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【英雄ロードと魔物使い】

明けました


 サイド達も付いていくという事で、話がついたので、他のみんなにも事情を説明する事にした。


「サイド達を殺した犯人か。それはとっちめなきゃ駄目だにゃ!」


 テンネが拳を握りしめてそう言った。


「で、でもそんな恐ろしい人、大丈夫なんですか? フリード君も殺されちゃったりしたら……」


 とサシャが心配そうに尋ねてくる。

 そこに関しては俺も怖いんだよな。


「大丈夫、マスターは私が守る」


 いつのまにか俺の膝に座っていたリンが上目遣いで俺を見上げながらそう言った。膝がひんやりする。


「ぼ、僕だってフリード君を守りますっ」


 何故かサシャが対抗してきた。

 顔が真っ赤だ。


「ありがとう。俺もいいけどサイドとレモンも守ってな。俺もみんなを守るよ」

「して、そのルークナイトなる人物、種族は分かっておらんのか?」


 ホムラがそう言った。


「種族は、とりあえず獣人って事はわかってるみたいだけど。手配書の絵を見た限りじゃ人ベースの獣人かな」

「ふむ……それほどの悪党が種族を知られておらんとは……よっぽど隠れるのが上手いようじゃな」

「まぁなんにせよ、危険なのは間違いない。行くにしても気をつけて行かなきゃな。誰が行く?」


 みんなに尋ねると、全員が手を挙げていた。

 全員参加か、なかなか凄いことになってきたな。


「怖いけど、レモンちゃんとサイド君の力になりたいですから」


 サシャは、レモン達の方を向いてそう言った。


「サシャ姉ちゃん……なんていい人なんだ! 抱きついてもいい!?」

「それは嫌です」


 サイドの発言を一蹴するサシャだった。


「みんな、ありがとう」


 レモンが、珍しくお礼を言っていた。今は年相応の少女の顔に見える。

 さて、どうなるかわからないけど、こいつらのためにも頑張るしかないな。

 その決意を胸に、俺たちはその日を過ごした。リズは一向に起きてこなかったが、あいつがいる部屋で寝たらまた襲われそうなのでノンと一緒に寝た。

 そして次の日、リズが起きたので事情を説明し、リンとリズと共にギルドへと向かった。


「お、来てくれたか」


 ギルドには既にレナートが来ていた。


「なんだよ、今日はまた美人な人を連れてるな、彼女か?」


 彼はリズを見てそう言った。


「妻です」


 何言ってんだリズは。顔色1つ変えずに言い切ったぞこいつ。


「違う。マスターには奥さんも彼女もいない。この人はただの友達」

「あらリン。悔しいの? 悔しいのかしら? そうでしょうね、ふふふふふ」

「ぐ、ぐぬぬ……」


 なんでこんなところでやりあってんだこいつらは。


「羨ましいなフリード。モテモテか」

「レナート。こいつらは放っておいていい。話を進めよう。昨日の件だけど、受けることにした」

「そうか! よかった。じゃあそれで話を進めていこう。出発は明日にしようと思っているが、それで構わないか?」


 明日、明日か。まて、なんかあったよな。


「明日は王に会う日でしょフリード。その後ならいいんじゃない?」


 リズがそう言った。


「ああそうか王様と会う約束をしてたんだっけか。そういうわけでレナート、悪いんだけどその話が終わってからでもいいか?」

「勿論だ。それにしても王と知り合いだとは……敵わないな、恐れ入ったよ」

「俺的にはかなり緊張するんだけどな」


 王とサシで話すなんて普通ありえないだろ。

 そんなこんなでレナートに話をつけてその日は終わり、次の日になった。

 城への出発前リズは、


「フリード。わかってるわね? 姫の騎士の件」


 そう言って威圧感を出してきた。


「わ、わかってる。断るよ。俺も正直なところ受けようとは思ってなかったから」

「よろしい。じゃあ行ってらっしゃい」


 玄関前で、リズが俺に近づくと不意に口づけをしてきた。こういうことは反応が追いつかないから勘弁してほしい。


「あっ……リズ。マスターに何してるの……!」


 それを偶然見ていたらしいリンが、玄関まで歩いてきた。


「何ってちゅーよ。行ってらっしゃいのちゅー」

「マスターに変な事しないで」

「何よ。じゃああんたはしたくないの?」

「そ、それは……そんな事は……言ってない」


 リズが目を泳がせながら俺を見てきた。リンにしては珍しく恥ずかしがってるみたいだ。


「ま、あんたにはさせてあげないけどねー!」


 そう言いながら、リズは俺の頭を手で固定して見せつけるように口づけをした。

 今度は長い。柔らかくて気持ちいいけど、窒息しそうなんだが!


「マスターから……離、れ、ろぉお!」


 リンが俺たちの間に入ると、無理やりリズを引き剥がした。


「朝からうるさいねぇ。何してるのぉ?」


 ノンが目をこすりながらやってきた。


「ノン。あなたも聞いて。リズがマスターにキスをしようとするの。マスターが困ってる」

「キスぅ? 別にいいじゃんそんなのぉ」


 ノンはそう言いながら俺の方へと歩いてくると、距離をどんどん縮めていく。そして俺の目の前に来ると、不意に目をつぶって唇を俺の唇へと押し付けた。


「「なっ?」」


 リズとリンのそんな声が聞こえる。ノンは少しして唇を離すと、嬉しそうに自分の唇を手でなぞった。


「えへへ……初めてしちゃった。ノンもご主人とキスしてみたかったんだぁ」


 ノンは頬を赤らめながらそう言った。そんなノンを見た事なかったので思わず俺もドキドキしている。かわいいな。


「これは……思わぬところから伏兵ね。ノン! 私のフリードを汚したわね! 容赦しないわ!」

「ご主人はリズのものじゃないよぉ。ご主人はノンのご主人だもん」

「違う。マスターは私のマスター」


 3人がバチバチと火花を散らしているので、今のうちに家を出ることにした。帰るまでには収まってるといいな。

 というわけで俺は1人で再び城へと向かった。前回と同じく玉座の間へと入ると、そこには王とリールラの2人しかいなかった。

 王は俺を一瞥すると、不敵に笑った。


「待っていたぞ、フリード殿。よく来てくれた」

「滅相も無い」


 リールラも俺の方を見て、少し申し訳なさそうな顔をしていた。


「ごめんね、フリード。また呼んじゃって」

「いえ、有難いことです」

「もうっ。私にはそんな畏まらなくていいのに」


 そんなこと言われても変な態度とって死刑とか言われても嫌だしな。


「して、早速聞かせてもらおうか。前回の答えを。我が娘リールラの専属騎士になってくれるのかな?」


 さて、緊張で吐きそうだがここははっきりと言わないとな。

 俺はその場に片膝をつき、王を見ながら答えた。


「専属騎士は、大変有難く見に余る光栄にございます。しかし、誠に勝手ながら私はそのご期待に添える事は出来ません」


 俺がそう言うと、王は頬に手を当てて怒りもせず笑いもせずに俺をじっと見つめた。


「……ほう。理由をお聞かせ願えるかね?」

「私には守るべき仲間が既にいます。それをリールラ姫ただ1人の為に変えることが出来るほど、私の心が強くなかっただけです」

「一国の姫よりも、亜人の仲間が重要だと?」

「違います。皆大事なのです。私にとってそこに差はなく、それを1人に絞ることなどできません」


 王は俺の答えを聞くと、軽くため息をつき、一瞬目を閉じた。


「貴公の答えはよくわかった。ではこの話は終わりにしよう。リールラも、それでいいな?」

「ええ、私は元よりそうすると思ってたもの」


 リールラは、俺を見てウインクをしてそう言った。笑ってはいるが少しだけ悲しそうだ。ごめん、リールラ。


「さて、と。では次の話に入るとしようか」

「次の話、ですか」


 てっきりこの話だけで終わりかと思ってたが。


「ここから先は王族しか知り得ない情報だ。故に貴公には専属騎士になってもらうことで聞きやすい状況を作るつもりだったのだが……」

「す、すみません」

「まぁいい。貴公には娘の恩がある。元よりこの話も話すつもりではあった。『魔物使い』の話をな」

「魔物使いの話……」


 俺は少なからず動揺していた。

 いったいなんの話をするつもりだというんだ?


「王族には、代々伝わっている伝承というものが存在する。それはさまざまななものがあるわけだが……その中に、あるのだよ。魔物使いに関する伝承がね」

「なるほど……」

「フリード殿。貴公は、かの英雄ロードを知っているかね」


 王が、そう尋ねてきた。

 英雄ロード、もちろん知っている。この国にいる人間ならば誰でも知っている絵本の勇者だ。


「はい。邪悪なる魔王を打ち滅ぼした伝説の勇者、と認識しております」


 ただの人間だったはずのある少年が、魔物使いの力を得た。魔物と話せる少年を気味悪がった人々は、彼を迫害した。少年はその力の意味を知るために魔物と接していく。しかし、少年はいつしか魔物へと姿を変え、魔王として人間に襲いかかってきた。彼の力は凄まじく、近隣の国を殆ど制圧した。

 そんな中、ある一国の王子が魔王を打ち滅ぼした。その人こそ英雄ロード。


 確かそんな話だったと思うが。


「そうだ。そのロードこそ我がアイデン王国、4代目の王。400年前に存在したロード・アイデン王なのだ」

「400年前……実在していたのですか」


 半信半疑だった。寓話に近い存在だったロードは、誰かの創作だという噂もあった。だが王が言う以上存在していたんだろう。


「うむ。あの妖狐を封印したのもロード王だ」

「それは……知りませんでした」


 確かにホムラは400年前に封印されたとか言ってたな。それにロードが憎いとかも言ってたなそういえば。そういうことだったのか。興味ないから聞いてなかった。


「つまり、だ。魔王と呼ばれる存在も実在していたということなのだ。そう、魔物使いと呼ばれるスキルもな」


 王は、そう言って顎に手を当てた。


「実を言うと、私も魔王の存在に関しては疑っていた。何故ならその後400年に渡って魔物使いなどというスキルを持った者が現れなかったからだ。魔物使いが生まれたという報告を受けて兵を向かわせてみても、実際には鑑定する神官が未熟であったり、ただ迫害をするためだけの理由付けだったりしていた。だから私は魔物使いを探すのをやめた。国費の無駄だとな」

「……なるほど。だから私も今までそこまで噂が広まらなかったわけですか」


 それに関してはおかしいとは思っていたんだ。あんだけ驚いていた神官が、国にその事を報告しないのかと。

 おそらく報告はしていたんだろう。だが国はまともに取り合ってくれなかったのか。俺はあの時すぐに村を追放された。だから迫害のための理由付けと断定されて捜査されなかったんだ。


「うむ。だが貴公は存在している。つまり魔王もやはり実在したのだ。さて、ここからが本当に極秘な話になる。準備はいいかね、リールラも」

「はい」


 リールラも? ということは彼女も知らない話なのか。


「は、はい」

「先ほどの英雄ロードと魔王の話。世に伝わっているものと、我が王家に伝わっているものではまるで話が違う」

「どういう、事ですか」

「まず、魔物使いが魔王となり、ロードと戦うことになった理由が違う。物語では、魔物へと変わってしまった魔物使いが迫害した人間への復讐をするためと書かれているが、実際はもっと大きな理由がある。それは、魔物使いが愛する亜人を、人間に殺されたからだ」

「愛する亜人を……」

「それによって、魔物使いは怒りによって魔物、亜人を導く魔王となり、人間達に襲いかかったのだ」

「それは、確かに絵本とはまるで違いますね」


 まぁ絵本に悪として描かれた魔王の悲しいエピソードをそんなに盛り込むわけにはいかないだろうしな。


「そして、魔王とロードの戦いとなった。ここでも違いがある。ロードの力によって、魔王は倒されたが、実はその時、魔王はある言葉を残している。それは、『私は必ず復讐を達成する。お前達の血をもって復讐を。我が復活の兆しは新たなる魔物使いの誕生である』。そう言い残しているのだ」

「あ、新たなる魔物使いの誕生!?」


 そ、それって俺のことじゃねえか!


「そうだ。私がこんな話をしている意味がわかってきたかね。信じ難いが、400年という時を経て、魔王が復活しようとしているのかもしれないのだ。そうなってしまった場合、もはや英雄ロードのいない我々では太刀打ちできるかわからない。だから貴公にこの話をしたのだ」

「どういうことです?」

「魔王の復活がどういう形で実現するのかわからない以上、復活とは、新たなる魔物使いである貴公が魔王になる事を指している可能性もある。あらゆる可能性を考えると、やはり貴公との関係は良好に保ちたい。信頼を得るにはこちらの手札を明かす必要があるだろう。だから話をした」

「まさか! 今私がこの話を聞いたことで魔王となる道を選ぶ可能性もあるというのにですか!」

「覚悟の上だ」


 王は、淀みなくそう言った。


「なぜそこまでして?」

「今、近隣諸国とは休戦の状態ではあるが、一国が弱ればなだれ込んでくる可能性が高い。そんな時に、魔王などというものが出てきてみろ。確実にアイデン王国は終わりだ」

「なるほど……バランスが崩れると」

「うむ。つまり、フリード殿。貴公の行動次第でアイデン王国の行く先が決まると言っても過言ではない。だからこそ、最高権力である姫の専属騎士の地位を授けようとしていたのだ」


 おいおい、話がだいぶでかくなってきたぞ。


「待ってください。それでは何故私を始末するという方向にはならないのですか」


 自分で聞くのもなんだけどな。

 普通俺を殺した方が早くないか。


「貴公を殺すことが魔王復活の条件かも知れぬだろう」

「あっ」

「そうだ。何が条件かわからぬのだ。それに何より、私は罪を犯していない者を処刑する事など……出来ん」


 王は、そう言って少し眉をしかめた。

 意外だった。王はもっと冷徹な人間だと思っていたんだけど。


「話はわかりました。それで結局、私はどうすれば?」

「私から貴公に何か命じる事はない。あるのは、我が国に敵対しないで欲しいという願いだけだ。もはや貴公は我が国にとって最重要人物。望みがあれば用意しよう。何かあるかね」

「い、いえ……そんな急に言われましても」

「ふむ。まぁいつでもよい。話はこれだけだ。長々とすまなかった。もう下がってよいぞ」


 王はそう言って、少しだけ表情を崩した。意外なことに緊張していたのかもしれない。

 そうだ、あれをきこう。


「あ、あの。ひとつだけいいですか?」

「なんだ」

「前にお会いした際、魔物使いとバラされたくなければ協力しろとありましたが……まさかあれは」

「ふっ……そうだ、ハッタリだ。貴公の存在を世間にバラせるわけがない。あの時は緊急だったものでな。あれ以外助かる道が思いつかなかった。すまなかったな」

「それはいいですけど……私が断ってたらどうしてたんですか?」


 俺がそう尋ねると、王は冗談めかしてこう答えた。


「国家滅亡じゃないか?」


 この王様、どうやらなかなかの食わせ者らしい。

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
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