【試着室】
「この子の帽子と、こっちは服を探しにきたんだ」
俺はサシャとリズを紹介しながらそう言った。
「なるほど。こちらの子は単眼種ですね。目が少し隠れる帽子とかですかね。けどあなたは、人間では?」
リズに向かってスバメさんはそういった。するとリズは、頭を自分で叩くと、そこからツノを出した。部分的に出すこともできるのか。
「なるほど、変身できる種族なんですね。ということは、翼や尻尾も生えたりします?」
「ええ。生えるわ」
「なるほど。じゃあご案内しますー」
というわけで俺はまた服が決まるまで椅子に座って待っていることになった。
「フリードー」
少し待っていると、店の奥からリズの声がした。呼ばれたので行ってみると、カーテンに包まれた試着室から顔だけだすリズの姿があった。サシャはといえば、向こうの方でスバメさんと何やら喋っている。
「何してんだお前」
「うーん、こんな服どうかなーって思って。今着てるんだけど、ちょっとこっち来てみて」
「いやその場で見せればいいだろ」
「まぁまぁいいから」
俺は釈然としないまま、試着室へと近づいていく。
「ここら辺でいいか――ってうぉ!?」
近くまで行った途端、リズが俺の手を引っ張って試着室の中へと引き込んだ。
「な、何すんだよ……ってお前なんだその格好!?」
ほぼ密着しているような状況で、リズの方を見ると、ほとんど裸のような格好をしていた。
黒いぴちぴちの薄い下着のようなものを着ているだけだ。それもほとんど見えちゃいけないところが見えそうなくらい際どい。こんな服どこに置いてあったんだよ。
「んー? これだったら、ほら……こういう風に尻尾とか出しやすいなぁって」
しゅるるると尻尾を出現させたリズは、その尻尾を俺の腰へと巻きつけた。そしてそのまま尻尾で俺のことを引っ張って、自身の体へと密着させた。
ただでさえ狭いこの試着室の中で、リズの甘い匂いが俺の中へと広がった。ま、まずい……理性的に。
「興奮してるの……? フリード」
「うっ、うるさい……」
「はぁはぁ……私はしてるよ。フリードの匂い、ヤバイ……」
「おまっ、何して」
リズは俺の胸のあたりで息を荒げると、何故か股を俺の太ももに擦り付けてきた。
こいつ、こんなところで何してんだ。
「やばっイッ……」
びくんびくんとリズが痙攣して、恍惚とした表情で俺を見た。
「リズ、お前……まさか」
「ふーっ、ふーっ……ふふ。フリードも準備万端じゃん。このまま、最後まで、シようよ」
リズは腰に巻きつけていた尻尾を、俺の下半身へと動かしてそう言った。
そりゃ万端にもなるよ、当たり前だ。
「落ち着け、お前も落ち着け俺も落ち着く。とりあえずここはまずい」
「はぁ、はぁ。ごちゃごちゃ、うるさいなぁ。あんたは黙って私に犯されてれば――」
「フリード君? どこですか……?」
外からサシャの声がした。
これはチャンスだ。こんなところでなんかやらかしたら二度とこの店には来れない。既にやらかしてるような気もするが。
俺は素早くリズの尻尾をどかして、試着室から抜け出した。空気が冷たい。
「サ、サシャ、ここだよ」
「あれ? なんで僕の後ろに? おかしいですね、さっきまで……。まぁいっか。それで……あ、あの、こんな帽子はどうですか?」
サシャが被っていたのはトップが平らで円形につばが広がる白い帽子だった。大きめのつばのお陰で確かに目が少し隠れている。
控えめな感じがよくサシャと合ってるな。
「お、おお。似合ってるよ」
「そ、そうですかね。よかった。こういう帽子、サファリハットって言うらしいです」
「彼女、スタイルがいいのでなんでも似合いますよーフリードさん!」
スバメさんがサシャを激推ししている。
リズの失態がばれないうちにさっさと買ってしまおう。
「じゃ、それ買おうそうしよう、な。サシャ」
「は、はい。ありがとうございます」
「私もこれ買うわ」
試着室からリズが出てきた。一瞬焦ったが元の服装だったので安心だ。彼女は手に持った先ほどの下着? と、試着室前に置いてあった大量の服を指差してそう言った。どうやら買うものは決めてあったらしい。
「5万デリーになりまーす」
こうして、結局帰り際にスバメさんの満面の笑みをまた見ることになった。
あぁ、昨日稼いだクエスト報酬が消えた。
そんな事を思いつつ、店内で寝ていたノンを叩き起こして、俺たちは店から出た。
思ったより荷物が多かったので、一度家に帰ってそれらを置いてから、俺たちは次の目的地である魔人専用の日用雑貨が売っている店へと向かった。
「らっしゃい」
店員は、狼系系の顔と体を持った男性だった。耳が少しとんがっていて、鼻も犬に近い。青い毛が全身を覆っている。そして二足歩行だが、足は獣に近いようだ。
この人は魔物の特性が強いタイプの魔人のようだ。リンとかもそっちのタイプだ。
「早く毛を刈りたいなぁ。るんるん」
店に入って謎にテンションを上げるノン。
さて、ノンのためにもさっさと探そう。




