【家を買おう④】
「いいわ、あんた達もこの家に住まわしてあげる」
やけにフリフリな服を着てきたレモンが俺に指をさしてそう言った。元々この家にあったものらしい。ちなみに弟のサイドの方は白のTシャツにオーバーオールのズボンを履いている。
「交渉成立だな。さて、じゃあ俺はエリナさんのところに行って、この家を買ってくる」
そう言って、俺は家を出た。すると玄関の前には再び家の中に入ろうか入らまいか迷っているエリナさんの姿があった。
「あ、あ! フリードさん! 無事だったんですね! よかったぁ」
「エリナさん。俺この家を買うことにしました!」
「え、ええぇ!? な、何言ってるんですか! 呪われちゃいますよ!?」
まぁそう言ってくるのはわかっていた。
「まぁまぁ、そこはもうたぶん大丈夫なんで。あのゴーストは討伐しました」
「ええ!? す、凄いですね。なら、まぁわかりました……」
「10万デリーでいいんですよね?」
「あ、はい。じゃあギルドの方で詳しい受付をしますね」
そして俺はギルドへと赴き、家を買うための書類にサインをした。
「ほ、本当にこれで買えちゃいますけどいいんですね?」
「いいですよ」
「じ、じゃあはい。これであの家はフリードさんのものとなります」
というわけで俺は家を手に入れた。俺はいつまでも嫉妬で周りの冒険者から睨まれていたくもないので、エリナさんにお礼を言ってさっさと家に戻った。
「さて、と。とりあえずは掃除をしようか。埃だらけだ」
「そうね、私も掃除はしたかったわ。するわよサイド!」
「わかったよ姉ちゃん」
レモン達も乗り気なので、俺たちは家中を掃除することにした。そして掃除しつつ、レモン達に色々と話を聞く。
「お前らこの家が不幸の家って呼ばれてるのは知ってるのか?」
そう訊くとサイドが答える。
「知ってるよ。家に住もうとしてくる人がよく「ここが不幸の家か」なんて言ってるからね。けどそれは都合がいいんだ。あまり人が来ないから」
「なるほど。じゃあ今までに住もうとしてきた人達に不幸と呼ばれる現象を起こしたのはお前たちか?」
確認の意味で尋ねると、レモンが胸を張って答えた。
「そうよ! 色々なことをやったわ。念力を使って人の頭を壁にぶつけたり、物をどっかに隠してみたり、ひたすら相手が寝てる時に「タチサレ」とか言ってみたり、極め付けはあれね! ここを取り壊そうとしてきた連中にスキルを使って熱を出させてやったわ」
「へぇ、なるほどねぇ。あれ? 風呂場を覗いた、ってのは違うのか?」
「何それ。私は知らないわ……ってまさか!」
レモンが首を振って否定した後、何かに勘付いたようにサイドの方を見る。するとサイドはギクリとした表情をしていた。
「サイド! あんた覗いてたのね!」
「うぅ……ごめんよ姉ちゃん。だって綺麗なお姉さんとか来たら覗きたくなるじゃないか。ねえフリード兄ちゃん?」
サイドが救いを求めるように俺の方へ目を向ける。くっ、俺も男だ。気持ちはわかるが、ここでイエスと答えたらあとあと面倒な事になるなこれ。
「ま、まぁ。けど普通は覗いたりはしないな」
「うぅ、フリード兄ちゃんのヘタレ……」
誰がヘタレだ。
「サイドはちょっと変態なのよ。あんたの仲間の亜人にも注意させた方がいいわよ、可愛い子ばかりだし」
「いや、テンネ達にそんなことしたら返り討ちに遭うだけだと思うが」
「返り討ちか、そこが燃えるよね!」
サイドが胸を張ってそういうと、レモンにゲンコツを食らっていた。
「お前ら何歳なんだ?」
「死んだ時なら私もサイドも7歳ね」
「同い年なのか」
「双子だもの。まぁそこから10年は経ってるから精神的な年齢は微妙なところだけど」
双子だったのか。その後もそんな話を彼女たちとしつつ、俺たちは家の掃除を進めていった。
「にゃあぁ、疲れたのだ」
「本当だよぅ。もぉ、動けないぃ」
「嘘。あなた達は殆ど遊んでたでしょ」
時間が経ち、掃除が終わった後テンネ達はリビングでそんなことを言って、リンに怒られていた。
掃除も終わったので、とりあえずその日はご飯を買ってきて家で食べ、風呂に入って寝た。大きな風呂だった。色々と疲れた1日だったのですぐに寝れた。ちなみに初日なのでみんなで雑魚寝で寝た。
「タチサレ……タチサレ……」
寝言でサイドとレモンがそう呟いていてうるさかったのは黙っておいてやろう。




