【キンジクの花①】
そして、俺は数日休憩を挟みクエストを受けることにした。
俺はギルドに来たはいいものの、なんのクエストを受注しようか迷っていた。
ゴブリンは倒せる事は判明したので、それと同等以上のクエストを受けたいところだが……。
「クエストにお悩みですか? フリードさん」
依頼書と睨めっこしていたらいつもの受付のお姉さんに声をかけられる。
「あ、こんにちは。えーと……」
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はエリナと言います」
「そうでしたかエリナさん。俺はフリードです」
「知ってます。ふふふ」
そう言ってエリナさんは笑う。綺麗な人だ。
「フリードさん。クエストにお悩みでしたらいいのがありますよ」
「え、本当ですか。是非教えていただきたい」
「【キンジク】という花はご存知ですか?」
「いえ……?」
キンジクの花。聞いたことないな。
「東のルクセント地方に咲く花の事です。大変美しく、とても高価で式典などでよく使われます。しかし同時にある魔物の好物でもあります」
「ある魔物?」
「羊です。スリープシープという魔物が好んで食べるのです」
スリープシープ。確か睡眠系のスキルを使ってくるんだっけか。敵をそれで眠らせて敵が寝ている間に逃げるんだよな。
「クエストの内容は、そのキンジクを取ってくるというものです。スリープシープはそこまで危険度はありませんから、おすすめです。それに、これをクリアできればフリードさん達のランクは上がりますよ」
「えっ、本当ですか」
「はい。ゴブリンを15体も討伐していますので、既に十分上のランクにはいけます。このクエストをクリアすれば問題なく上がれます」
ランクがEになれば受けられるクエストのレベルも上がる。願っても無い事だ。
「受けますっ、そのクエスト」
「わかりました。ではそのように手配しますね。ちなみに今、金のキンジクが出た、なんて噂もあるみたいですよ?」
金のキンジクってなんだ? と思ったがエリナさん曰くこうだ。普通のキンジクは銅と同じ色の花のようだが、たまに金のキンジクと呼ばれる金色の珍しい花が咲くらしい。これは市場価値が高く、一本で200万デリーで売れるそうだ。
ちなみに銀のキンジクというものもあり、これは1本50万デリーで売れるそうだ。
クエストとしてはキンジクは1本取ってくればいいらしい。1本で1万デリーだそうだ。保存用の特殊な瓶も貸してもらい、準備は万端だ。
ルクセント地方には王都から馬車で1時間もすればついた。
キンジクはルクセント地方にある山に咲いている事が多いようだ。しかしその山に入るには入山料が必要らしい。難儀な事だ。俺は山の麓の村で情報を集めてからのぼることにした。
「ほぉ、あんちゃんらもキンジクを探しに来たのかい」
昼間っから冒険者で賑わっている酒場に行くと、店主のおじさんにそう言われた。
「ええ。やはりここにいる冒険者の人たちも?」
「そうさ。みーんなキンジク探しに来てるよ。ま、そのおかげでここは繁盛してるけどね。キンジク様様ってやつだ」
おじさんは自嘲気味に笑う。
俺は頼んだエールを飲みつつその話を聞く。ちなみにテンネは水を飲んでいる。エールを飲みたがってたので飲ませたら「まじぃ」と言ってた。勝手なやつだ。
リンの方は最初から水を飲んでる。あまりアルコールを飲みたく無いようだ。
「特に今は金のキンジクがあるとかないとか?」
「あぁ、噂されてるな。誰が流したんだか知らないが、お陰で最近は更に客が増えたよ」
「本当にあるんですかね?」
「さぁな。まぁ5年に一回くらいは見つかったりしてるからあるかもしれねえし、無いかもしれねえな」
5年に1回は見つかってるのか。てことはまんざらありえなくも無いんだな。
「普通のキンジクはどこら辺に咲いてるんです?」
「中腹部に多いって聞くな。それとスリープシープがいたら大体そこら辺にあるとも」
「なるほど。ありがとうございます」
「あぁでも気をつけろよ。最近山での遭難者、行方不明者が多いからな」
「それっていったい?」
「わからねえ、けど最近多いんだ。物騒なことにな」
結局そのことについては何もわからなかったが、その後もおじさんと話を続け、キンジクについての有益な情報を得ることができた。