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【中規模クエスト】


「どうやら近くの町にゴブリンが住み着いちまったみたいでな。その討伐ってわけさ。異常繁殖してるみたいで数が多いから、狩った分だけ報酬が増えるんだぜ? 美味しいだろ?」


 おっさんがそう言ってクエストを紹介する。


「別にゴブリンは美味しくにゃいと思うが」

「いや、美味しいってそういう意味じゃなくてな……」

「にゃあフリード、どうするー?」


 テンネが振り返ってそう聞いてきた。

 うーん、ゴブリンか。まだ初心者だから不安はあるけど……正直こいつらの能力があればできるとは思うんだよな。

 報酬もゴブリン一体で500デリーとかなり良いし受ける価値はある。


「まぁ受けてみるか」

「というわけで私もこのクエスト受けるのだ。おっちゃん、情報ありがとうなのだ」

「へっへへ、良いってことよ」


 おっさんたちは何やらニヤニヤしながらそう言った。

 俺は少し疑問を浮かべながらもギルドを出て、宿をとった。


「ふぅ、今日も疲れたな……」

「これが人間の家。面白い」


 リンは部屋の壁をペタペタと触って何やら感触を確かめているようだ。

 俺は部屋を別々にしようかとも思ったんだが、2人がそれを拒否した。テンネが言うには俺は「あったかい」かららしく、リンが言うにはまだ1人は心細いかららしい。


「それにしても……ゴブリン退治か。思ったより早く討伐クエストをやることになったな」

「ゴブリンなんてぱぱっとやっつけちゃうのだ!」

「そうだな、けど用心はしないと。とりあえずはリンの装備を買おう。明日明後日とスライムのクエストをこなせばリンのもなんとか買えるな」

「マスター、さらに良い方法がある」


 リンがおもむろに俺の方を見てそう言ってきた。なんだ?


「稼ぐ方法か?」

「うん。私が回復薬を作ってポーションとしてそれを道具屋に売る」

「た、確かに……! でもお前回復薬って無限に作れるのか?」

「試してみよう」


 ということで、リンの生産回数を試すことになった。

 瓶を用意し、リンはそこに手のひらをグッと握って青い液体を垂らしていく。

 瓶が埋まり、水一杯分程度のポーションがすぐに出来た。


「まだいける」

「私はおっぱいから出した方が早いと思うんだけどにゃあ」

「それは目のやり場に困るからダメだ」


 そう言ってリンは次々に回復薬を作っていった。

 結果、わかったのは市販のポーション10個分ほどは1日に作れるらしい。それ以上は体が疲労して作れないとの事だ。

 しかし10個も作れるのはかなり大きい。ポーション1個で恐らく100デリーほどで売れるはずだ。つまり10個で1000デリー、これは大きな収入になる。


「ふぅ、疲れた。マスター、どう?」

「凄いぞリン。これでかなり楽になる」

「役に立てたなら、光栄」

「さて、と明日に備えて体を洗ったら早く寝よう」


 そうして俺たちはその日を終え、次の日からクエストとリンの作ったポーションでお金を貯めた。

 貯まったお金でまたドワーフのガンクさんの武器屋でリンの装備を買った。ガンクさんは「今度はスライムかい、すげえな」なんて驚いてた。


 そして中規模クエスト当日。集合時間10分前だが既に依頼された村には多くの冒険者が集まっていた。50人はいる。中には銅のプレートを首から下げている人もいた。つまりCランク以上の冒険者だ。


「人が、いっぱい」

「みんな稼ぐ気満々だな」


「よぉ、フリード」


 辺りを見渡していると、そんな見知った声が聞こえた。ふとそちらを振り向くと、そこには鎧に身を纏ったロイヤーとゾックの姿があった。


「ロイヤー、お前もいたのか」

「おやぁ? フリード、てめえまた新しい魔物のお友達ができたのかぁ? 今度はスライムかよ、ひゃひゃひゃ。サーカスか何かか? なぁゾック」

「あぁ、面白いやつだよフリードは」


 2人して俺のことを笑い始めた。毎回俺のことを笑っているけど、こいつら何がしたいんだろう……。


「マスター、これらは?」

「旧友だよ」

「旧友だぁ? ふざけんなよフリード、人間様とお前が友達になんかなるわけねえだろ! だいたいなんだ、その貧相な装備は!」


 ロイヤーが俺たちの装備を指差してそう言った。

 なるほど確かに彼らと俺たちの装備を比べるとだいぶ俺たちのは貧相なようだ。

 ロイヤーの鎧は重圧感があり、煌びやかな装飾もしてある。いかにも高そうだ。

 ゾックのも黒光りしていてかなりの高価な品だとわかる。


 ただ2人とも、とても動きづらそうだ。これではガンクさんが言っていた典型的な初心者の罠にハマっているように思えるが……。


「だっせぇ装備だなフリード。俺とロイヤーのを見て恥ずかしくならないのか?」

「お前ら、付加系のスキル持ってたか?」

「はぁ? 付加系なんてのじゃねえよ、俺たちはどっちも攻撃系だ。お前みたいな軟弱と一緒にするんじゃねえ」

「……そうか」


 アドバイスをしようかとも思ったが、どうせこいつらは聞くまい。

 まぁどっちが正しいかなんてわからないし放っておこう。


「それに見ろ、この剣を! これはあの【ラクノア】が打ってる【ラクノアシリーズ】の一振り、ラクノアライトだ! それに比べてなんだお前らのそのきったねえ剣は!」

「それ以上言ってやるなよロイヤー。こいつらは貧乏だからお金が無いんだよ」

「ひゃひゃひゃ! そうかそうか、まっせいぜいクエスト最中に間違えて俺たちに斬られないよう気をつけろよ!」


 そう言ってロイヤー達は去っていった。


「マスター。言い返さなくていいの?」

「いやだってめんどくさいし。それよりよくテンネは口出さなかったな……ん?」


 テンネは道端を飛ぶ蝶々を追っかけ回していた。何やってんだあいつ……まぁいいか。

 さて、そろそろクエストが始まるな。

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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