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【ドワーフの武器屋】


 ロイヤー達がどこかに行ってしまったので、俺らはそのまま薬草採取のクエストを続けた。


「よし、これで終わりだ」

「ふにゃあ、疲れた」


 採取も終わったので、俺たちはギルドで報酬を受け取った。

 割と懐もあったかくなってきた。


「よし、ちゃんとした装備を買おう」


 俺はそのまま武具屋を探すことにした。


「どこの武器屋にしようかな。あんま高くても買えないしな」

「あそことかどうにゃ?」


 テンネが指差したのは路地裏にひっそりと構えられた看板だった。看板には無骨に『武器屋→』と書かれている。


「よくあんなとこ見つけたな」

「安そうなのだ」

「まぁ、たしかに。けど大丈夫かな。怪しい店だったりしないよな?」


 そう思いつつも俺は看板に従いその店の扉を開ける。


「ん……? 人間と猫人ワーキャットの組み合わせとは珍しいな。いらっしゃい」


 髭を生やしたいかにもなおっさんがカウンター越しに座っていた。顔の老け方と反して異様に小さい見た目はドワーフであることを表している。

 ドワーフか、初めて見た。確か武器とか作るのが得意とは聞いてたけど。


「えーと初心者向けの武器を買いに来たんですが」

「ほぅ、初心者でこんなボロっちい店を選ぶとはよっぽどの物好きだな」

「ボロっちいから安い武器が買えると思って来たのだ!」


 おいテンネ。お前には隠すという認識はないのか。これじゃ店の人が怒るだろ。

 恐る恐る店主を見ると、最初はぽかんとしていたが少しして大きく口を開いて笑い始めた。


「はっはっは。ボロいから安いか。まぁそうだわなぁ! 面白え。お前さんら金はどんくらい持ってんだ?」


 な、なんかよくわからないが怒られずにすんだな。


「えーと、1万デリーはあります」

「そうか、だったらまぁ最低限の装備なら揃えられるな。いいだろう、俺が選んでやるよ」


 そう言っておじさんはカウンターから出てくると、店の中を案内してくれた。


「まずは防具だな。鎧だ。お前らいい防具ってのはなんだと思う」

「そりゃ硬さにゃ! 硬いほうがいいに決まってるにゃ!」

「そう、初心者はそう思うのさ。そこがまず最初に陥る罠って奴だ」

「罠?」

「ああ、例えばこれ、お前着てみろ」


 そう言っておじさんが指差したのはゴツゴツとした装飾をした明らかに今の俺が買えるような鎧ではなかった。

 言われるがまま俺は鎧を身に纏う。


「どうだ、着てみて」

「お、重いです」

「だろう。そんな状況でお前動けるか?」

「む、無理ですね」

「そういうことだ、もう脱いでいいぞ。結局圧倒的に硬さを求めて使った鎧は普通重くて動けやしないんだよ」

「じゃあなんで売ってるのだ?」

「つまりこいつは『スキル付与』前提の鎧なんだ。自身や仲間で重量を軽くするスキル等を駆使して使うもんなんだよ」


 なるほど。仲間も大したスキルも持ってない初心者がこんな高いの買っても無駄なのか。


「ということはいい鎧っていうのは硬くて軽い鎧のことなんですね」

「そういうことだ。だから俺がお前らに薦めるのはこれだ」


 そう言って指差したのは胸当、腰当、肩当、肘当、膝当て、臑当、籠手だけの鎧だった。


「こいつは必要最低限のところだけを守るようにできてる。一回着てみろ」


 言われるまま着ていく。


「どうだ」

「か、軽いですね。さっきのを着た後だと余計軽いです」

「そういう事だ。初心者のうちはダンジョンに高く重い装備を着てって動けずに死んでるやつがごまんといやがる。それくらいの重さがちょうどいいのさ」

「そうですね。これを買わせていただきます」

「おう、わかった。じゃあ次は武器だな。これに関しては、初心者のうちは一番安い剣を使え」


 商売人としてはどうなんだろうと思えるようなセリフを吐くおじさんだった。


「にゃんでだ? 高いほうが切れ味がいいに決まってるのだ」

「そりゃそうだ高いほうがいい剣さ。だけどな、初心者がいい剣持ってても意味ねーのさ。理由としては2つある。1つ目は、まず彼らはダンジョンから剣を持って帰れない事が多いからだ。強い魔物に遭遇したり、中には初心者狩りと称した悪質な奴等に盗られる事もあるからな」


 そのままおじさんは続ける。


「そして2つ目は、必要ないんだ、そんないい剣。初心者でそんな切れ味を披露する機会があると思うか? そう、無いのさ。だったら安い剣で他に金を使ったほうがいい」

「なるほど、確かにその通りですね」

「だから最初は扱いやすく安い、この片手剣を買っておけ」


 その剣は無骨で何の装飾もなく、俺の肘から手ほどの長さを持つ短剣だった。


「おっちゃん話がうまいのだ! 思わず買いたくにゃる」

「そうか? けどおっちゃん言うな、俺はガンクってんだ。これでもまだ62歳だぞ」


 それはおっちゃんなのでは?

 と思ったがドワーフは300歳近くまで生きると聞いたからそんなに年取って無いのか。

 その後、俺たちは身体のサイズを測ってもらい、各々にあった装備を買った。


「色々とありがとうございますガンクさん。こんなによくしてもらったのに装備代だけでいいんですか?」


 俺は結局8800デリーを払ったが、ガンクさんの話がなければもっと高く無駄な買い物をしていただろう。


「いいんだ。久々の客だし気合い入っちまっただけさ。ここもいつまで続けられるかわかんねえしな……」

「なくなっちゃうんですか?」

「昔は初心者もよく来たもんだが今はめっきり来なくてな。まぁ大手の武器屋ができたせいだと思うが……。そっちは煌びやかな武具が売ってるから若者ウケがいいのさ」

「私はここに潰れて欲しくにゃいのだ!」

「そう言って貰えるだけで満足さ。ま、武器が壊れたりしたらまた来てくれや。ところであんたたちは主従の関係か?」


 それはつまり奴隷かどうかってことかな。奴隷ってわけじゃないけどスキル的にはまぁ主従関係的な感じだしどう答えようか。と思っていたらテンネが勝手に答えた。


「私とフリードは仲間だにゃ!」

「ふっ、そうか。あんちゃん魔人差別もしないみたいだしいい冒険者になるぜ、頑張んな」


 そう言われて俺たちは店を後にした。

 こうして俺たちの初めての装備購入は終わった。


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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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