育ち
温泉につかりながら、星空を眺める。
「ああ・・・いつの間にかこんなところまで僕はやってきた。」
いま、完全な安心と喜びで心が満たされていた。
大切な人が隣にいて、今まで独りぼっちだったと思っていたハンスはいまや誰からも愛される存在。
「僕は・・・今、必要とされている。」
そのことがハンスの心をこの上ない幸福に満たした。
・・・いろいろなことがあったけれど、ここに来ることができてよかった。
どこまでも深くハンスは感謝をささげた。
ユウナが描いた絵の数々が飾られていた。
何匹もの猫が、ハンスの懐に飛び込んできた。
母はアルバムを見せてくれた。
母親は、彼女のそれからを話した。
彼女は、東の国に来てから、やはり魔法産業社会になじめずに、孤立したこと。
なぜなら、彼女は守ろうとした。
同じように孤立しそうになった友人を。
西の国でも東の国でも、この家族の居場所はなかったのだ。
それでも、ユウナはひとりこころのなかで祈るように言い続けた。
「だいじょうぶだよ」
「感謝しています」
「皆が幸せでありますように」
善き友人と出会い、ここまでやってきたこと。
「だけどね、あの時に思い通りにならなかったおかげで、普通に生きてたら出会えなかったようなこの素敵な仲間に出会えたの。
だから、すべては必然だと思っているの。」
・・・そして、彼女の父は、妖怪であった。
ということは、彼女は・・・妖怪の血を半分引いているということか。
・
「私は、人間なの?妖怪なの?」
15歳になる頃、人は誰しも自分自身のアイデンティティに悩む。
彼女は怒りながら聞いた。
「あなたがどう生きていくかは、あなた自身が決めなきゃいけない。」
母は、ユウナに優しくそう答えた。
田舎には暖かくて優しい空気が流れていた。
そうか・・・
子どもたちは、自分の意志を尊重されてきた。
そして、自分自身の意志で自分の人生を決定してきたのだ。
ユウナは、再び、東の国で生きていくことを決意する。
妖怪と人間の架け橋に・・・もっと言えば、東の国と西の国との懸け橋にもなろうと考えていた。だけど、すべては挫折した。逆にすべての人びとから恨まれ、誤解され、差別された。自分が半分妖怪であるとばれたときは、訳もなく一方的に「危険人物」とされた。




