許しと和解
「人は、平和な世界を作っていけると思う?」
奇跡は起こすことができる。
もし、私たちが願いさえすれば。
今すぐにでも私たちは小さな奇跡を起こすことができる。
はじめは誰にも気が付かないような小さな小さなところから。
だけど、それが徐々に集まってくると大きな大きな川になるように。
そうして、世界は変わっていくのだ。
一次元において二倍の差しかないものが、二次元においては四倍、三次元においては八倍になっていくように、
この世界においてなした小さなことでも、高次元の宇宙においては十倍、百倍、千倍、万倍にもなって増幅され、そしてそれは再びこの世界に力をもたらす。
人間も妖怪も、西も東もないよ。
ただ、僕たちは同じ空を見ている。
同じ宇宙の中にいる。
「奴らを恨んでいるかい?」
「許したい・・・そして、愛し合いたい。分かりあいたい。仲良くしたい。」
ユウナでなく、自分がそんなセリフを発したが最後そんなものは偽善だと思ったが、ユウナのそれは本心だ。意図的に作られた心ではない。
「私にだって、人を呪いたい心や、怒りや恨みの気持ちがわかないわけではないんです。
だけど・・・それは、裏返すと、大切にされたい、仲良くしたいっていう本当の気持ちの裏側だと思うのです。
人と人が争わなくちゃいけないのは、きっとお互いに不器用で恐れあっているから。」
胸のあたりがチリチリと痛む。
ハンスは自分自身が、セリフだけだったらそんな耳触りのいいことを言いながら、いざ身の危険が及んだらすべてを、かなぐり捨ててでも自分の安全と保身を図る卑怯者に堕してしまうのだろうなあということを、過去の経験などからも思い、いくら責め立てられても仕方がないと感じていた。
・・・だけど、ユウナはそれを本当に地で生きた人だったのだ。
《・・・ダメだ、僕は恥ずかしくてこの人の前に立って、話す資格さえないのかもしれない。》
「・・・私は、セリフだけだったらそんな耳触りのいいことを言いながら、いざ身の危険が及んだらすべてをすべてを、かなぐり捨ててでも自分の安全と保身を図る卑怯者に堕してしまうのだろうなあ。私はいくら責め立てられても仕方がない。」
そう、ハンス自身が思っていたことをユウナがそっくりそのまま口に出すので、驚いた。
「ごめんなさい・・・私は恥ずかしくてあなたの前に立って話す資格なんてないのかもしれません。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
ユウナは叫んだ。
「わたし、わたし、あなたを裏切った。
怖くて、あなたのことを売ったの。そして、あなたの人生を台無しにしちゃった。
あなたはきっと傷ついたと思う。」
「それは・・・ユウナ、僕のほうこそだよ!僕も、君を裏切ったのだ、あの時!」
無限の虚空と暗闇の中、ただ星たちだけが脈打つように何も言わず光を発している。
不気味なほどの美しさと、静寂。
・・・ユウナは訊いた。
「ねえ、ハンス、あなた、わたしのこと好きなの?」
ハンスはまっすぐに答えた。
「ああ、大好きだ。」
ユウナは再び訊いた。
「ハンス、あなた、私のこと好き?」
「うん、大好きだよ。」
三回目ユウナは訊いた。目は涙にあふれていた。二人とも。
「ハンス、あなた、私のこと好き?」
「・・・大好きだよ!」
ハンスの目にも涙が浮かぶ。
「三回否定すれば・・・三回肯定すればいいんだよ。
私は、ハンス・・・!あなたを愛している、愛している、愛している!」




