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【ロイヤーの失敗】


 ヒュッと拳ほどの石が俺に投げられてきた。俺はそれをかわし、投げてきた方に走る。

 やはりゴブリンが物陰に隠れていた。俺は動揺しているそいつの後ろに回り込み、剣を叩き込む。


「ピギャアッ!」


 俺の一撃じゃ殺せない。だがゴブリンが逃げ出した方にはリンが立っていた。


「あなたは、ここまで。終わり」


 リンは横一線に剣を振るう。するとゴブリンは胴が切られ、その場に倒れ伏した。

 慣れた手つきで俺はそいつの右耳をそぎ落とす。


「これで15匹目か」

「ご飯がいっぱい食べれるにゃあ」

「巣が大きい。ここにはゴブリンは何匹いるのだろう」


 確かにリンの言うように、かなり巣が大きい。一向に行き止まりがないのだ。これじゃまるでダンジョンだ。


「ん? にゃんだ……?」


 ふとテンネが頭にある耳に手を当てて、耳を澄ましている。


「どうしたテンネ」

「これは、戦闘にゃ。右の方から聞こえる。どうやら人間が苦戦してるみたいだけど、行くか?」

「まぁそれを聞いて放っておくのもあれだし……行こう」


 既に洞窟に突入してから2時間は経っていると思う。少し足が疲れてきた。


 テンネに言われるがまま歩いて行くと、確かに俺の耳にも戦闘の音が聞こえてきた。だがこれは……かなり大きな戦闘じゃないか?

 1人2人じゃない。10人近くは戦ってる!

 少し早歩き気味で音のする方へ歩いて行くと、少し開けた場所に出た。


 するとそこでは驚きの光景が広がっていた。


「ぎゃあっ!」

「痛え痛えよぉ!」

「くそっ、なんでこんな奴がここに……!」


 血だらけで芋虫のように転がっている冒険者たちと敵と戦う冒険者の姿があった。

 地面に横たわっている中には、なんとロイヤーとゾックの姿があった。

 どういうことだ。何故ここまでの被害が……!


 そして彼らが戦っている敵を見て、俺は思わず呟いてしまった。


「う、嘘だろ。ゴブリンロードだと……!?」



 ♦︎


 自らの血が流れていくのを見ながら、地面に伏しているロイヤーは考えていた。


 ――なんで、なんでこんな事になった?


 時刻は少し、遡る。


「なぁロイヤー、フリードのやつどう思う?」


 ロイヤーとゾックが洞窟の中を歩いていた。彼らはまだ、ゴブリンには出会っていなかった。


「どうってなんだ。抽象的過ぎてよくわからないな」

「えーとつまりさ。あいつらゴブリン狩れると思う?」

「ふん、なんだ。そんなことか。あいつらなんかに出来るわけがないだろう。あいつらは汚らわしい魔物だぞ?」

「だ、だよな! あいつらになんか出来るわけないよな!」


 ゾックは慌てたようにそう返す。


「なんだゾック。まさかお前、僕があの猫の魔物に汚い不意打ちを受けたことを気にしてるのか?」

「い、いやそういうわけじゃ……」

「あれは僕が油断してただけだ。本当に汚いやつらだよ。今はこの防具もある、二度と喰らわないさ」


 ロイヤーは自信ありげに防具を撫でてそう言った。そう、なにせロイヤーが着ている防具は3万デリーもしたのだ。ゾックのも、それよりは劣るが初心者にしては高い買い物だ。


「そ、そうだよな。俺たちにはこの防具と剣がある」

「そういうことだ。さて、少し歩き疲れたな。休憩するか」


 そう言って彼らは近くの岩に腰を落ち着ける。彼らは、洞窟に入ってから既に5回は休憩を取っていた。

 その原因が重すぎる鎧にあることは本人たちは気づいていないが。


「ふぅ、それにしても、全然ゴブリンは出てこないな」

「本当だよ。俺たちに恐れをなしてるんじゃないか?」

「ひゃひゃひゃ、ありえるなそれ」


 ロイヤーが笑い声をあげ、頭を少し下げたその時だった。

 風を切る物体の音がしたかと思えば、先ほどまで彼の頭があった壁にはナイフが突き刺さっていた。


 ビィンとナイフが突き刺さった反動で振動している。


「ロ、ロイヤー!」

「大丈夫だ! ゴブリンか! 汚ねえ攻撃しやがって! 出てきやがれ!」


 ロイヤーがあたりに叫ぶがゴブリンは出てこない。


「あっちから攻撃が来たからあっちにいるはずだ! いくぞゾック!」

「あ、ああ!」


 そう言ってロイヤー達は走り出す。

 しかし鎧が重いせいで、彼らはあまりスピードが出ていなかった。


「いた! あいつだ!」


 それにもかかわらず、ロイヤーはゴブリンを発見する事が出来た。何故か、答えは簡単だ。それは罠だからだ。

 しかしロイヤー達はそれに気づく事なく、ゴブリンを追いかけ、まんまとひらけた場所に連れてこられたのだ。


「はぁ、はぁ……よし、追い詰めたぞ。クソゴブリンが。ぶっ殺してやる!」

「はぁはぁ、くそっ、息が……」


 ロイヤーが剣を引き抜き、ゴブリンに斬りかかろうとした時、彼はやっと異変に気付く。

 そう、ゴブリンが笑っていたのだ。



「ケ、ケケケケ。ケケケケケケケケ」



「な、何笑ってやがる! 魔物風情が! 『ファイア』!」


 ロイヤーは右手から炎を出した。そしてそれをゴブリンに向かって投げつける。

 だが炎はゴブリンに届くことはなかった。突如現れた2メートルはあろう巨体の魔物の持つ斧に遮られたのだ。


「あ、ああ、ああ……! まさか、そんな……!?」

「ゴブリン、ロード……!?」

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最強な主人公が無自覚のまま冒険するお話です
おつかい頼まれたので冒険してたら、いつのまにか無双ハーレムしてました〜最強民族の【はじめてのおつかい】〜 >
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