All That I Needed Was You
世界は平和になり一つになった。この世界はひとつの小さな「地球村」にしか過ぎなかった。
泥沼化し地獄に陥るかと思っていた戦争であるが、
「マスター」や「ハレル」が人々に一言平和を呼びかけると、暗闇の中にろうそくの火が次々と灯っていくように人から人の間へと愛が広がっていった。
きっと誰しもがそこに大いなる希望を見た。
愛と希望は、人のうちにとどまり、その光に照らされた者はその光を自分自身も発せずにはいられなかった。
同時期に、ハンスとユウナは愛を呼びかけた。
世界中に愛を祈り続けた。
その時、太陽が夜空に輝き、月が青空を照らす日がやってきた。
敵対しあっていた者どもは、すべての恐れと憎しみを捨てざるを得なかった。
人は、もはや内と外とを分けることはなくなった。すべての人がひとつであるということを知ったからだ。
誰もが、本当はそのことを心の奥で知っていたことだった。
求めていた預言者と勇者とは、ユウナとハンスのことであった。しかし、今やそんな称号はどうでもよかった。
この時代になって、本当は、全員が預言者であり、賢者であり勇者になることができるのだ。
そう、君も。
ハンスは空を見上げた。
満天の星空であった。
しかし、今やそんなものはどうでもよかった。
なぜなら、彼女の中に星があったからだ。
「夢で見た、あのシーンそっくりだ。
そして、いま、僕はあのシーンの続きを現実に生きている・・・。」
少女のときと違った、ふくよかな肌が視界に映る。
が、ハンスは、理性を保ち、真っ赤になりながら、目をそらし、見ないように心がける。
あれだけ、寂しさや気まずさを埋めるようにくだらないことで話し合っていたことが、みんな灰のようにどこかに舞っていく。
ものも言わず炎もたてず真っ赤になった心だけがあたたかく、静寂の中で脈打っている。
二人の呼吸が重なり合う。
やわらかくて、あたたかくて、とろけてしまいそうな感覚。
「僕は、やっと、求めていたものを手にした・・・。」
離れあうと、お互いに笑いあった。
そして、それ以上は近づこうとせず、正面を向いて、目をつぶり、手を合わせた。
きっと、ハンスも彼女も同じ気持ちだったに違いない。
顔と顔が近づく。
額と額が合わさる。
あまりの優しい気持ちに思わず眼を閉じる。
優しい重力のようなものが二人の間に働き少しずつ近づいていく。
唇と唇が触れる。
甘美さと優しさのうちに一切が溶けてしまいそうになる。もはや自分が自分であることすら忘れ自分のすべては愛のうちにつながって生かされていることを知る。
その瞬間、すべての時が神聖なものとなり永遠へと吸い込まれていく。
夢が・・・叶った。
幾星霜の時を経て。
僕の求めていたもののすべて・・・
それは・・・君だったんだ。
君だったんだ。
Fin




