【迷宮と姫⑥】
謎の部屋に閉じ込められてから数時間は経っただろうか、流石にもう出れないんじゃないかと諦めかけたりもしたんだが、何故か急に床に穴が空いた。
意味がわからないまま俺たちはそのまま下へと落下する事になり、ふと下を見てみると巨大な蜘蛛の魔物がいた。
「うああああああああ!? ちょっ、え? 蜘蛛!? 剣剣剣!」
「おーでっかい蜘蛛にゃ。食えるかにゃ」
「蜘蛛は美味しくない」
「剣を突き刺したらいっぱいお汁が飛び出そうだねぇ」
魔物娘達はすごい呑気なことを言っているが俺は焦りまくっていた。俺は腰から抜いた剣を敵の頭に突き刺した。すると魔物は奇声を上げ謎の汁を出して暴れたが、少しして息絶えた。
敵が死んで、余裕ができた俺は辺りを見渡すと、そこには3人の男がいた。1人は知らない男だ。だがもう2人は見知った顔だった。金髪頭と坊主頭。ロイヤーとゾックだった。何故こいつらがここに。
「お、おぉ、あんたら助かったぜ! 死にかけてたところなんだ俺らは! 命の恩人だよ!」
知らない男がそう言って俺に近づいてきた。
「あなたは?」
「あ、ああ俺はドミニクってんだ。ダンジョンに潜ってたんだがちょいとしくじっちまってな。そこをあんたらに助けてもらったってわけさ」
「お前らもそうなのか。ロイヤー、ゾック」
俺がそう彼らを見て尋ねると、ロイヤーは俺を睨みつけて舌打ちをした。
「何故てめぇがここにいる。僕は助けてくれと言った覚えなんてないぞ」
「いやただの偶然だよ。罠に引っかかってね。それにしてもひどい怪我だな。ポーションいるか?」
「誰がてめぇの施しなんて受けるかよ!」
「あ、じゃあ俺にはくれよ、フリード」
ゾックがへらへらと笑ってそう答える。俺は荷物からポーションを取って彼に渡した。
「てめぇゾック! プライドってもんはないのか!」
「へっ、こんなボロボロになって何がプライドだよ」
「なんだと!」
2人が険悪な雰囲気になりかけているのはどうでもいいが、俺は気になっていることがあった。
「お前ら何故ダンジョンにいるんだ? 俺は罠に引っかかってたからだが、今は閉鎖中のはずだろう――」
「――そ、そいつらは盗賊だ!」
俺の声を遮って話しかけてきたのは、倒れていた2人の兵士のうちの1人だった。
俺は急いで彼の元へと行き、ポーションを渡して飲ませる。彼は「すまない」とだけ言って、話を続けた。
「俺たちはここで秘宝を守っていた。だが突然睡眠性のある煙をまかれて、俺たちは寝てしまった。しかしその後魔物達とそいつらが戦闘している時の衝撃で俺は目を覚ました。そしてあんたらが天井から降ってきてあの魔物を倒してくれたのも見ている。あいつらは秘宝を盗みにきた盗賊なんだ!」
兵士はロイヤー達を指差してそう言った。
「そうなのか? ロイヤー」
「誰がてめぇに話すかよ」
「お、落ち着け。確かに俺たちは秘宝とやらを盗もうとはした。けど今は持ってねえ! 別の奴に盗られちまったんだ!」
知らない男が慌ててそう返す。
「別の奴?」
「あ、ああ。俺に依頼してきた男だ。本当はそいつに宝を売って儲けるつもりだったんだが、そいつがここに現れて宝ごと奪って逃げられちまったんだよ!」
「にゃーリン。どういうこと?」
「つまり彼らはまんまと騙された馬鹿ということ」
「にゃはは、馬鹿か。よくみたらみんな馬鹿そうな顔してるにゃ」
テンネ達は勝手に笑っていた。ロイヤーはひたいに血管を浮き上がらせていたが、正論だから言い返せないのだろう。
「そ、それじゃルクスの玉はどこに行ったんだ!」
兵士がそう叫ぶ。ルクスの玉ってのが秘宝なのかな。
「し、知らねえよ。俺はあの男と依頼の時しか会ってねえんだ」
「そ、そんな馬鹿な……これはまずいことになった――」
「――えーっ? なにこれっ!? なんでこんなに人がいっぱいいんの? レバノン、これどういうこと?」
ダンジョンの奥から、驚いた女の子の声がした。姿を現したのは美しい装飾がされた鎧に身を通した少女だった。彼女の隣には初老の男性が、そして後ろには完全装備をしている5人が付いていた。
「いやいやリールラ様、これは私にもさっぱりわかりません。いったい何が……ってあーー!? な、無いっ! 無いぞ! おい貴様ら! 玉はどうした! ルクスの玉は!」
初老の男が何も無い台座をみてそう兵士たちに問う。起きていた兵士は俺らにしたように男性に事情を説明していた。
「ば、馬鹿な……盗まれただと? なんてことを……」
「えー! じゃあ私の試練はどうなるのよーっ! ちょっとー!」
「そんなこと言ってる場合じゃないですぞ姫。これは一大事じゃ。早急に王に報告せねば。者共、こいつらをひっ捕らえよ!」
初老の男の号令で、後ろについていた兵士達が俺たちを拘束し始めた。まぁこうなるか……。
黙って拘束を受けていると、俺を縛っていた兵士がおもむろに俺の耳元で囁いた。
「やっほー、フリードちゃん」
「えっ?」
思わず振り向くと、その兵士は少しだけ兜を外して俺の方を見ていた。兜の下から覗かせるその顔は、薄緑の髪に垂れ目の女性。ヴィーナスさんだった。
「な、なんでヴィーナスさんが」
「しーっ、うちらが知り合いだってバレたらまずいっしょ。少し知らんぷりしてて。悪いようにはしないから、ふふふ」
湿気を含んだ吐息が俺の耳元に届いて、俺は思わずくすぐったくなってしまう。
「ねー! 私の試練はーっ!?」
どうやらお姫様らしい彼女の響きがダンジョン中に響き渡った。
以下雑話
なんかもう少しでランキング乗りそうだけど乗らない感じのポイントなのでもう1話投稿してみました。そういうとこありますよねこの作品(笑)
魔物娘こんなのが見たいーとかあったら感想欄に書いていただけると参考になります。ついでにその獣レベルも。これは好みによるでしょうが。
獣レベルってのはあれです。体はほぼ人間、猫耳だけ、要はテンネみたいなのがレベル1で、体のほとんど獣なのがレベル10みたいな感じです。
では今後ともよろしくお願いしまーす。失礼しました。




