大雑把すぎるでしょ?!」
神様:「ありがとう!行ってくれるのか!流石はお悩み相談のエキスパートだな!」
聖:「絶対聞こえてるだろ?!その申し訳なさそうなのも演技だろ?!(あまりにもツッコミどころが多すぎる!絶対やばいやつだ。)」
逃げる算段を考えながら、目の前の神様を警戒しつつ少しずつ後ずさりを始める。
神様:「(ち、めんどくせえな。地球のやつ(神様)適当に言えばOKするやつだって言ってたのによ。)申し訳ない。心苦しいが、君しかいないんだ。もちろん、君のことは調べて人見知りなのは知ってる。だから、君に適したやり方はこちらで考えたから。やり方については向こうについてから教えるからな、それじゃあ、頑張ってな〜」
聖:「ちょ…」
そう神様が畳み掛けるように話し終えると俺の意識が遠のいていった。