【便利な雑貨屋】
「それってつまり、サイドとレモンを殺した犯人が……」
リンが複雑そうな表情をしてそう言った。
「まだわからないけどな。きいてみるしかない」
俺はそう言いながら家へと帰った。
「ただいま」
「ふんふふーん♪ ……あ、お帰りなさい。フリード君」
家に帰ると、箒を持って掃除をしているサシャが出迎えてくれた。鼻歌を歌っているのを聞かれて恥ずかしいのか少し顔が赤い。
「サイドとレモンはいる?」
「ええ、二階にいると思いますよ」
「わかった。リンはリビングで待っててくれ」
「わかった」
俺はそのまま二階に上がり、
「サイド、レモン、話がある」
そう言って部屋の戸を叩いた。
「あんたから私たちに話なんて珍しいわね」 「覗きの相談? フリード兄ちゃん」
レモンとサイドがそれぞれそう言いながら出てきた。呑気だな。
「いや、割と真面目な話だ。部屋で話したい」
俺が真面目顔でそう言うと、レモンは何かを察したのか部屋へと招いた。
俺は部屋へと上がり、椅子に腰掛ける。サイドとレモンはベッドに座った。
「それで? なんなの話って」
「まず確認したいんだが、お前らは自分たちを殺した犯人について何か進展はあったか?」
「何を藪から棒に。あまり芳しくはないわね。私たちが亜人って事であまり情報をくれない人も多いし」
とレモンが言った。
「ま、僕たちも昔は亜人は怖かったから仕方ないとは思うけどね」
サイドが手を大げさに広げながらそう言った。
「そうか。じゃあ質問をしよう。サイド、お前の胸には十字の傷があったよな?」
「え? うん、あるけど。これでしょ?」
サイドは上の服を脱いだ。すると左胸のあたりにバッテンのような十字傷が刻まれている。
「その傷はいつ付いたものだ?」
「前も言ったけど、覚えてないんだ。フリード兄ちゃんに亜人にしてもらった後に気づいたんだよ」
「そうか。じゃあレモン。お前はどうだ?」
レモンにそう言うと、不意打ちの質問に彼女は驚いていた。
「どうだって何よ」
「傷だよ。お前も身体のどこかに十字の傷がないか?」
「……ある、けど」
「どこだ!? どこにある」
俺はそう言って立ち上がり、レモンの服を脱がせようとしたが、レモンに思い切り蹴りを食らってしまった。
「セクハラ! ロリコン!」
「ご、ごめん」
「フリード兄ちゃんは……年齢の壁なんて気にしないんだね。かっけえ」
サイドに誤解を与えている気がする。というかこいつの場合、誤解しか与えてない気がするけど。
「わけわかんないんだけど、さっきからなんなの?」
「重要な事なんだ。その傷は、サイドと似たような傷か?」
「ええ。背中に十字の傷があるわ。けど私もどこでこんな傷付いたのかわからない。少なくとも死ぬ前にはついてなかったもの。というかなんで私にも傷があるってわかったの?」
「そうか……なるほど」
「そろそろ教えてよ。どういうことか」
「ああ、実はな――」
俺はそこから事の顛末を話した。2人とも驚きながら聞いていた。
話し終えると、2人はすぐに真面目な顔に変わった。
「つまり、私たちのこの傷は、そのルークナイトとかいう殺人犯がつけてる傷と酷似してるってこと?」
「手配書を見た限りではな」
「だとしたら、この傷は私たちを殺した後に、つけた傷って事になるわ。許せない!」
レモンは拳を握りしめた。
「でも、犯人がそいつだとして、なんで僕たちの事件はそいつが容疑者に出てこなかったんだろう?」
と、サイドが言った。
「おそらくだけど、手配書にはルークナイトの事件が初めて発見されたのが9年前と書かれてた。お前らの事件は10年前。だからわからなかったんじゃないか?」
「確かに。僕らの遺体は損壊が酷くてよくわからなかったというし。関連性が見つけられなかったのかも」
損壊が酷かったのか。嫌な情報だ。
「犯人は獣人だって事だが、それは一致してるのか?」
「わからないわ。あの時私たちは寝てたところを襲われたし、確か犯人はフードを被ってたもの。ただ、あの愉しそうに私たちを刺す犯人の目は忘れらない」
レモンは震えていた。
「わかった。じゃあ俺はクエストを受けようと思う」
「それって僕たちのために?」
「そうだよ。仲間だろ、当たり前だ」
「僕も行く!」
サイドは立ち上がってそう言った。
「も、もちろん私だって行くわ! 行かなきゃいけないもの!」
レモンも同じく立ち上がる。
意思を持った目だ。ここから考えを変えることはないだろうな。
「けどお前ら、昼間は動けないんじゃ?」
俺がそう言うと、2人とも困った顔をした。やっぱりそうか。
「日光が眩しいんだよね。なんかこう、防ぐものとかあれば」
「日傘とかあればマシにはなるんでしょうけど、あれもまだ不十分なのよね」
日傘か……ん? 日傘?
そういえば!
「俺、いいこと思いついた! ちょっと出かけてくる。待っててくれ!」
「「え?」」
俺はダッシュで階段を降りて、家から出るとそのまま目的地へと走った。
俺が着いたのは魔人用の日用雑貨店。前にノンの毛刈りをするために寄った店だ。
「らっしゃい」
店に入るとウルフ系の店員さんがそう言った。
俺は記憶を頼りに店内をうろつき、目的のブツを発見した。
それは、『吸血鬼族向け日除け傘』だ。以前リズが発見したのを覚えていたのだ。
特殊な素材でできているため、普通より光を遮断するという優れものだ。
「これください」
「あいよ。2つで5000デリーな」
割と高めな傘を買い、そのまま家へと帰った。
「ただいま!」
「ルルル〜ラン♪ あ……早いですねフリード君」
まだ掃除をしていたらしいサシャ。また恥ずかしそうな顔をしているが、構ってられないので無視して二階に向かった。
そして2人の前に傘を置く。
「これは?」
「バンパイヤ用の傘らしい。これなら日もかなり遮断できるはずだ」
「なるほど、これなら大丈夫そうね」
「さて、サイド、レモン、どうする。付いてくるか?」
「「勿論……付いていく!!」」
双子らしい息のあった返事だった。




