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生に名誉を死に栄光を  作者: ジィロウ
2/8

このメロン、誰のメロン?

パクりじゃなくて、リスペクト。


 起きる筈のない意識の覚醒に俺は戸惑った。

(俺はたしか洞窟で死んだんじゃ…)

 洞窟での光景が走馬灯の様に思い出される。我ながら酷い死に様だったと思う。


 そこでふと、当然の疑問が(よぎ)る。(なら今の俺は何だ?)沸いた疑問の答えを探すように、体をもたげようとする。しかし、体は金縛りにあったように動かない、更には四肢の感覚も朧気で、どことない不安を覚える。

 

 起きることを諦め、横になったまま周囲を確認するが、焦点が定まらず、状況が判らない。


 そんな中、口に血の味を感じぎょっとした。


(血の味がするってことは、異世界じゃなくて現世であのままゾンビになったのか、最悪だな。

 と、思ったけど何か眩しいから、洞窟ゾンビルートは回避したっぽい、まだ神は俺を見捨ててなかった。

 だから他にあるとすれば、異世界でゾンビか、外に出たゾンビか。


 やっぱり、神に見捨てられてた。)


------


 それからしばらくしても、視界が晴れることは無かったが、それでもいくつかの収穫はあった。

 

 第一に、俺はゾンビじゃなかった、辛うじて動く手を、目の前に持ってきたら、グジュグジュの腐った手じゃ無くて、ぷにぷにのお手てだった、口の中の血の味は、母の()()()()だった。つまる所俺は幼児退行、もとい生まれ変わり(てんせい)をしたのだった、ゾンビじゃなくて人間に。


 第二に、パパとママっぽい人がいた、俺の回りで四六時中そわそわして、時折何か言っていたが、内容は分からなかった


 二つの人影は片方が大柄で、もう片方はこじんまりとしていた。


 だから大柄をパパ、小柄をママンと呼ぶことにした。声はでないから心の中でに限るが。


------


 俺はしばらくの間、何も考えずベビーライフを満喫していた。

 ママンのメロンをチロチロしたり、甘噛みしたり、時折吸い付いてみたり、前世で出来なかった事をしまくった。あいにく俺のバナナはピクリともしなかったが、それでもチロペロ、カジモミしまくった。

 

 他にも色々垂れ流したり、寝たり、騒いだりと、赤子っぽい事はおおむねやった。


 そんな生活を長らく続けて更に色んな事がわかった。

 

 まず驚きだったのは、ママンが母では無かったのだ。


 そう、つまり俺が舐めてたのは愛人のメロンだったわけ、もうこれは立っちゃうよね。


(何がって?勿論(もちろん)俺がだよ、だってもう一歳だからね、ハイハイは卒業しなきゃ)

 

 んでもって本物のママは一体どこに行ったのかと言うと、病院?にいるみたい、まだ言葉になれてないから、大体推測だけど。

 

 詳しくは判らないけど、どうにも俺を産んで直ぐ倒れちゃったみたい。

 何か悪いことした気分だね。それでも死んではいないみたいで良かった、もうシングルペアレントは嫌だからね。


 それと、俺にとって非常に嬉しい発見があった。

 パパがイケメンだった、金髪碧眼で、バリバリの西洋顔、てことはその血を継ぐ俺もバリバリのイケメン確定、てことはハーレムが確定な訳で一つ夢がかなった。


 後は剣士に成ることだが、それも叶いそうだった、どうやらパパは現役の騎士みたいで、毎日金ぴかの鎧を着て出掛けていくのを見てた。

 

 しかも剣と鎧に王冠の紋章が付いていたから、相等偉い人みたい、近衛騎士とかなのだろうか。

 

 それと両親、それに乳母の名前も判った

まずパパが--トマス・ライデンハルト

次にママンこと乳母が--イレーヌ・エレオノーラ

 それで最後に母が--トマス・カトレア


 母の名前は、パパが時折空を眺めて、口にしていたのを聞いただけだから、多分だけど。

 

ちなみに俺はトマス・エドみたい…

なんだけど明らかに語呂が悪い、どうせなら、エドワードが良かった

------

 

 二回目の誕生日が来た、この頃に成るとこっちの言葉も概ね理解できるようになって、母が家に帰ってくる事がわかった。

 他にも言語の理解は俺に知識を与えてくれた。母は根っからの愛書家だったようで書斎には、園芸のエッセイや、英雄の伝記、更には官能小説と色々となものが置いてあった。中でもずば抜けて多かったのが女性同性愛の本だったのは、衝撃だ。

 実母がどんな人なのか今から楽しみで仕方ない。

 

 官能小説は皆が寝静まってから読むとして、日中は、歴史書と伝記を読み漁っていた。乳母のイレーヌはメイドも兼ねているみたいで、最近は俺をそっちのけで、家事に奮闘していた。

 正直ちょっと寂しかった


 おっぱいの温もりが。

 でもそれは好都合だった、2歳児が伝記を熟読しているのは、異様な光景だろうから、無関心位でちょうどいい。


------


 それは、官能小説のラストに差し掛かろうという所だった。

 「ただいまー」いつもの声に加え、柔らかな声が聞こえた。

 

 母の声だ、俺の直感がそう言った。 

 俺は一目散に駆け出し、段差につまずきそうになりながらも、母の胸元に飛び込んだ。

 それは、たわわに実ったメロンじゃ無くて、薄くて質素な甘食だった。




やっぱパクりかも…

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