第5話 超甘党の『氷王』様!
どうも、今回は「僕のヒーローアカデミア」のピースサインを聴きながら書きました!
投稿ですが、次回からは16:00~17:00の更新を考えております。
宜しくお願いします!
お嬢様の錦宮沙織を振った? 聖斗と茅咲は、2人並んでショッピングモールが隣接している地元の駅に向かう。
「それで、名物のクレープっていうのはどんなものなんだ?」
「醤油を使ってる変わったクレープだってテレビでやってたの!」
「ソフトクリームに醤油を使ってる店ならあるけどな」
「えっ!? そうなんだ! でも、都会では流行っててもここでは物珍しいからねー」
それもそうだな、と笑い合いながら歩いていると目当てのお店が目に映る。どうやらテレビの影響を受けたのは茅咲だけではないようで、様々な制服を着た女子生徒が列を作り、店内や店の前のベンチでは友人たちと談笑に浸りながら名物の醤油クレープを美味しそうに口にしている。
写真を撮って何かしらの投稿アプリに、友人と映った楽しそうな写真を投稿している女子生徒たち。聖斗からすれば何が面白いのか理解に苦しむ行為であるが、別にそれを意見するつもりもないし必要も無い。
過去に聖斗の姿が盗撮されてインターネット上に出回ったことがあったのだが、同じようなことをしてくれなければ気にしない。
加えて話し掛けてこないことも。
急かす茅咲に手を引かれ、小走りでその列に加わる2人。
待ちきれない様子の茅咲は、楽しみだ、早く食べたいとしきりに聖斗に話し掛ける。そんな彼女の話にしっかり付き合って、宥めてあげている彼は、傍から見ればラブラブのカップル。それも、飛び切りの美形カップルだ。
特に、彼氏の方。
つまり、聖斗の日本人離れしたクォーターの少年に周りの女子生徒たちは釘付けである。
「モデルでもやってるのかな!?」
「話し掛けてみなよ!」
「えぇっ!? でも、彼女がいるっぽいし……」
「2人ともレベル高いわね」
どこに行ってもこんな感じで周りからの注目を買う聖斗と茅咲。
いつまで経っても慣れない不躾な視線に、次第に聖斗の機嫌が悪くなっていくのを感知した茅咲が、フォローを入れる。
「私たち、周りから見たらどういう風に見えてるのかな?」
「ん? それは仲の良い友人同士、噂のお店に来たってだけの男女じゃないか?」
「そ、そうかもね、アハハ……ハァ……」
聖斗が自分のことを女性として意識していないというのは、普段の彼の態度を隣で見ていれば分かる。茅咲としては、是非とも聖斗とは今以上の仲になりたいものだが、親友というポジションだからこそ彼も心を許しているのだと理解している。
それを、実は私もあなたのことが好きでしたなんてことを言ってしまえば、この関係は終わってしまいそうで……。
決して、狙っているというつもりはなくても、聖斗からすればその他大勢の自分を狙う女たちの括りに入れられてもおかしくは無い。
それ程に聖斗の心は他人を寄せ付けない、閉じられた扉なのだ。
分かっていても落ち込んでしまう自分を何とか奮い立たせて、普段のテンションで改めて聖斗に接する茅咲。まだ彼が自分の好意に気付いていないのならば、彼から自分を好きになってもらえば良いのだ。
難しいことは分かり切っている。
それでもこの自分の好きという感情は騙せない。
例え、他の女の子を蹴落としてでも彼の隣に居続けたい。
そんな感情が次第に歪み、聖斗を悪い虫から守るという大義名分を得た茅咲の黒い感情が彼女を駆り立てるのだ。
そんな腹の底は、聖斗の前ではおくびにも出さない茅咲の苦労というのはかなりのものであった。
今もその感情は何とか押し殺し、聖斗に笑い掛ける自分が時々滑稽に思えてしまう時もあるが、まだ焦る時ではないのだと自分を落ち着かせる毎日なのであった。
「いらっしゃいませ! 何になさいますか?」
ようやく2人の順が来て、カウンター越しに元気な声で接客をする女性店員。その目線は聖斗に固定されていることにイラッとくる茅咲だが、聖斗は目の前のメニューに夢中になっている為にその目線には気付いていない。
一瞬女性店員に睨みを効かした茅咲は、すぐに聖斗の子供が新しいおもちゃを買い与えてもらう時のようにキラキラとした目でメニューを見つめる姿に萌えながら、2人で別々のクレープを注文する。
「醤油チョコバナナを1つ。茅咲は?」
「私は醤油クリームチーズチョコイチゴスペシャルにアンコをトッピングで!」
「何だそれ……。全部食べ切れるのか?」
「大丈夫だよ! それに、万が一食べきれなかったらしょう君に食べてもらうから!」
ラブラブカップルの会話のそれに、後ろに並ぶ女子生徒たちだけでなく、クレープを食べている女性や果ては店員さんまで羨ましそうにその様子を歯噛みしながら見ている。
見た目はクール系美男子であるのに、女性が多くの層を占めるこの店で楽しそうにクレープを注文する聖斗の姿にギャップ萌えした茅咲も含む女性たちがうっとりと見惚れる。
やがて少しはしゃぎ過ぎていたことに気付いた聖斗が、わざとらしく咳払いをすると渡されたクレープを持ってそそくさと去っていった。
(か、可愛い!!!)
何度見てもこの瞬間の幼馴染みの姿は萌える茅咲は、店員から渡されたクレープを受け取り聖斗の後を追う。
「しょう君待ってよー!」
自分たちの心を鷲掴みにしていった銀髪イケメンの突然の出現に、名前くらいは聞けば良かったと今更後悔する女性たちであったが、その神秘的な姿を見れただけでも眼福だと満足する。
翌日からそのクレープ屋の周りを張り込む女性のお客さんが増えたというのはまた別のお話し。
「やっと追いついた! 恥ずかしいのは分かるけど、女の子を置いていくのはいくらしょう君でもダメだよ!」
「す、すまん」
「ん! 分かればよろしい!」
自分を置いていった聖斗を優しく咎める茅咲。
それに対して、本当に申し訳なさそうに謝罪をする幼馴染みの姿を見て自然と柔らかな笑みが浮かんでくる。
そして、2人で並んでベンチに座り食べるクレープ。
お互いのクレープを交換して食べさせあいっこもした。
ここまで出来てまだ恋人の仲ではないということに歯痒さを覚えなくもないが、現状でも満足出来ている……はずだ。
「茅咲、クリーム付いてるぞ」
「えっ?」
そう言ってしょう君が私の頬に付いていたクリームを、人差し指ですくい取りそのまま自分の口の中に放り込む。
その姿を見て、胸がたまらなく苦しい。
どうしてそんなことをしてくれるんだ、と。
このまま自分の本能に任せて、彼に寄りかかってしまいたい。
そして、そのまま唇に……。
制御できそうに無い本能を、それでもなんとか残った理性で押さえつける茅咲。無自覚でそんなことをされてしまったこちらとしてはそんな妄想が膨らんでしまっても仕方ないだろう。
(ズルいよ)
心の中でそう愚痴る茅咲。
私にだけ見せてくれるしょう君の表情がたまらなく愛おしい。
願わくばこの先もずっとこの笑顔が私の隣で咲き続けてくれれば良いなと思う茅咲であった。
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