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【ロイヤーの失敗②】

 


 ロイヤー達は驚きのあまり動けなくなっていた。

 2メートルはある体躯。ゴブリンとは思えぬ屈強な身体。そして片手で持ち上げる巨大な斧。


「ゴ、ゴブリン、ロード……」


「くく、ククク……クハハハハ! 間抜けな人間もいたものよなぁ!」


 するとゴブリンロードが大口を開けて笑い始めた。


「し、喋った……?」

「んん? なんだ、俺が喋るのはおかしいか? 魔人だって喋るだろうに」

「う、うああああああっ!」

「ゾ、ゾック!」


 ゾックは剣を抜くと、ゴブリンロードに斬りかかった。


「ほぉ、俺に斬りかかるか。偉い偉い……だが死ね」

「ぐぁっ!!」


 ゾックの剣はゴブリンロードに届くことはなく、逆にゴブリンロードが振り抜いた斧によって、壁に激突した。


「おや、胴が寸断されなかったか。良い鎧だな」


 壁にめり込んだゾックは、血を流しながら意識を失う。

 そしてそれを見届けたゴブリンロードは、目をギョロリと動かし、ロイヤーに視線を合わせる。


「う、うわあああ!」


 ロイヤーは剣を捨て、後ろに向かって走った。だが、すぐに追いつかれる。


「お前は駄目だな。逃げ出すとは」

「がぁっ!?」


 ゴブリンロードの蹴りをくらい、ロイヤーは無残にも吹き飛ぶ。

 ゴブリンロードは地面に転がるロイヤーに近づくと、ニヤニヤしながらこう言った。


「お前の馬鹿な点を今から言ってやろう。冥土の土産によく聞いておけ。装備が見合ってない。なるほど逃げ出すのは良いとしよう、だが肝心の速さが足りない。何故だかわかるか? お前の鎧はお前に合ってないからだ」

「ごぼっ、ゴホッゲホッ」

「お前はこのゴブリンを追い詰めてここに来たと思っているようだがそれは違う。お前はおびき寄せられたのさ。こいつにな」


 ゴブリンロードは手元にロイヤーを罠に嵌めたゴブリンを連れてくると、頭を撫でた。ゴブリンは「ケケケケ」と笑っている。

 ロイヤーはそれを血反吐を吐きながら睨んでいた。


「鎧に振り回されて、ここに来た挙句、剣を捨てて逃げるとは。こんな馬鹿な人間がいるおかげで俺たちは美味しい思いが出来るんだ。さて、そんなお前にも選択肢をやろう」


 ゴブリンロードは指を2つ立てた。


「1つはこのまま死ぬ事だ。お前はここであっけなく死ぬ。2つ目はお前が生き残る方法だ、さぁどっちが良い?」

「が、はぁ……い、いぎだい……」

「んん? 何々? なんだって? 聞こえんなぁ」

「い、生きだいっ!!」

「そうかそうか、じゃあお前はここで助けを呼び続けろ。他の冒険者のな。それができたら助けてやる」


 それはつまり、ロイヤーに他の冒険者を騙させるということだ。

 ロイヤーは一瞬躊躇したが、すぐにそれを実行することに決めた。そして彼は力の限り叫んだ。「助けてください」と。そしてその声につられるように冒険者達が現れた。


 ひらけた場所の真ん中にロイヤーが縄で縛られている。冒険者達はそれを見てロイヤーを助けようと、迂闊にも彼に近づくのだ。

 そして気の緩んだ冒険者達を影から現れたゴブリンロードが襲いかかるのだ。冒険者達はなすすべもなくやられていった。


 悲鳴に悲鳴を重ねた結果、その声につられた冒険者達が思ったよりも多く来てしまったので、今ゴブリンロードは冒険者達と表立って戦っているが、明らかに冒険者達に勝ち目はない。


 ロイヤーもお役御免という事で隅の方で血を流しながらぼんやりとその戦いを見ていた。


 ――なんで、なんでこうなった?


 そして彼が薄れゆく意識の中で最後に見たのは、ちょうどやって来たフリードの姿だった。


 ♦︎


「ぐあああああっ!」


 ひとりの冒険者が吹き飛んでいく。

 くそっ、ゴブリンロードだと? まさか本当に上位種がいるなんて!


「フリード、どうするにゃ?」

「撤退だ! あんなのFランクの俺たちには勝てる相手じゃない! すぐ上位冒険者を呼んでこないと!」

「ほぉ、良い判断だなガキぃ。だが俺が、それを聞いてお前を逃すと思うの、かぁ!?」


 ゴブリンロードが俺に目を向けた。そして斧をぶん回してくる。

 俺はそれをギリギリでかわした。避けたけど風圧で吹き飛びそうだ。

 ゴブリンロードって喋れるのかよ!


 まだ動けている冒険者達がなんとかゴブリンロードに攻撃を加えてはいるが、あまり効いている様子はない。


「よくかわしたな、だが次はどうだ?」


 ゴブリンロードの二撃目。

 今度はさっきより速い。剣で受け流すしか無い。

 そう思っていると、テンネがそれより速くゴブリンロードの腕を斬りつけていた。そのため俺への攻撃が逸れる。


「ちっ、なんだ? 猫人ワーキャット? 奇怪な……」


 ゴブリンロードは切れた自分の腕をペロリと舐める。


「フリード! こうにゃったらやるしかにゃいぞ!」

「ああ、どうやらそうみたいだ。リン、いけるか?」

「勿論。マスターとならどこまでも」


 俺たちは戦闘の意思を固めた。

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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