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【キンジクの花⑤】

 

 ひとりの中年冒険者が、冒険者がどこで消えたのかを知っているというのだ。


「本当ですか? いったいそれはどこで」

「教えてもいいが、対価が必要だな」


 男がそう言ったので、俺は無言で保存瓶からキンジクの花を3つ取り奴に渡した。

 すると男は嬉しそうに笑う。


「へへ、いいだろう。こっちだ、ついてこい」


 男の言う通り、ついていくと木が1本倒れていて、少し戦闘の跡が見える場所に案内された。


「ここだ。ここで俺の知り合いは消えた」


 男によると、その日男は金のキンジクを探すために以前からクエストをともにこなす事が多かった男とこの山に来たらしい。だが、結局探すときは各々1人ずつ探すことになったので、ひとりで探していると遠くからその男の悲鳴が聞こえたようだ。


「なんだ魔物か? と思ってここまで助けに来たんだが、“何か”との戦闘の痕跡だけ残してそいつはどこかに消えちまった」

「でも、戦闘の痕跡だけでよくここで消えたって断言できますね」

「いや、それだけじゃねえ。俺はこの倒れた木の下で、こいつを見つけたんだ」


 そう言って男が懐から取り出したのは銀の腕輪だった。歪んでいて少し特徴的な形をしている。


「あいつは好んでこれを腕につけてた。それがここに落ちてたんだ。まぁつまりそういう事だな」

「なるほど」

「こんなもんでいいか?」

「ええ、よくわかりました。けど仲間を失って悲しくないんですか?」


 俺がそう聞くと、男は驚いたような顔をした後、どこかぶっきらぼうに「冒険者だからな」と言って、去っていった。


「さて、手がかりが手に入ったのはいいが、ここからどうするか」

「この木、なぎ倒されたんですかね?」


 サビルが倒れた木を見てそう言った。かなり幹の太い木なので、なぎ倒されたとは考えにくい。だが木は自然的にはありえない木の中心でねじきれるようにして倒れていた。


「こいつをにゃぎたおすって相当強い力を持ってるにゃ」

「相当な怪力。もしくはスキル使い。マスター、危険かも」


 リンの言う通り、これが故意に倒されたものなら相当相手は強いことになる。果たして俺たちでなんとかなるレベルなのか……?


「いったい誰がこんな事を……」

「メェエエ」

「ん?」


 何やら鳴く声が聞こえたのでそっちを向くと、白い毛に包まれた2本のツノを持つ羊の魔物がいた。

 あいつは、スリープシープか! キンジクもないのにこんなところにいるとは……。あいつに眠らされる前に距離を置かないと。


 確かスリープシープ自体に攻撃性はなかったはずだが、寝てる間に他の奴らに何をされるかわかったもんじゃない。


「みんな、離れ――」


 頭がぐわんと揺れる。

 な、なんだ? 急激な眠気が襲ってきやがった。まさかさっきの鳴き声がスキル発動の合図!?


「にゃんだか……眠い、にゃ……」

「おやすみ、マス、ター……」

「ふぁあああ」


 ……やはりテンネたちも眠気に襲われている。というかもう寝てる。流石に早すぎるだろ。

 とはいえ俺も寝落ちしてしまいそうだ。ぐ、それなら……。


 俺は剣を腰から抜き取り、自らの太ももに突き刺した。太ももからは血が流れ出る。

 痛え、痛えけど、これで……眠気は少し覚めた。


「メェエエ」


 だが魔物は更にスキルを発動させた。くそ、また眠気が……こうなったら、一か八かだ。

 俺はかろうじて痛みで眠気と戦うと、手のひらを魔物に向ける。


「『リライフ』……」


 すると魔物は眩く輝きだした。

 や、やった、成功した。で、でももう駄目だ、眠い。不安だが今仲間にしたばかりのこいつに俺たちを守ってもらうしかない。

 俺は魔物が魔人へと変化する様を見届けようとした段階で眠さに勝てずに寝た。


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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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