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【ヴィーナス】


 俺の頭の中ではひとつの疑問が浮かんでいた。俺の『リライフ』というスキルは、果たしてどんな魔物にでも効くのか?

 答えとしてはノーだと思っている。これはただの勘だ。


 無論魔物に試していけばわかる事なんだろうが、俺はそれを躊躇していた。

 リライフを使った魔物は俺に服従する。仮に俺が手当たり次第に魔物を魔人にしていったらどうなるか。数が膨大すぎて俺の手には負えないだろう。


 だからといって俺は自分の都合で魔人にした奴らを捨てたりなんかできない。だから俺はスキルで実験をすることはやめた。


 だが今回は、そんな事を言っている場合じゃあない!


 幾らゴブリンロードが筋肉モリモリの奴で服従なんかさせたくなくても、命の危機に比べたら些細な事だ。

 ここで服従させられるなら、それで終いだ!


「『リライフ』!」


 俺はゴブリンロードに向かって、スキルを唱えたが、何も変化は起きなかった。

 やはり、何か条件があるな……。魔力か?

 俺があいつの魔力を上回ってないといけないとか……。

 まぁ今考えたところで仕方ないか。


「ちぃ、ちょこまかと!」


 俺たちは相手を撹乱するために動き回って、隙を見つけた時に攻撃する戦法をとった。

 しかし、これは確実に相手にダメージを与えることはできても致命傷は与えられない。


 まだ立っている他の冒険者の攻撃もやはり致命傷には届かない。そうこうしているうちに次々と冒険者達が倒れていく。

 最後には俺たち3人しか残らなかった。


「後はお前ら3人だけだ。さぁ、きっちり死ね」


 そう言ってゴブリンロードが襲いかかってくる。避けようとしたが、足の疲労がピークに達し、一瞬動けなくなってしまった。


 まずい、死ぬ……!


 そう思った瞬間、閃光が駆け抜けた。

 後ろから風のようにやってきたそれは、ゴブリンロードの腹に見事に突き刺さる。

 ゴブリンロードの腹には淡く光る矢が刺さっていた。


「あ? なんだ、これ?」

「――弾けろ、『エクスプロージョン』」


 後ろから響き渡るその声とともに、矢は爆発した。

 爆発とともにゴブリンロードの腹は吹き飛び、穴が空く。


「ぐあああああっ!? い、痛えええ! な、なんだてめえ!?」

「なんだって、冒険者に決まってるっしょー。あんた馬鹿なん? 面白ーい」


 声のする方に目線を向けると、そこには兜をつけた人が立っていた。

 覚えている。この人は出発前に全く急ぐ気配がなかった人だ。

 そのままその人は倒れたゴブリンロードの前まで行く。


「まさかゴブリンロードがいるなんてねー、驚いちった。ねぇあんた、誰の差し金?」

「い、言っている意味がわからないな」

「まぁ答えないかー。死んでも答えない?」

「ふ、ふん……知るかよ」

「じゃあ仕方ない、死ぬしかないねぇー」

「お、お前……何者だ?」

「今から死ぬ奴がそれ聞いても意味ないっしょ。じゃ、お疲れさん、死んでねー」

「ちょ、ま――」


 その人は腰から短剣を取り出すと、躊躇なくゴブリンロードの心臓に突き刺した。

 ゴブリンロードは一瞬目を見開いた後、事切れた。兜をつけたその人は、ゴブリンロードの死体を何やら弄ると、ひとつのアクセサリーのようなものを発見し、取り出した。


「なるほどー。やっぱりねー」


 そう言ってその人はそれを懐にしまった。そのあと、ゴブリンロードの右耳を刈り取っていた。

 そして俺の方へと歩いてくる


「いやーあんたが良い囮になってくれたおかげで倒せたよー! うんうん、あ、兜外した方がいいか」


 そう言ってその人は、いや、彼女は兜を外した。

 薄緑の髪を持ち、目は少し垂れ目だ。口は常に笑っていてどこか妖しさを漂わせている。


「うちは、ヴィーナス。ヴィーナス・ブルマー。よろしくっ」

「あ、えと……俺はフリード」

「そかーフリード。ボスも倒した事だし、さっさとこっから脱出しよー」

「え、倒れてる彼らは?」

「あれはギルドに要請して救護隊出してもらうしかないっしょー。一応出来るだけ応急処置はするけどねー」


 そう言って、ヴィーナスさんは倒れてる人で生きてる人には無造作にポーションをぶっかけていく。


「にゃんだあいつ? めちゃくちゃ強かったにゃ」

「ゴブリンロード。あんなに外皮が硬かったのに。1発だった」


 離れていたテンネとリンが戻ってきた。

 彼女たちも未だに困惑しているようだ。


「あ、こんなところにいたんだー!」


 奥の方の道に進んでいったヴィーナスさんがそう言った。何事かと俺たちもそこに向かうと、全裸で檻に囚われている女子供の姿があった。

 ここに囚われてたのか……。


「今出したげるからねー。よっと」


 ヴィーナスさんは手から小規模の爆発を発生させ、檻を壊した。最初はビクついていた彼女らも、俺たちが助けに来たのだと分かると皆歓喜の涙を流し始める。


「よーし、帰ろっかー」


 応急処置も終わり、俺たちは洞窟の外へと出た。


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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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