【ハートフルデイズ】
色々あった1日だったが、なんとかやり過ごすことに成功した。まさかリズが魔人だったというのは衝撃だけど。
夜になって、リズが俺と一緒の部屋で寝ると言い出したが、リンが猛反発した。元々テンネが勝手に俺のベッドで寝てたりするけど、どうしてもリズが寝たいらしいのでとりあえず許可した。
監視役でリンも俺の部屋で寝ることになったが、そこまでベッドが巨大でもないので、俺は下に布団を敷いて寝た。結局テンネは俺の方に温かさを求めて潜り込んでくるので、結果的にリズとリンが同じベッドで寝ることになっていた。なんだこれは。
次の日、朝になってリビングで朝ごはんを食べようとしたら、既にリズが起きて何か料理をしていた。
リズは羽とかツノがなくなっていた。どうやらしまえるらしいな。
「あ、おはようフリード。あんたこの家全然食べ物ないのね。後で買って来なきゃ」
「リズ、お前料理できたのか」
「何よそれ。人並みの事は出来るわよ」
そう言って、リズはできた料理を机に並べていく。匂いにつられてテンネ達も起きてきた。
「おぉ!? なんだこれは、凄いのだ! リズがやったのか?」
「そうよ。ゆっくり食べてね」
「もちろんゆっくり食べもぐもぐもぐもぐ美味っ! これ凄い美味しいのだ!!」
食べるの早いよ。
テンネは尻尾をピーンと立てて嬉しそうに料理を食べていた。
「本当だ。とても美味しいです。僕もこういう料理作ってみたいな」
「あら、サシャだったかしら? 教えてあげようか?」
「え? い、いいんですか?」
「もちろん」
どうやらリズもみんなとは仲良くできるっぽいな。これなら心配はいらないか。
唯一リンだけ料理を見てワナワナと震えているのは見てて面白いけど。
「くっ……美味しい」
リンも納得の美味しさらしい。
さて、俺も食べるか。おっ、めちゃめちゃ美味いな。これは確かに凄い。
「ねぇフリード。ロイヤー達って今、何してるの?」
「ん? あぁ、あいつらは……犯罪を犯して今牢屋にいるよ」
「えぇ? 何してんのよあいつら。本当どうしようもないわね」
「もぐもぐ……あ、フリード。その事だけど、昨日ヴィーナスが来て、そのロイヤーって奴が脱走したって言ってたぞ」
テンネが急にそう言ってきた。
「脱走? あの牢屋からどうやって……つーかまた罪を重ねてんのかよ。あいつらどうするつもりなんだ」
「まぁ私はロイヤーとゾックとか別にそこまで興味ないけどね。ロイヤーは昔から私に気があるのバレバレだったし」
「えっ、そうだったの?」
「あれ? 気づいてなかった? そうよ、だからロイヤーの奴、あんたを追い出して自分も冒険者になるって村を出る時に、私に告白してきたのよ」
マジかよ。ロイヤーがリズのこと好きだったとは……全く気づかなかったぜ。
「それでお前はなんて言ったんだ?」
「あれ、気になる? 気になっちゃう? ふふ」
俺のことを指で突きながら、楽しそうにそうきいてくるリズ。
くっ、なんだか遊ばれてる感がすごい。
「あ、ああ……気になるよ」
「安心して。こっぴどく振ったわ。あんたに魅力は感じないってね」
「うぁ、それは心にきそうだな」
「まぁ期待させても悪いしね。けどそっか。あいつら今そんなことになってんだ」
「脱走ね。まぁすぐに捕まるだろ。それより今日は何しようか」
「まずは買い物よ。色々と必要なものがあるわ。食材とか服とか。昨日の変身で服と破れたし」
なるほど。じゃあ今日はそれの買い物をするか。
「なんか買いたいものある人ー」
俺がそうみんなに尋ねると、おずおずとサシャが手を挙げた。
「あ、あの僕。帽子が欲しいです」
「帽子?」
「はい。街を歩くとき、みんなの視線が怖いので……帽子でそれを隠したくて」
「そっか。じゃあ買おう。後は誰かいる?」
「ノンはそろそろ毛を刈りたーい」
ノンが手を挙げてそう言った。
「毛? 毛ってお前の体毛?」
「そうだよぉ。シープは定期的に毛を刈らないと駄目なんだよ。ずっと毛が伸びちゃうからねぇ」
「じゃあどうすりゃいいんだ?」
「それ専用のハサミとかを買って毛を切ってもらうしかないなぁ。魔物の時は、オークの雌とかに毛をあげる代わりにやってもらってたの。刃物で」
オークの雌か。なるほど毛と交換で生き残ってきたのか。確かスリープシープの肉は不味いらしいからな。オークも食べようとはしなかったわけか。
「よし、じゃあそれも買おう。後は……なさそうだな。とりあえずそれを買いに行こうか。他のみんなは家で待っててくれ」
そういうわけで料理も食べ終えて、満足した俺たちは買い物をしに出かけた。
食材を買うのは最後にしようということで、まずはリズとサシャの服と帽子を買うことにした。来たのは前回と同じ鳥人の服屋だ。ちょいちょいお世話になっている。
「いらっしゃいませぇ」
またお婆さんが会計場所にいた。これやめたほうがいいと思うんだが。孫のスバメさんを呼んで欲しいんだが。嫌な予感がするし。
「あり? あんたは確か……ブリーフさんでしたっけ?」
「いえ違いますね。フリードです」
「ああ、そうでした。ドリフさんでした」
「遠くなりましたね」
「そんで、ドドリアさん。今日は何をお探しで?」
「えーと、服と帽子です」
「あんだって?」
「……服と、帽子です!」
「あんだってぇ?」
「服と!! 帽子――ぶふぅ!」
「うるっさいわ! ボケェ!」
案の定羽で頬を叩かれた。だから嫌だって言ったじゃん。
そうこうしていると、店の奥から孫のスバメさんが出てきた。
「もうお婆ちゃん。また叩いて! あら、フリードさんじゃないですか。今日もまた違う魔人の方連れて……モテモテですねぇ?」
スバメさんは羽で口元を押さえながらニヤニヤと笑っていた。そんなことよりお婆ちゃんに店を任せないで欲しい。




