【狐の尻尾】
どれどれ。サシャが出した緑の炎の板を覗き込んだ。
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名:フリード・ニルバーナ
種族:人間
体力:C
魔力:B
攻撃力:C
守備力:D
知力:B
精神力:D
器用さ:E
俊敏性:E
運:S
スキル
『魔物使い』『リライフ』『鑑定』『憑依』
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ずっと魔物娘たちの能力見てたから自分のステータスの低さに驚くな。
え、魔物使いとリライフって別のスキルだったの?
『魔物使い』
魔物、魔人が好む匂いや雰囲気が出る体質。魔族から信頼を得やすい。
『リライフ』
対象の魔物を魔人へと変化させる。変化させられた魔物は主に逆らえない。使用条件は、対象の残存魔力を上回っていること。一度発動すると一定時間使えない。
『鑑定』
自身が従属させた魔人のみ能力を可視化することができる。
『憑依』
従属させた魔人の力を借り、ステータス、スキルを一時的に上昇させる。使用条件は、従属させた魔人の信頼度がSに達していること。発動時対象の体に手を触れていること。一度発動すると解除後は一定時間使えない。
「憑依ってこれか!」
信頼度がSじゃないと使えないのか。でも確かみんな今までAだったよな。
そう思ってノンを鑑定してみた。すると彼女の信頼度の部分がいつの間にやらSになっていた。
「おお、ノンの俺への信頼度が上がっている!」
「えー? なぁに? 信頼度?」
ノンはわけわからないと言った様子だ。
俺はとりあえず憑依のスキルについて3人に説明した。
「なるほどぉ。ノンはご主人のこと大好きだからねぇ。それはもう、上がるよ〜」
「そ、そうか。ならとりあえずノンでスキルを試してみていいか?」
「いいよー」
よ、よし、ならやってみるか。
ノンの肩に手を置いて……。
「『憑依』」
そう唱えると、俺とノンの体が同時に光り出した。そして俺の体にも異変が起こる。全身がムズムズする。
光が収まった時に、体を触ってみると、頭にはねじれたツノが2本生え、腕周りにはシープ独特の毛が生えていた。
「わぁ、ご主人。一段と格好よくなったねぇ」
ノンが嬉しそうに俺に抱きついてきた。
ほ、本当に羊人としての特性を引き継いでるのか。
ってことは、つまり……。
「『アイス』」
俺が近くの木に向かってそう唱えると、木の周りに氷が出現した。
凄い。スキルも使える。それに体が軽い。
くっつくノンを引き剥がして、剣を振り回してみた。今までよりも明らからに速度と攻撃力が上がっている。
あ、そうだ。
「サシャ、この状態で鑑定してみてくれないか」
「わかりました。『鑑定』」
サシャが俺に触れて、鑑定を発動させる。
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名:フリード・ニルバーナ
種族:人間
体力:S
魔力:A
攻撃力:S
守備力:A
知力:B
精神力:B
器用さ:A
俊敏性:D
運:S
スキル
『魔物使い』『リライフ』『鑑定』『憑依』『眠り姫』『呑気』『アイス』
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な、なんじゃこの化け物みたいなステータスは。ノンのいいとこ取りをしている。
「これは……凄まじいのぅ。一線級の冒険者と同じレベルのステータスではないか」
ホムラが覗き込んでくるとそう言った。
しかしその通りだ。こんなのは冒険者で言えばAか少なくともBランク相当だ。まさか憑依がここまで凄いものだとは……。
何かデメリットがあるんじゃないか? まぁでも今考えても仕方ないし、とりあえず眠いし寝とくか。
そう思って、俺は木に寄りかかって目を閉じた。
「あー、ノンも寝るぅ」
ノンも近寄ってきて俺の肩に頭を乗せると目を閉じた。
「おい、何しとるんじゃフリード!」
ホムラが俺の頬をぺちんと叩いた。
「なんだよ、寝ようとしてたのに」
「なんで寝るんじゃ! おかしかろうが」
「なんでって眠いから――はっ!?」
ま、まさかこれが羊人の特性!?
「あ、危ないところだった……」
「いや貴様、完全に寝る気じゃったぞ」
「ノンの気持ちが凄いわかったよ。なんかとりあえず眠くなる」
「全く、もう用事は済んだじゃろ。帰るぞ」
「そうだな。サシャ、俺たちについてきてくれるか?」
「は、はい。勿論」
サシャは何やら最後に猪達にお別れが言いたいとの事で探しに行ったが、見つからなかったようで、少し半泣きで帰ってきた。
まぁあんなでかかった子が俺と身長同じくらいに縮んでるからな、猪にとったら別人だろう。
そして、俺たちは馬車へと乗って帰路についた。馬車の中では、疲れたのかホムラがスヤスヤと寝ている。まぁこいつ疲れるような事何もしてないけど。
そしてホムラの9本ある尻尾を、枕がわりにしてノンが寝ていた。とても気持ち良さそうだ。
「うーん、うーん、尻尾が潰され……はっ、なんじゃ貴様。何故妾の尻尾で寝ておる!」
ホムラが急に起きると、ノンの頭を叩いた。
「だってぇ、気持ち良さそうなんだもん」
「たわけ。妾の高貴な尻尾で寝るなどあり得ん」
「わかったよぉ。そしたらホムラもノンの毛を枕にしていいからぁ」
そう言って、ノンは自身の腰回りをポンポンと叩いた。つまりそこで寝ろという事か。ほむらは渋々といった様子でそこに頭を乗せる。
「ふん、そんなところで寝たからと言って気持ちいいわけが……ほぉ、こ、これは……なるほど。ふむ……まぁよかろう」
一瞬で陥落した。意思弱すぎだろ。
その後俺たちは家へと戻った。みんなにもサシャを紹介して、わいわい盛り上がってある。
まだ外は明るく、午後3時くらいだ。そんな時、家を誰かが訪ねてきた。
誰だ? 不幸の家に来るなんて珍しいな。
そう思って扉を開けると、そこにはギルド受付嬢のエリナさんがいた。
「こ、こんにちは。あの……約束の霊媒師の方連れてきました」
約束の霊媒師? ああそういえばそんな約束を前にしたっけ。不幸の家が心配だとかなんとか。
そう言って彼女の後ろにいたのは、小太りで首にじゃらじゃらと首飾りをつけているどこからどう見ても胡散臭い中年の男だった。
「どうも。霊媒師のウーサンです」
名前まで胡散臭いな……。




