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【アップグレード】


 湿地帯に入ってから時間が経ったが、特にポイズンニュートと遭うこともない。

 いったいどこにいるんだろうか。地面がぬかるんでるせいで、いつもより体力を使ってる気がする。


「あ……マスター、あれ」


 リンが指差した方向にはひときわ大きい沼があった。そしてよく見ると、巨大な波がうねっている。

 そして『そいつ』は俺たちが来たことを感づいたかのように、沼からその巨体を現した。

 巨大な四足歩行の両生類。ぬめぬめとしたテカリを放つ肌。青と黒の縞模様があるその巨大なイモリは、全長3メートルはある魔物だ。


「マスター、あれがポイズンニュート」

「うぅ……僕ああいうぬめぬめしてそうなの嫌いなんですけど……」

「サイクロプスの癖に情けないのう。シャキッとせい」

「ひぇっ、ご、ごめんなさい」


 サシャがホムラに怒られている。

 ホムラは俺の背中にいる癖になんでこんな偉そうなんだ。


「クシュルルルルル」


 ポイズンニュートは、俺たちの方を見て獲物を見るかのように首を小刻みに動かしている。


「とりあえず、ホムラは降りてくれ」

「情けないのう。妾をおぶさったままで倒すくらいの気概はお主にはないのか?」

「ない。降りろ」

「……仕方ないの」


 ホムラはなるべく泥がない地面に降ろしてあげた。

 さて、俺としてはいろいろと戦う方法はある。まずはこの前試した『憑依』。試してわかったが、憑依は10分間ほど状態を持続できる。その後は勝手に解除される。憑依は強いが、その分かなり体力と魔力を持っていかれるってことも判明した。


 だからなるべく憑依はここぞって時にだけ使っていきたい。次に憑依を使えるのも1時間くらいのインターバルが必要っぽいしな。

 というわけで、とりあえずこいつにはまず素の状態で立ち向かってみよう。


「行くぞ、リン、サシャ」

「うん」

「は、はい」


 俺たちはポイズンニュートに向かって攻撃を始めた。



 ♦︎


 フリードたちがクエストに行っている一方で、待機しているテンネ達の方にも訪問者が来ていた。


「こんちはー」


 玄関を叩く音が聞こえたので、テンネが歩いて行き扉を開けた。するとそこにはヴィーナスが立っていた。


「お前は、ヴィーナスか。どうしたのだ?」

「テンネちゃん。いやー、ちょっとねフリードちゃんは留守?」

「あいつは出かけてるぞ。とりあえず上がるにゃ」

「いいの?」

「いいにゃいいにゃ。フリードがいない今、この家のボスは私なのだ!」

「そっかー、じゃお邪魔しまーすっ」


 ヴィーナスは、慣れた様子でリビングまで歩いて行った。彼女は辺りを見渡す。

 リビングにはサイドとレモンが座っていて、ノンがソファで昼寝していた。


「あら、あんたは確かヴィーナスさんだったかしら?」

「こんちはー、レモンちゃん!」


 ヴィーナスが来たことに気づいたレモンが彼女に近づいた。


「ヴィーナスさんは何しにきたの?」

「実はね、捕まえて牢屋に入れておいたロイヤーとゾックが脱獄しちゃったんだよねー」

「えーと……ロイヤーとゾックていうのは……?」


 レモンが頭をひねっていると、テンネが閃いた様子で手を叩いた。


「あのムカつく奴らだにゃ。フリードの昔の友達なのだ」

「そう、その2人で合ってるよ。で、今うちら騎士団は逃げた2人を必死で探してるってわけ」

「ふーん、にゃんで逃げられたのだ?」


 テンネがそう尋ねると、ヴィーナスは眉を八の字に曲げてため息を吐いた。


「それが結構謎なんだよねー。看守をやってた奴が殺されてるのも謎だし。その先の門兵達も殺されてて、そこから先に目撃者がいないのも謎なんだよねー」

「ふーん、でもそれってあれじゃにゃいか? あのほら、空間がぐにゃーんって曲がる魔法。あれ使ったんじゃにゃいのか? あの金髪の笑顔が気持ち悪い奴とか」


 テンネの発言に、ヴィーナスは目を見開いた。


「そ、そ、それだ! それっしょ、テンネちゃん! そうか、空間魔法か! テンネちゃん凄い! 天才っしょ!」


 ヴィーナスはテンネの手を握って嬉しそうにそう言った。テンネは最初ぽかんとしていたが、褒められてると気づいたので、腰に手を当てて威張り始めた。


「当たり前なのだ! 私こそが天才の猫、でテンネだぞ!」

「え? 前は天使のような猫、じゃなかったっけ」

「アップグレードしたのだ!」

「そっかー! 凄いやテンネちゃん!」


 テンネは尻尾を最大限にぴょこぴょこ動かして嬉しさを表現していた。


「何やってんだか……」


 そんな風にきゃっきゃしてる2人をレモンは冷めた目で見ていた。

 そんな時、再び玄関の扉を誰かが叩いた。


「あれ? またお客さんなのだ」

「やべ、うちが仕事サボってんのバレたかなー?」


 テンネが玄関まで行き、扉を開けると、そこには肩まで伸ばしたピンクの髪色を持つ、人間の女性が立っていた。


「誰にゃ?」


 テンネがそう尋ねると、女性は少し緊張が見えるがしっかりとした口調で答えた。


「リズです。リズ・ソーンヒルです」

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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