一致
集落のはずれにある草むらに二人して寝転がる。
満天の星空。あまりにも無数の星が都会のネオンライト以上に輝き、まるで、降ってきそうだ。
二人はその星空をものも言わずに寝ころんだまま見つめていた。
思わず手が触れる。
この宇宙の隅々と、この小さな自分たちの存在が直接つながっていることを感じ、ハンスの全身には鳥肌が立った。
全てはこの宇宙を動かしている星の導きによって。
この導きによって、いま二人はこうして同じ場所にいて、手を握っている。
まるで、赤ん坊のようにやわらかであたたかい彼女の手がハンスの手に包まれる。
このまま、何時間もどこまでもどこまでもこのままでいたいと願う。
それ以上は何も要らなかった。
*
遠くで、小さく笑い声が聞こえる。
その声に二人は我に返り、目と目を合わせる。
ユウナはおもむろにゆっくりと立ち上がると、あの慈しみに満ちた瞳をこちらに向けて、微笑みながらささやく。
「あなただけに見せてあげる。」
といって、
彼女は、上着を脱いだ。
「妖怪の印」が満月に照らされると、彼女の長くなった髪が七色に輝き広がる。
そして、背中からは白い羽が美しく広がっていった。
青と赤の瞳が輝いてこちらを見ている。
「うつくしい・・・」
そうつぶやいた。
何が妖怪なものか・・・。
そして、肩や腕に傷が。
「これは、人間たちに傷つけられたの・・・?」
コクンとうなずいた。
何かお腹の底からかわいそうで何とかしてあげたいという気持ちが湧き上がってきた。
「そうか、つらかったね。つらかったね。」
といって手を握った瞬間だった。
それまで、どこか無表情だった彼女は、堰を切ったように、
「うあああああああああああああああああああああああああん!」
と大声でしゃくりあげ、泣きだした。
「ひいっ!うっ!えぐっ!わあああああああん!わああああああ!」
それを見ていたハンス自身も涙が止まらなくなった。
刹那、ユウナはハンスを抱きしめた。
ハンスもユウナを抱きしめ返す。
ここにはもう誰も邪魔するものはいない。
背中の羽の柔らかく温かい感触が指先に伝わってくる。
躰と躰が愛の感覚を思い出すように喜び踊る。
しかしそれでも、二人が一つになるのに、肉体は邪魔な代物でしかない。愛にとって肉体は一つの大きな一致のツールであるとともに、同時に大きな壁でもあった。
「かの世界」において、僕たちは完全に一致していた。完全な愛の喜びの中に住んでいた。
そして、失われた一切の愛が、今や完全な形で、もっともっと高い次元で回復されたのだ。
呼吸の一つ一つが完全に美しく調和し、心臓の鼓動の一つ一つまでが一致した。
そしてこのことは宇宙全体と一致することと等しかった。
僕たちは宇宙の呼吸、宇宙の鼓動をはっきりと感じ取り、その息吹や血潮と同時に生きていた。
その息吹や血潮の名を「愛」という。
あらゆる傷も抜けてきた闇の一切も今やすべてが喜びに代わり、すべてが栄光に変わった。
もはや、この愛を知ってしまうと、他には何もいらないとさえ思える。
いま、すべての事に感謝できる。
私たちは、一切の物事から自由だ。そして、一切を自由にすることができる。
いかなる恐れや罪も闇もこれに打ち勝つことはできない。
「僕は、今まで何のために生きてきたのか分からなかった。
だけどね、今その意味がはっきりと分かったよ。君に出会うためだったんだ。
君と再会するためだったんだ。」




