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35話 恋路の応援 〃

 楽しみな思いも確かにあった。夏休みを家の中でゴロゴロと過ごした私にとって、市外にあるアウトレットモールに行くのは心が踊るイベントだ。けど、その思いだけで提案した訳じゃない。

 提案した主な理由は、陽と川瀬くんの仲を接近させること。だからこそ、陽と二人っきりではなく、川瀬くんや高城くんも誘った。川瀬くんの事は1学期にて話す機会が多くあったし、それに高城くんだって誕生日パーティーで随分とお世話になったから。

 そんな、これまでがあったからこそ今の私は、1年生の時とは違い、二人を知っている。今の私なら、誕生日パーティーの時のようなリスクを侵さず、自然に陽と二人きりになるよう川瀬くんを誘導することや、高城くんが二人の邪魔しないようセーブすることが出来るかもしれない。

 

 いや、高城くんならひょっとすると私に協力してくれるかも。私だって陽の思いに気づけるのだから、私以上に昔から一緒にいた高城くんが、陽の思いに気づかない筈がない。気づいているなら、陽の片思いを焦れったく思っているはず。

 もし、高城くんの協力を得られれば、作戦は盤石のものとなる。一緒に行く4人にて、二人二組のグループを作れば自然と陽と川瀬くんを二人っきりに出来るし、それに影からサポートも出来るかもしれない。


 行ける気がする。ネズミランドにて、急接近している今の二人なら、幼馴染ではなく、男女の空気になってくれるのではないのか。

 

 と、高城くんの意思を確認せず、私はひとりでに作戦を立てていた。けど、事はそう上手くは運ばないものらしい。

 最もこの時に限って言えば、幾ら用心し、綿密に想定しても、読めるはずのない、予想外の一手だった。


ーーーーーーー


 夏休み明けのテストを終えて迎えた土曜日の朝、駅にて集合している私達。私こと四条結、そして同じ読書部の部員である愛梨陽と彼女の想い人である川瀬広、そして二人と幼馴染である高城見治、そして……


「今日はお世話になります、四条先輩っ!」


 見知った顔ぶれの中に、一人見知らぬ人物がいた。

 黒髪ショートに、中学生のような若気ある顔立ち。それでいて肩を出すオフショルダーを着ており、それが背伸びしている印象を受ける。

 可愛げのある後輩とはこう言う子を言うのだろうか。と言っても私はこの子を知らない。てか、この子は誰?


 そんな思いが、顔に出てしまったのだろう。可愛げのある子が、首を傾げたが、やがて得心が言ったのか、ポンと手を打った。


「自己紹介をしてませんでした、私は川瀬添って言います」

「川瀬…? もしかして」

「はい、川瀬広の妹ですっ」


 そこで、彼女は満面の笑みを浮かべると、隣にいたパーカー姿の川瀬君の手を組んだ。


「ちょっ、添」


 キョドる川瀬君。彼の顔は真っ赤になっていく。

 腕を組んでいる事に、慌てふためく男の子に、その反応が嬉しいのか、からかうような笑みになる女の子。

 そんな二人はまるで恋人のよう……イヤイヤ、何思っているんだ私は。そんなわけ無い。これはただの兄妹のスキンシップ、そうに決まっている。

 例え世間一般が、そんな反応をしなくとも……。


 改めて話を聞いてみると、川瀬さんが参加するという予定は無かったらしい。それもそうだ、知っていたら事前に連絡が来るはず。

 何でも、兄である川瀬君が朝でかける際、妹である川瀬さんに何処に出掛けるか尋ねられ、答えた所付いていくと、川瀬さんが即決したらしい。

 何故ついてくるつもりになったのか、川瀬さん曰く


「だって面白そうじゃないですか」


 だそう。全く何が面白そうなのか。別に川瀬君や陽、見治君の三人だけ出かける話なら分からなくもない。三人は幼馴染だし、川瀬さんにとって馴染みのあるメンツに違いない。でも、今回は私もいるのだ。私と添さんは初対面。それなのに、面白そうとは、肝が座っているのかな、この子は?


 活発で明るい性格の川瀬さん。そしてどちらかと言うと暗めの性格な川瀬君。あまり兄妹ぽくは見えない。

 実は兄妹ではないとか? そうなら分からなくも……イヤイヤまた何を考えているんだ私は。そんな事はないってもう決めたはずなのに。


 でも……やっぱりそうは思っていても、体は素直だ。どうしようもないほどに、胸がざわめく。

 この場には、二人の他に見治君も、そして陽もいる。けど、私は陽の顔を見る事が出来なかった。


ーーーーーーー


 電車での移動は、思っていたよりも長く感じられた。

 別に緊張していた訳じゃない、寧ろその逆。退屈だった。だって、陽は高城君と川瀬さんの二人と仲良く話しているんだもん。折角気づかって陽を川瀬君の隣に座らせたのに、これじゃあ無駄骨。


 陽の川瀬君への反応を楽しめる訳でもないし、陽と話せる訳でもない。全く持って暇。

 策士策に溺れるとはこんなことを言うのかなぁと、つい最近読んだ本の事を思い出す。まぁこの場合は違うのだろうけど。

 私の作戦は完璧だった。それが完璧では無くなったのは、あの子のせい。

 川瀬添。川瀬君の妹。彼女は高城君や陽の幼馴染である川瀬君の妹だけあって、二人とは顔見知り以上の仲だ。それこそ陽から良く話を聞かされた。

 最も聞かされた姿とは随分と違っていたけど。


 そんな事を思っている間にも、川瀬さんは高城君や陽と仲睦まじく話をしている。時に笑ったり大声を上げたり、本当に楽しそうに。だからこそ、余計に暇だ。

 

 横目で、じっと楽しげに会話をしている川瀬さん達を見つめる私。

 この時、私達は横一列で電車の席に座っていた。左から高城君、川瀬さん、陽、川瀬君、私といった順番で。

 そんな順番だからこそ、川瀬君と会話するのは必然だった。


「ごめんね、妹を連れてきちゃって。嫌だった?」


 川瀬さん達を横目で見る最中、私の視界を遮るように川瀬君が頭をこちら側に向けて話しかけてきた。

 声のトーンと言い、瞳を落とした表情と言い、彼が本気で謝って来ているのは明白だった。

 

「いやいや、別に良いよ。私も川瀬君の妹さんに会ってみたかったし」


 首と手を振り私は否定する。まぁ最も本音を言えば今回ではなく、別の機会で会いたかったんだけど。

 けど、川瀬君が話しかけてきてくれたのは助かった。暇だったしそれに、聞きたい事があったから。


「妹さん凄く元気が良いね。昔からあんな感じだったの?」


 何事も無いように私は川瀬君と話す。夏休み前の事を忘れて。

 そして川瀬君もまた何事もないように、私の妹絡みの質問に答えた。


「うぅん、少なくとも1学期の頃はあんな感じじゃなかったよ。普通だった」

「1学期の頃は? てことは夏休みからなの」

「うん、夏休みからなんだ。妹があんなに活発になったのは」

「ふーん、じゃあ夏休みデビューとかそんな感じなのかな」


 冗談めかした感じて私は顔を崩す。けど、川瀬君はそうじゃなかった。彼は先程よりも真剣な顔つきで、声もトーンを幾分か落として、言葉を吐いた。


「いや……違う……と、思う」

「違う? じゃあ川瀬君は妹さんが変わった理由を知っているの?」

「それは……」


『次はヤハツカ駅前〜、ヤハツカ駅前〜』


 川瀬君の言葉を遮るようにアナウンスが聞こえた。アナウンスは私達が降りる駅の名を告げていた。無論聞こえていたのは私だけじゃない。多くの乗客、高城君や陽、川瀬さん、そして川瀬君も。


「着いたね」


 たった一言、そう言うと彼は席から立ち上がった。まだ電車は駅についていないのに。

 そして、そんな川瀬君の行動を見て、私は()()考えが再び浮かび上がらないよう封じ込めるので精一杯だった。


ーーーーーーー


 駅から無料のシャトルバスに乗り換え、ようやく私達は目的地であるアウトレットモールへとたどり着いた。

 

 ヤハツカアウトレットモールは、比較的新しく出来たアウトレットモールだ。外見はお城のような堅牢とした雰囲気ではあるが、中に入るとそこは近代風のお店が立ち並ぶ。

 オシャレではあるけど、今風ではない。異国のような雰囲気がここにはあった。


 と言っても、私はここには何回も来ているから、そこまで驚かないんだけど、男連中は違うらしい。

 高城君も川瀬君も初めて来たらしく、ヤオンとは違う雰囲気に戸惑いを感じていた。


 慣れている私達女性組と慣れていない男性組。とくれば女性組が主導権を握るのは自然の流れ。

 誰が言い出したかは覚えていない。けど、青空の下、人混みを掻き分けて初めて入った店は主に女性服を取り扱うアパレルショップだった。


 店内は9月始まったばかりで未だ暑い時期だと言うのに、秋物の服を来たマネキンが立ち並ぶ。そして、そんな流れに押され隅へと追いやられた夏服。

 明暗別れた売り場。大人なら迷うかもしれない。けど高校生の私達には行く場所は決まっていた。


「この服可愛くないですか、陽先輩」

「ほんとカワイイ。買えば添ちゃん」

「えぇ良いですよ〜私には大人っぽすぎると言うか」

「もう高校一年生なんだから、それくらいいいと思うけど」

「んん〜、陽先輩がそう言うなら……買っちゃおうかな」

「それがいいよ。添ちゃんに似合うと思うもん」


 肌が隠れる服を手に、川瀬さんと陽は、仲良く談義している。

 電車の中でも、バスの中でも、そして今も。こんなに仲が良かったのだろうか、二人は。

 別に嫉妬なんかはしていない。してないけど……やっぱり川瀬さんの存在は今回に限っては邪魔だ。

 だって、現に川瀬君は陽ではなく高城君とばかり話をしている。


 その内容ときたら、高いなとか、秋物早くないとか、着づらそうとか、もっぱら否定の会話ばかり。最も服に興味のない男たちが女物ばかりの服が並ぶ店に来たのだから仕方がないだろうけど。

 けど、だからこそ、絶好の機会だったのに。異性と会話し急接近するチャンスなのだ。それも考えてアウトレットモールに行こうと誘ったのに。

 

 肝心の陽が、川瀬君ではなくその妹である川瀬さんとばかり話していては、意味がない。

 やっぱり川瀬さんの存在はイレギュラーだ。何とかして陽から離さなければ。


 そう思いながら、私は目についた服を手に取っていく。最も気になる服を見つけたからじゃない。ただ気が抜けていただけ。だから、今持っている服が何なのかも今の私には分かっていなかった。


「可愛い、買うの結」


 突然声が聞こえた。横を向くとそこには先程まで添と話していた筈の陽がいた。そんな彼女の視線は私の顔ではなく、私の手元へと向けられている。

 ようやくここで私は、自身が掴んでいた服が何なのか知った。

 手に持っていたのはクリーム色のニットのワンピース。モコモコとした今の時期には少し暑すぎる服。

 けど、可愛いと思った。買ってみても良いと思った。

 けど、それ以上に私には思うことがあった。


「陽、買ってみない」

「えっ、私?」


 素っ頓狂な声と顔になる陽。他の人なら間抜けな顔となるのだろうけど、陽がすると間抜けではなく、小動物のようなあどけない可愛さの方が勝る。

 やっぱり、陽は綺麗だ。だからこの服もきっと似合う。自然に私はそう思った。


「うん、きっと陽のほうが似合うよ。私はもう少しラフな方が良いから」

「いやいや、私もこんなに可愛いのは似合わないよ」

「そんなこと無いよ。ホラ、似合う」


 私は持っていた服を広げ彼女に重ねる。思っていた通り、清楚な彼女には、クリーム白のワンピースは良く似合っていた。それこそ似合うという言葉が陳腐に思えるくらい。

 そんな最中、空気を割ってさくように彼女、川瀬添が現れた。


「ワッ、ほんとよく似合いますよ陽先輩」


 彼女はまるで小学生みたいに、陽の後ろから現れたと思ったら、そのまま私と陽の間に割って入ってきた。

 当然ながら、そんな彼女に対して私が抱く感情は穏やかなものではない。それこそ、多分私は彼女を睨みつけていたと思う。幸いなのは彼女が陽の方を向いているため、私の視線に気づかれていない事。


 そんな私だからこそ、彼女の次の言葉には驚かされた。


「ね、兄さんもそう思うでしょ」


 そう言うと彼女は陽からも視線を外し明後日の方を向いた。けど、私は直ぐには彼女の視線の先を見ることができなかった。物理的ではなく精神的に。だから、私が彼女の視線の先を向いた時にはもう、彼はすぐ近くまで来ていた。


「陽、それ買うの?」


 何事もない顔で、川瀬さんの兄、川瀬広はやって来ると陽の顔と重ねた服を交互に何度も見ていく。そして彼が交互に見ていく毎に彼女の顔が赤くなるのが私には分かった。


「えっ、い、いや、悩んでて……」


 しどろもどろになる陽。そんな彼女とは対象的に、彼はハッキリとした口ぶりで、言葉を発した。


「似合うよ」


 たった一言、短い言葉を。


 けど、そんな彼の言葉に、陽も、そして私も気の抜けた表情となった。


「えっ、に、似合うって……」

「似合うよ、陽に。それこそ本当に。だから買っても良いと思うけど」

「ッ〜〜、か、考えてみる……」


 駄目押しをするかのように再度言葉を紡ぐ川瀬君。

 彼はそんなにハッキリと言う人だっただろうか。と、そんな疑問が浮かんだのは暫く後の事である。

 少なくともこの時の私は、彼女の表情に夢中になっていた。それこそ普段よりももっとあどけない、恋をしている彼女がそこにはいた。


 そしてそんな彼女の影に隠れるように、川瀬さんが私に視線をくれたのが分かった。彼女はわざとやったのだ。

 兄思いと言うべきなのだろうか。けど、少なくとも彼女が陽の恋心を応援してくれているのが分かったし、それに……彼女に対する私の気持ちも変わった。


 川瀬君の妹と、陽の部活仲間である私。これだけでも十分に思えるけど、欲を言うならもう一人欲しい。だって陽は告白したがらないし、それに川瀬君はそんな陽の気持ちに気づかないほど鈍感なのだから。


 だから私は店内を見渡す。幼馴染である彼を探して。

 彼は私達から少し離れた場所にいた。けど、その時の彼はいつもの、人の良い笑みをしていなかった。

 まるで私達を見守るのではなく、観察するかのように、彼の瞳は冷めていた。


ーーーーーーー


「ごめん、俺少しトイレ」

「分かったよ、見治。私達はすぐそこの雑貨屋さんに行ってるからね」

「陽、私も」

「結も? 分かった、先に行ってるからね」

「はいはーい、先行っててね」


 アパレルショップを出た私達。けど、そこで高城君がお手洗いに行くというので、私もお手洗いに行くことにした。

 勿論、これは嘘。高城君が一人になるのは願ってもない機会だから。だからこそ、わざわざ嘘をついたのに、彼はそんな私の考えなど見透かしていた。

 

「で、何か俺に用があるんだよね、四条さん」


 人の波に紛れ、陽たちが見えない程度に離れた頃、突如として前を歩いていた高城君が立ち止まると後方、私の方へと振り返ってきた。

 そんな彼の声は平坦で、だからこそ、彼が私と同じくわざと離れた事は容易に想像がついた。 


「……よく分かったね」

「分かるよ、変な視線を俺に送ってたから」

「変な!? 私そんな変だった」


 目を見開く私。動揺しているのは他人から見れば分かりやすかったに違いない。実際目の前にいる高城君は、クスクスと小さく笑っていた。


「違う違う、悪かったよ、言い過ぎた。そこまで変じゃ無かったよ。ただ、少しばかり何か話しをしたがってるように思えたからさ」


 笑みを浮かべる高城君。その純粋そうな笑みといったら、流石学校を代表するイケメンさんだ。

 普通の女子なら落ちてしまう事だろう。けど、そんな高城君を前にしても私はこれっぽっちも動揺しない。

 何だかそれが少し寂しく感じた。何でそう思ったか分からないけど。

 けど、今は私ではなく、陽の事が重要だ。だから私のことは後回し。

 私は口を開いた。


「それなら話が早い。高城君、聞いても良いかな」

「何を?」

「高城君って好きな子、いるの」


 言ったとき、高城君の眉間が僅かに動く。しかし、それも長くは続かない。高城君は直ぐに元の人の良い顔へと戻った。


「それって、誕生日の続き? いないって答えた筈だけど」


 肩をすくめる高城君。それもそうか、だって同じような事を私は川瀬君の誕生日でも聞いたんだから。けど、違う所もある。それは今は高城君一人に聞いているということ。だからこそ、私は怯まず、答えた。


「聞いた。けど、本当に高城君、好きな人はいないの」  

「……どうしてそう思う」

「それは……」


 さっき私達を見ていたから。それも冷めた……いや悲しそうな瞳をして。陽が川瀬君の言葉に照れている場面を。

 

「何となくそう思ったから」


 結局言えなかった。流石にこれ以上言うのは度がすぎると思ったから。ここ最近の出来事で私は少しばかり消極的になっているかもしれない。

 けど、そんな私の質問を受けた高城君は、嫌な顔一つしなかった。流石高城君だ。

 眉間にシワを寄せることなく、彼は口を開いた。


「何となくか。ここで、いないって答えても四条さんは信じないだろうね」

「……どうだろうね」

「無理しなくていいよ。けどね、本当に俺には好きな人はいないんだ」


 ハッキリでは無い。けど、高城君のその声には何だか重みがあった。軽い言葉とは裏腹に、ずっしりと胸にくる重みが。

 その重みが何故生まれるのか私には分からない。けど、少なくとも嘘をついているようには見えなかった。


「……本当に好きな相手はいないんだね」

「いないよ、本当に。だからこそ心配しなくていいよ」

「……何のこと?」

「とぼけなくていいよ。大方俺が陽のことを好きじゃないかと思ったんだろ」

「そこまで見透かしてたの」

「見透かしたっていうか、四条さん分かりやすいから」

「分かりやすい!? 私が」

「自覚してなかったんだ」


 軽く悪口を吐く高城君。けど、嫌な気分じゃなかった。気の合う友達と話すようなそんな気の許す事が出来た感じ。やっぱり高城君は良い人だ。

 本当になんで、陽は高城君ではなく川瀬君の方を選んだんだろう。

 そんな事を思いながら、そのまま私と高城君はお手洗いに行くことなく、陽たちのいる雑貨屋へと向かった。


 途中で、陽の恋路を応援してくれるかどうか高城君に聞くのを忘れたのを私は思い出す。けど、私はそれを良しとした。だって、高城君なら何も言わずとも、川瀬さんのように応援してくれると思ったから。

 だからこそ、私が陽たちのいる雑貨屋へと着いた際、後ろにいた筈の高城君がいつの間にか居なくなっていたことに気付いた時は少しばかり、不安になった。


 

 


 

 

 

次は高城見治視点となります。

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