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【迷宮と姫①】

 

 起きて、俺たちはとりあえずリビングで椅子に座りくつろいでいた。


「さーてと、次はなんのクエストしようかな。思ったよりお金が余ったからなぁ」

「面白そうなやつがいいにゃ」

「まぁそうだな。お金目的じゃないなら面白さ優先でもいいな」

「それよりご主人〜、ノンはふかふかのベッドが欲しいぃ」


 ノンに言われて思い出した。そういえばテンネはご飯だからともかく、リンは本がいっぱいほしくてノンはベッドがほしいとか言ってたな。

 ベッド自体は元々あの家には3つあったけどもう1つくらい大きめのは欲しいしな。そこら辺今日買うか。


「よし、本とベッドを買いに行こう。サイドとレモンも行くか?」

「いや、僕はいいや」

「私もいいわ。というか日中は外が眩しくて出たくない」


 なるほど、死霊系はそういう弱点もあったりするんだな。

 俺たちは家を出て、まずベッドを買いに家具屋に赴いた。家具屋で出てきた店主は筋骨隆々な男だった。


「おう、いらっしゃい!」

「ベッドを買いに来ました。ふかふかで大きいやつ!」

「おぉ、ベッドか。ふかふかでデケェとなると値が張るぜ?」

「大丈夫です、お金ならあります」

「そうか、ベッドテーブルも必要か?」

「はい、お願いします」

「なら、これだな。棚付きベッドテーブルと、バネ付きのマットレスだ。キングサイズだな」


 店主が紹介してくれたものは確かにデカかった。これは3人寝てもゆとりがありそうだ。


「バネ付きっていうのは?」

「ああ、マットレスにバネが付いててな。寝てみたらわかるんだが、良い反発力なんだ。寝てみるかい?」

「ノン、寝てみなよ」

「やったぁ」


 ノンが嬉々としてベッドに仰向けになった。


「うわぁ、凄ぉい。気持ちぃ。お休みなさぁい」

「こらこら寝るな。気に入ったみたいなのでこれでお願いします」


 本気で寝ようとしていたノンをベッドから引きずり出して、そう言った。


「よしわかった。シーツも付けとくぜ。次は掛け布団だな。どんなのがいい?」

「柔らかくてぇ、ふわふわしてるのかなぁ」


 ノンがそう答えると、店主が店の奥の方にある大きな布団を見せた。


「そうか、ならこれがイチオシだな! 【怪鳥レイテスカラ】の羽毛を使った掛け布団だ」

「あ、あのレイテスカラですか」


 怪鳥レイテスカラ。西の湿地帯に住んでいると呼ばれる巨大なくちばしを持つ怪鳥。ギルドによって発行されている危険度では確かBランクの大物だ。この前のゴブリンロードもBランクなので、その強さが伺える。


「ああ。奴の羽毛はとてもしなやかで強靭なんだ。通気性もいいし最高だと思うぜ。ちなみに枕も付いてくる」


 確かに触らせてもらうとすごく柔らかく、肌触りも良かった。というわけでそれを買うことにした。


「毎度。じゃあ家まで送らせて設置させてもらうぜ。家はどこだい?」


 そう訊かれたので、場所を説明すると、店主の顔が曇っていった。


「あ、あんた不幸の家に住んでんのか。だ、大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですよ!」

「ま、まぁ俺は運ばせてもらうだけだからいいが。おい、野郎ども、運ぶぞ!」


 店主の声で店の奥からぞろぞろと屈強そうな男達がぞろぞろと出てくると、ベッドを運び始めた。家までくると、皆少し驚いていたが空いていた部屋に丁寧に設置してもらい、彼らは帰っていった。


「ふぁあ。ふかふか〜、幸せぇ」


 ノンは早速ベッドに転がってだらしない顔をして気持ちよさそうに寝始めてしまった。


「じゃあ、次は本を買いに行くか」

「うん」

「にゃー、ご飯は?」

「あと」


 テンネとリンを引き連れて俺は街にある本屋へと向かう。スキルを応用した印刷技術の進歩で本の値段はかなり下がったが、それでもまだ高価だ。


 街にある本屋はこじんまりとしていて、中には眼鏡をかけた初老にみえる男性の店主が座っていた。


「にゃんだか、木の匂いがするにゃー」

「リンはどんな本を探してるんだ?」

「なるべくこの世界の事がわかる本がいい。歴史の本とか、生物の生態とか」

「なるほど」

「そういえばマスターは魔物や魔人への知識が豊富。何で知ったの?」

「ん? あぁ、故郷にいたリズって女の子に教えてもらってな。俺より1つ下の子なんだけど、魔物とか魔人に対しての知識をいっぱい持ってたんだ」

「なんでその子は知ってたの?」


 そうきかれて、俺は答えに詰まった。そういえば何故なんだろう。リズは俺が10歳の時に村にやってきた孤児だった。彼女は身寄りがなく、村長夫妻が引き取った。


 彼女は魔物への知識が豊富で、俺はよく彼女の話を聞いていた。だから俺は魔物への抵抗があまりない。しかし、リズがそんな知識をどこから得たのかはわからないな……。


「もしかするとリズの元の親が研究者か何かだったのかもな」

「ふぅん……」

「それにしても、歴史の本ってどれがいいんだろう。いっぱいあるぞ」

「本当だ。たくさん」


 パラパラと本をめくってみると、字がぎっしりと詰まっていた。この本、400年前の歴史とかも書いてあんのか。凄えな。だけど、初心者が読むにしては堅すぎるな。

 なかなか探すのも難しいな、と考えていると見知らぬ男性から話しかけられた。


「何か本をお探しですか?」


 糸のように細くした目と、満面の笑み。すらりとした体格で、顔は整っている美青年だった。

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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