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【キンジクの花④】


「あ、ありがとうございます!」


 少年は乱された服を直すと、俺たちにそう礼を言った。


「別に構わにゃいぞ」


 と、テンネが胸を張ってドヤ顔で言った。


「あ、亜人の方ですよね。冒険者ですか?」

「いかにも。私はテンネ! 天使のような猫でテンネなのだ!」


 やっぱりそれは毎回名乗りあげる気なのか。

 少年の方は何か感心した様子で「ほぇー」とか言ってた。

 

「ここへはキンジクを取りに?」

「そうなのだ。中々見つからにゃいにゃあと思ってたらこんにゃところにいっぱいあったのだ!」

「ってことはそれを採り終わったら帰っちゃいますよね……」

「もちろん! ご飯が私を待ってるにゃ!」


 テンネは全くもって少年の気持ちに気遣う気は無いようだが、さてどうしようかな。

 おそらくこの少年、何かしらの厄介ごとを持っている。今、それを突っぱねて無視することは容易い。

 だが……この子はどこか、俺に重なる。境遇は違うんだろうが、どこかが……。


「なぁ君、なんであの男たちと一緒にいたんだ?」

「え、それは……」

「話してみてくれないか。もしかしたら手伝えるかもしれない」

「実は――」


 そこから俺はこのサビルという少年の話を聞いた。サビルがこの麓の村に住んでいること。最近山での失踪事件が多発していて、サビルの姉も行方知れずになっていること。このキンジクの花の場所と交換で、さっきの男たちに姉の行方を捜してもらおうとしていたこと。


「なるほど話はだいたいわかった。それで、サビルのお姉さんに限らず、行方不明者の手がかりは一切ないのか?」

「は、はい……村人、冒険者どちらでも山に入って行方不明になってます」

「山に何かがいるのか……?」

「わかりません……。ただ冒険者の人達は金のキンジクを探して山に入った人が多いと思います」

「目撃者とかはもちろんいないんだよな」

「いませんね」


 手がかりが少なすぎる……。本当に事故か何かで遭難したのか、事件に巻き込まれたのかすら分からん。

 けど、冒険者がキンジクを探してたっていうなら、ここら辺の中腹部にいたはずだよな……。


「とにかく、手がかりを探すしかない。この中腹部で誰か目撃した奴がいないかを探そう」

「え? フリードさん、手伝っていただけるんですか……?」

「まぁこんだけのキンジク見つけたのもサビルのおかげだしな、そのお礼みたいなもんだ」

「う、うぅ。ありがとうございます」


 サビルは泣き出してしまった。

 まぁ本音を言えば、どこかこいつに同情してしまったからだ。話を聞けば、姉が失踪してからサビルは村の人達に一緒に姉を捜索してくれるよう頼んだらしい。けれど、村の住人はそれを拒否し、サビルは1人姉を探していたようだ。


 姉は村の人達の為に、よく家事手伝いなどもしていたようだが、誰も捜索を手伝ってくれないという現実にサビルは絶望してあんな男達に頼むようになったわけだ。


 みたところサビルはまだ10歳程度だ。ここから1人で立ち直るのは難しいだろう。だから、今回だけは手伝うことにしたのだ。


 俺は咲いていたキンジクを保存瓶の中に集め、聞き取り調査をすることに決めた。


「何? 消えた冒険者だぁ? 少なくとも俺の周りでは消えてねえな」


「うーん、噂では聞いたことあるけど、俺は見たことないなぁごめんね」


「知り合いが1人行方不明になったとは言ってたが……事故で片付いたらしいからわかんねえな」


 聞いてみた感じはこんな感じだった。最後だけ少し関係あったようだがやはり何もわからない。

 他にも、見かけた冒険者には片っ端から聞いてみたがそれらしき手がかりは何も得ることができなかった。


「中々情報集まらないな」

「す、すみません。こんなことに付き合わせてしまって」

「いやいいさ」


 とは言ったものの、どうするか。全くもって先が見えない。そもそも何故ここまで目撃情報がないのか、答えとして考えられるのはひとつだ。


 すなわちそれは、『目撃したもの全てが連れ去られている』ってことになる。

 だとすると、この事件を解決するのはほぼ不可能に近い……。


 そんなことを考えつつ、聞き込みを続けていると、ひとりの男から思わぬ情報が手に入った。男はこう言った。


「ああ、それなら俺、消えた奴がどこで消えたのか知ってるぜ」

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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